著者
荒井 國三 浦田 航希 橋本 昌子 蓮元 憲祐 谷山 徹 卯尾 伸哉
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.95-107, 2020 (Released:2020-10-26)
参考文献数
17
被引用文献数
1

石川県内の高校生および大学生による医療用医薬品とヘルスケア商品(一般用医薬品,健康食品,サプリメント)の使用実態をアンケートにより調査した.体の具合が悪くなったとき,医療機関に受診しないで健康食品やサプリメントを利用する者が 18.5%(83 名:449 名の健康食品利用者中)いた.さらに,健康食品で病気は治ると,間違って理解している者が 34.5%(654 名)いた.以上より,中高校生に対する「くすり教育」において,医療用医薬品の教育ばかりでなく,健康食品やサプリメントの利用に関する教育を行う必要があると考えられた.
著者
田中 秀和 石井 香奈子 若林 進
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
pp.oa.2020-0018, (Released:2021-01-13)
参考文献数
13

【目的】朝食後に赤線など一包化された分包紙へ色線を付す行為は,個々の薬局・病院において独自に配色が行われているが,転居や災害などによって調剤施設が変わると配色パターンも変更となり服用間違いが懸念されるため,配色について実態調査を行った.【方法】2018 年 5 月 16~22 日において,薬剤師を対象として Web アンケートを実施した.なお,本研究は長崎県薬剤師会倫理審査委員会の承認を得て実施した(長倫薬29-7).【結果】有効回答 77 件のうち,用法ごとに色線を設定していた施設は 54.5%(42件)あった.配色で最も多かった 4 色は,朝食後─赤系,昼食後─黄系,夕食後─青系,就寝前─黒系であった.アンケート中,配色パターンの統一に対して賛成 66.2%(51 件)であり,反対 15.6%(12 件)を上回った.【考察】配色パターンが未統一であることに起因するインシデント事例も存在し,統一に賛成する意見が反対する意見を上回った.配色パターンの統一が望ましいと考える.
著者
前田 守 長谷川 佳孝 月岡 良太 森澤 あずさ 大石 美也
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.74-83, 2020 (Released:2020-10-26)
参考文献数
15

国際的な課題の一つである薬剤耐性菌感染症への対策として,抗菌薬の適正使用に向けた薬剤耐性(AMR)対策アクションプランが厚生労働省により 2016 年 4 月に策定された.本研究では,当社グループが 2013 年 4 月~2019 年 3 月に運営していた 248 薬局の処方箋データを用い,抗菌薬の処方回数と処方日数を調査し,有意水準 0.05 とした分割回帰分析で解析した.アクションプラン策定前後で,処方回数推移は−202.3 回 / 月(95%信頼区間(CI):−325.7,−79.0),処方日数推移は −1905.9(95% CI:−2969.0,−842.9)となった.また,2015 年 4 月~2019 年 3 月の第三世代セフェム系,14 員環マクロライド系,ニューキノロン系の月平均処方回数も有意な減少傾向であり,AMR 対策アクションプラン策定が保険薬局の抗菌薬の処方回数と処方日数の減少の一因となった可能性が示唆された.
著者
鈴木 伸悟 藤田 勝久 神田 卓哉 勝俣 水稀 廣澤 伊織 渡部 一宏
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.138-147, 2021 (Released:2021-10-22)
参考文献数
12

近年, サプリメントはドラッグストアや通信販売等で広く販売されているが, 医薬品との相互作用に注意が必要である. そこで, 保険薬局に来局した希望者に『ナチュラルメディシン・データベース』 (以下, NMDB) を用いて医薬品とサプリメントの相互作用に関する相談や情報提供を行い, 相談者にアンケート調査を実施した. 2020 年 5 月 15 日から 6 月 15 日の調査期間で, NMDB による相談対応を 125 人に実施し, 10 人(8%)に特に注意すべき相互作用を発見し, 適切な指導を実施した. また, アンケート調査では, 全体の 48.3%がサプリメントを服用していたことが明らかとなり, さらに, 全体の 65.3% が相互作用の有無の確認をしたいと回答した. このことより, 医薬品とサプリメントの相 互作用の確認は一定の患者ニーズがあり, NMDB 等のデータベースを利用し正確な情報提供を行うことで, 薬局の機能向上につながる可能性が示唆された.
著者
田中 秀和 石井 香奈子 若林 進
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.27-38, 2021 (Released:2021-04-27)
参考文献数
13

