著者
奥田 恵司 佐久間 泰司 前田 照太 岡崎 定司
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.3-13, 2012 (Released:2013-07-26)
参考文献数
33

目的:咀嚼障害や歯の欠損と全身の健康との関係が注目されているが、咀嚼障害が脳機能に及ぼす影響はいまだ解明されていない部分が多い.そこで本論文では筆者が携わった動物実験をもとに咀嚼障害が脳機能に及ぼす影響の一部を解説する.研究の概要:研究1:ラット18匹を用い4週齡で上顎臼歯をすべて抜歯した抜歯群,同量の麻酔のみを施した麻酔群,いかなる処置も行わない無処置群の3群を設定した.脳内マイクロダイアリシス法にてテタヌス刺激を与えた海馬の機能時のグルタミン酸放出量を測定した結果,抜歯群で有意にグルタミン酸の放出量が低下した.研究2:5週齡のラット16匹を用い5週齢で上顎臼歯をすべて抜歯した抜歯群と同量の麻酔のみを施した対照群の2群を設定した.テレメトリーバイオセンサーシステムを用い受動的回避実験中の海馬のグルタミン酸放出量を測定した結果,獲得試行では抜歯群が有意に少なく,保持試行では両群に有意差はなかった.考察:早期に臼歯を失うことは咀嚼障害のみならず,海馬のグルタミン酸のシナプスにおける遊離量を減少させ,神経生化学機能に障害を及ぼす可能性が示唆された.結論:早期の臼歯喪失が学習記憶の障害を誘発する一要因になりうることが明らかとなった.
著者
奥田 恵司 佐久間 泰司 前田 照太 岡崎 定司
出版者
Japanese Society of Orofacial Pain
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.3-13, 2012

目的:咀嚼障害や歯の欠損と全身の健康との関係が注目されているが、咀嚼障害が脳機能に及ぼす影響はいまだ解明されていない部分が多い.そこで本論文では筆者が携わった動物実験をもとに咀嚼障害が脳機能に及ぼす影響の一部を解説する.<br>研究の概要:研究1:ラット18匹を用い4週齡で上顎臼歯をすべて抜歯した抜歯群,同量の麻酔のみを施した麻酔群,いかなる処置も行わない無処置群の3群を設定した.脳内マイクロダイアリシス法にてテタヌス刺激を与えた海馬の機能時のグルタミン酸放出量を測定した結果,抜歯群で有意にグルタミン酸の放出量が低下した.研究2:5週齡のラット16匹を用い5週齢で上顎臼歯をすべて抜歯した抜歯群と同量の麻酔のみを施した対照群の2群を設定した.テレメトリーバイオセンサーシステムを用い受動的回避実験中の海馬のグルタミン酸放出量を測定した結果,獲得試行では抜歯群が有意に少なく,保持試行では両群に有意差はなかった.<br>考察:早期に臼歯を失うことは咀嚼障害のみならず,海馬のグルタミン酸のシナプスにおける遊離量を減少させ,神経生化学機能に障害を及ぼす可能性が示唆された.<br>結論:早期の臼歯喪失が学習記憶の障害を誘発する一要因になりうることが明らかとなった.
著者
上り口 晃成 青木 誠喜 森田 真功 田畑 勝彦 畦崎 泰男 前田 照太 井上 宏
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.248-254, 2002-12-25
被引用文献数
10

我々は唾液を経時的に採取しつつ,歯肉浸潤麻酔を行う試行と行わない試行を設定し,唾液中ストレスホルモンであるコルチゾールおよびクロモグラニンAの濃度変化を分析することで,疼痛刺激が唾液中ストレスホルモン濃度に与える影響を検討した.被検者として,健康な健常有歯顎者8名を用いた.実験は3日間行い,1日目は実験説明日とし,2日目と3日目に浸潤麻酔日とコントロール日をランダムに割り当てた.実験説明日は実験内容の説明と実験環境への順応を目的とした.コントロール日と浸潤麻酔日は同一時刻に実験を開始し,被検者を水平位にて10分間安静に保った後2分間の唾液採取と8分間の安静期間を交互に6回繰り返した.浸潤麻酔日においては,2回目の唾液採取直前である,安静開始後19分15秒から45秒までの30秒間,上顎中切歯歯肉頬移行部に浸潤麻酔を行った.採取した唾液は直ちに-50℃にて凍結し,ホルモン濃度を測定するまで保存した.濃度分析は凍結した唾液を解凍した後,3000rpmで30分間遠心分離し,EIA法にて測定した.統計解析として,危険率10%で浸潤麻酔の有無および時間を因子とした反復測定分散分析を行った.また,被検者ごとに異なる変化パターンを統合的に比較するため,各試行における変動係数を求め,危険率10%で浸潤麻酔の有無について対応のあるt検定を行った.分析の結果,歯肉浸潤麻酔による疼痛刺激は唾液中コルチゾール濃度およびクロモグラニンA濃度を上昇させるほど大きなストレスではないことが明らかとなった.また,唾液中コルチゾール濃度の経時的減少は水平位による安静効果がもたらしたと推察された.そして,経時的測定を行った唾液中コルチゾール濃度の変動係数を比較することで,歯肉浸潤麻酔によるストレスを評価できる可能性が示唆された.
著者
呉本 晃一 前田 照太 井上 宏
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-23, 1997-08-30
被引用文献数
1 1

クリッキングやクレピタスなどの顎関節雑音はこれまで多くの研究によって報告されてきたが, その対照となる正常者の顎関節運動音に関する研究は数少ない.我々は正常者の顎関節運動音の性状を明らかにし, またコンタクトマイクロフォンにより測定する場合, どの様な要因に影響を受けるかを明らかにすることを目的として実験を行った.被検者は自覚的他覚的に顎関節に異常を認めず, 聴診および触診においても顎関節に雑音を認めない正常有歯顎者9名とし, 測定部位を4カ所に設定し, 開口速度も3段階に変化させた.顎