【目的】朝食後に赤線など一包化された分包紙へ色線を付す行為は,個々の薬局・病院において独自に配色が行われているが,転居や災害などによって調剤施設が変わると配色パターンも変更となり服用間違いが懸念されるため,配色について実態調査を行った.【方法】2018 年 5 月 16~22 日において,薬剤師を対象として Web アンケートを実施した.なお,本研究は長崎県薬剤師会倫理審査委員会の承認を得て実施した(長倫薬29-7).【結果】有効回答 77 件のうち,用法ごとに色線を設定していた施設は 54.5%(42件)あった.配色で最も多かった 4 色は,朝食後─赤系,昼食後─黄系,夕食後─青系,就寝前─黒系であった.アンケート中,配色パターンの統一に対して賛成 66.2%(51 件)であり,反対 15.6%(12 件)を上回った.【考察】配色パターンが未統一であることに起因するインシデント事例も存在し,統一に賛成する意見が反対する意見を上回った.配色パターンの統一が望ましいと考える.
著者
今井 俊吾 難波 正志 柏木 仁 佐藤 夕紀 武隈 洋 菅原 満
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
pp.nt.2020-0025, (Released:2021-03-10)
参考文献数
10

薬剤師は安全な薬物療法の提供のために,患者から必要な情報を「聞き取る」ことが重要である.しかし,薬局薬剤師の「聞き取り」に対し,一部の一般市民は厳しい視線を投げかけており,患者の理解を促すためのエビデンス構築が急務である.本研究は「患者への聞き取り」に基づき実施された疑義照会に着目し,その実態解明と医療安全への貢献度評価を試みた.解析には北海道大学病院の近隣薬局の疑義照会データを用いた.その結果,聞き取りに基づく疑義照会は「薬学的疑義照会の 33.3%を占め,高い許諾割合(98.5%)を有し,用法や用量などの疑義照会分類において,医療安全への貢献度が高い」ことが見いだされた.また,このうち「医師からの説明と処方内容が食い違う」ことが発端となった事例が,特に医療安全へ貢献していることが示された.「患者への聞き取り」に基づく疑義照会の有用性を広く調査するための基礎となる知見が創出された.
著者
鈴木 伸悟 藤田 勝久 藤田 勝成 藤枝 正輝
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.92-98, 2019 (Released:2019-05-17)
参考文献数
10

要旨:薬剤師が適切な受診勧奨を行う目的で,疾患カテゴリーごとに受診すべき症状をまとめた受診勧奨シートを地域連携している医師の意見も参考に作成した.受診勧奨シート導入後の相談来局者数,受診勧奨者数,受診勧奨後に処方せんを持って再来局した件数について調査を行った.2016 年10 月1 日から8 カ月間を調査期間とした.月間平均323.4 名の相談来局者のうち3.3%に受診勧奨を行った.受診勧奨した相談来局者のうち17.6%が,医療機関に受診し当薬局へ再来局した.再来局した3 症例のうち,症例1 は,手首の激痛を訴えた患者を受診勧奨し,痛風と診断された.症例2 は,胃の不調を訴えた患者を受診勧奨し,後に機能性ディスペプシアと診断された.症例3 は,皮膚の広範囲にわたる湿疹を訴えた患者を受診勧奨し,皮膚炎および皮膚感染症と診断された.以上の結果,受診勧奨シートの使用により,適切な受診勧奨ができることが明らかとなった.
著者
中南 秀将
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
pp.ra.2023-1000, (Released:2023-03-08)
参考文献数
19

近年,抗菌薬が効かない薬剤耐性菌による感染症が世界的に拡大し,公衆衛生および社会経済に重大な影響を与えている.本邦では,2016年に薬剤耐性(antimicrobial resistance: AMR)対策アクションプランが策定され,様々な取り組みが実施されている.病院では,抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team: AST)が組織され,抗菌化学療法認定薬剤師や感染制御認定・専門薬剤師が中心となってAMR対策に取り組んでいる.このようなAMR対策によって抗菌薬の使用量は減少したが,主要な薬剤耐性菌の分離率は減少していない.薬剤耐性菌の分離率を減少させるためには,市中における抗菌薬の適正使用が重要である.本稿では,薬局薬剤師に期待されているAMR対策と,抗菌薬適正使用を推進するために必要な,薬剤耐性菌と抗菌薬の特徴について概説する.
著者
大橋 淑起
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-10, 2021 (Released:2021-04-27)
参考文献数
8

近年,社会による薬剤師への期待感が急速に高まっている.薬剤師の働き方は,調剤を中心とした「対物業務」から,患者が薬を服用した後までフォローする「対人業務」への変革が求められている.一方で,その期待とは裏腹に,薬剤師の業務量はますます増大しており,多くの薬剤師が疲弊してきていることも事実である.薬剤師が対人業務に専念するための唯一の解決策が,非薬剤師「コファーマシューティカルスタッフ(CPS)」の活用である.CPS は,一般的な調剤事務とは異なり,業務内容は多岐にわたる.そのため,薬局内で CPS が安全に働くための環境を構築することが必要となってくる.この環境構築の基本的な考え方は,「業務フローの整理と見直し」と積極的な「機械化・ICT化」の 2 点に集約される.貴薬局に CPS を導入するためには,①経営者による方向性の決定,②薬剤師・CPS の意識改革,③CPS が働くための環境整備が必要となる.
著者
緒方 孝行 畠山 規明 鶴田 悦子 森 博美 松野 英子
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.158-164, 2019 (Released:2019-10-04)
参考文献数
5

要 旨:リバスチグミンパッチ(以下,リバスチグミン)は認知症治療の経皮吸収型製剤として,その簡便性から広く臨床の場で使用されている.しかし高頻度の皮膚障害が発現することが知られており,その対処法も明確なものは確立されていない.今回,リバスチグミンの皮膚障害に対してステロイド・保湿剤併用療法の有効性を検討した.90 歳代女性,要介護2 で現疾患はアルツハイマー型認知症.イクセロン® パッチ貼付部位に痒みの訴えがあり,その対処法を検討した.リンデロン® V クリーム塗布では変化なし,リンデロン® VG 軟膏塗布ではVAS(Visual analog scale)はやや改善,ひっかき行動は継続した.そこでステロイドローション塗布後,保湿剤を上塗りするというステロイド・保湿剤併用療法を提案し実施したところ,VAS で改善が見られ,かつ皮膚状態に対しても有効性が確認された.この療法はステロイド単剤と比べ,リバスチグミン誘発の皮膚障害に対して有効である可能性が示唆された.
著者
齋藤 萌華 武田 香陽子
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.98-105, 2021 (Released:2021-04-27)
参考文献数
9

化粧療法における一般市民の意識と薬剤師に対するニーズを調査するために,一般市民 200 名に対して Web による調査を実施した.結果として,化粧療法を「知っている」と回答した人は全体の 16%と少なかったものの,実際に自身が病気になった時に化粧療法を実施したいと思う人が 31.5%,化粧療法時に薬剤師に関わってほしい人は 26.5%であり,特に,化粧品の成分,効果,アレルギーに対して薬剤師に関わってほしいとの意見であった.化粧療法に対する薬剤師のニーズは現状低いものの,今後,在宅医療,地域医療の中での薬剤師の役割が増えた場合,患者や生活者の QOL を改善するための薬剤師の役割の一つとして化粧療法への関わりの可能性や必要性は大きくなるのではないかと考えられる.
著者
茂木 肇 仲村 翔太郎 荻原 政彦 齋藤 耕一 木村 光利
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.142-150, 2019 (Released:2019-10-04)
参考文献数
12

要 旨:本研究では,高血圧治療薬であるジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬(dCCB)による逆流性食道炎(RE)の発症リスクに関する明確なエビデンスを構築するため,dCCB のタイプ別(L 型,N 型,T 型),用量別および服用期間別におけるRE の発症率の違いをアンギオテンシンII 受容体遮断薬(ARB)と比較することにより評価した.その結果,アムロジピンやニフェジピンのようなL 型dCCB は,低用量からRE 発症率が有意に高く,投与期間に依存してRE 発症率の有意な上昇が認められた.これに対し,交感神経終末膜のN 型カルシウムチャネルの遮断作用を有するシルニジピン,ベニジピンや反射性交感神経増強作用が弱いアゼルニジピンは,用量別,投与期間別におけるRE 発症率の有意な上昇を示さなかった.これらの薬物は,RE の発症に深く関係する下部食道括約筋の弛緩を抑制するため,L 型に特異性が高いアムロジピンやニフェジピンよりもRE 発症率が低かったものと考えられる.
著者
髙橋 渉 伊藤 元太 本郷 良泳 長沼 未加
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.98-106, 2022 (Released:2022-10-24)
参考文献数
21

保険薬局で調剤される抗インフルエンザ薬には,内服薬と吸入薬がある.内服薬の服薬指導時間は,吸入薬よりも短い可能性があるが,薬局での抗インフルエンザ薬の服薬指導時間を評価した研究はない.そこで本研究では,2018~2019年シーズンに内服薬(オセルタミビル,バロキサビル マルボキシル)と吸入薬(ザナミビル,ラニナミビル)を処方された患者について,薬局の電子薬歴端末のデータを用いて服薬指導時間と患者の薬局滞在時間を評価した.平均服薬指導時間は,内服薬が3.13分(n=44,080),吸入薬が4.68分(n=19,710)であり,吸入薬では内服薬に比べ約1.5倍時間が長かった.薬局滞在時間の平均は,内服薬で14.61分(n=49,572),吸入薬で14.98分(n=22,937)であり,服薬指導時間でみられたような差は認められなかった.服薬指導時間短縮による影響について,今後さらなる調査が必要である.
著者
丸岡 弘治
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.115-121, 2021 (Released:2021-10-22)
参考文献数
23

介護老人保健施設(以下,老健)は,医療とケアを受けられるバランスの取れた形態の施設であり,外国では見られない日本が誇るシステムの高齢者施設である.老健は介護保険の様々な制限の中で医療とケアを実施しなければならないため,もともとは処方見直しを行い,薬剤適正化に取り組む傾向にある場所である.さらに,令和 3 年度の介護報酬改定により老健における薬剤適正化が促進され,老健薬剤師の介入について明記され,注目されている施設である.薬局薬剤師は,施設外部からは調剤と配薬セットの委託を受けていることが多いが,その業務だけにとどまらず,老健の特性や性質を理解しながらであれば,薬剤適正化への介入や在宅から施設を行き来する入所者の薬剤情報・処方経緯を管理する役割も十分に担うことができると考える.
著者
石村 淳 郷谷 真嗣
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.55-60, 2022 (Released:2022-04-27)
参考文献数
7

COVID-19感染拡大により,人同士の接触を回避するという観点から社会生活のあらゆるものがオンラインでの利用を原則にしたものへとシフトしつつある.薬剤師に関連する動きとしては,「オンライン服薬指導」が,改正薬機法により2020年9月から全国的に可能となった.そこで,患者が「オンライン服薬指導」についてどのように考えているかを明らかにするために調査を行った.その結果,患者の「オンライン服薬指導」の認知度は,10%程度と低い状況であった.しかし,約100%の患者が「オンライン服薬指導」を必要であると回答し,その選択理由は,時間的負担を重んじている傾向が推察された.一方で,「オンライン服薬指導」の問題点として,受診から医薬品の受け取りまでの時間的制約等が問題であることも明らかとなった.したがって,メリットだけでなくデメリットも考慮した対応を検討していく必要があると考えられた.
著者
亀井 美和子
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.122-125, 2021 (Released:2021-10-22)
参考文献数
10

わが国では低用量経口避妊薬が避妊法として選択される割合が低いことなど,状況に応じた適切な避妊法が選択されにくい環境がある.人口あたりの人工妊娠中絶数は近年顕著な減少はみられず,望まない妊娠・出産は社会的な問題となっている.2017 年に厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」において,緊急避妊薬の OTC 化について議論がなされたが,性教育の浸透等,課題があることを理由として見送られた.そうした中,「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が改訂され,緊急避妊薬の調剤に関する記載が追記された.この指針において緊急避妊薬を調剤する薬剤師には研修を受けることが求められており,2021 年 7 月末時点で約 9 千名が研修を修了し,厚生労働省が氏名等を公表している.オンライン診療は緊急避妊薬へのアクセスを改善する有効な手段と考えられるが,それを機能させるためには薬局で調剤できるかどうかが鍵となる.現在,コロナ禍における時限的・特例的措置(いわゆる 0410 対応)として,緊急避妊薬の調剤が行われている可能性もあるが,薬剤師が避妊や緊急避妊薬の知識を持ち,薬剤の特性を踏まえ,患者に適切な対応をすることが求められる.
著者
阿部 佑一 坂井 優美 鬼立 めぐみ 原 正 久保田 隆廣
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.85-91, 2019 (Released:2019-05-17)
参考文献数
10

要旨:皮膚疾患に多用されるステロイド外用剤は,著しい治療効果をもたらす重要な成分である.外用剤の混合による配合変化に関する情報は必須であるが,十分な検討は行われていない.本研究では,実臨床でもステロイド外用剤と混合されることのあるザーネ® 軟膏との配合変化について検討した.油脂性基剤であるステロイド軟膏はザーネ® 軟膏と混合すると高温になるほど基剤が不安定になり,ステロイドの種類によっては含量が著しく低下した.ザーネ® 軟膏とo/w 型ステロイドクリームの混合では基剤は安定していた.ステロイド含量は高温条件下で低下したが,ステロイド軟膏との配合変化より緩やかであった.そのためザーネ® 軟膏との混合はステロイドクリームのほうが好ましいと考えられる.しかし,ステロイドの種類や製品によっては配合変化する組み合わせがあるため,患者の症状や薬剤の保存状態,コンプライアンスに合わせた薬剤選択が重要である.
著者
大橋 淑起
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
pp.ra.2021-1000, (Released:2021-02-12)
参考文献数
8

近年,社会による薬剤師への期待感が急速に高まっている.薬剤師の働き方は,調剤を中心とした「対物業務」から,患者が薬を服用した後までフォローする「対人業務」への変革が求められている.一方で,その期待とは裏腹に,薬剤師の業務量はますます増大しており,多くの薬剤師が疲弊してきていることも事実である.薬剤師が対人業務に専念するための唯一の解決策が,非薬剤師「コファーマシューティカルスタッフ(CPS)」の活用である.CPS は,一般的な調剤事務とは異なり,業務内容は多岐にわたる.そのため,薬局内で CPS が安全に働くための環境を構築することが必要となってくる.この環境構築の基本的な考え方は,「業務フローの整理と見直し」と積極的な「機械化・ICT化」の 2 点に集約される.貴薬局に CPS を導入するためには,①経営者による方向性の決定,②薬剤師・CPS の意識改革,③CPS が働くための環境整備が必要となる.
著者
今井 俊吾 難波 正志 柏木 仁 佐藤 夕紀 武隈 洋 菅原 満
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.68-78, 2021 (Released:2021-04-27)
参考文献数
10

薬剤師は安全な薬物療法の提供のために,患者から必要な情報を「聞き取る」ことが重要である.しかし,薬局薬剤師の「聞き取り」に対し,一部の一般市民は厳しい視線を投げかけており,患者の理解を促すためのエビデンス構築が急務である.本研究は「患者への聞き取り」に基づき実施された疑義照会に着目し,その実態解明と医療安全への貢献度評価を試みた.解析には北海道大学病院の近隣薬局の疑義照会データを用いた.その結果,聞き取りに基づく疑義照会は「薬学的疑義照会の 33.3%を占め,高い許諾割合(98.5%)を有し,用法や用量などの疑義照会分類において,医療安全への貢献度が高い」ことが見いだされた.また,このうち「医師からの説明と処方内容が食い違う」ことが発端となった事例が,特に医療安全へ貢献していることが示された.「患者への聞き取り」に基づく疑義照会の有用性を広く調査するための基礎となる知見が創出された.
著者
岡原 一徳
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
pp.ra.2019-0004, (Released:2019-08-30)
参考文献数
28

要 旨:フレイルとは「加齢に伴い各種臓器の機能が低下し,身体の予備能力が低下した状態」を指す疾患概念である.一方,認知症の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia: BPSD)のうち「食欲低下などの摂食障害と意欲低下(アパシー)」が顕在化している特徴的な患者群が存在し,これらの患者ではフレイルが併発している場合がある.フレイルは認知症の発症要因および悪化要因とされているため治療介入が必要であるが,薬剤療法はまだ確立されていない.人参養栄湯[TJ-108 ツムラ人参養栄湯エキス顆粒(医療用)]は,古来より健忘のある高齢者の虚弱(フレイル)に用いられてきた処方の一つで,術後の体力低下,疲労倦怠,食欲不振,貧血などに対する効能効果を有する.実際,最近になり人参養栄湯がフレイルなアルツハイマー病患者の食欲低下やアパシー,さらには認知機能を同時に改善することが報告された.本総説では当院における知見も含めて,フレイルな認知症患者に対する人参養栄湯の効果,またその作用メカニズムについて概説する.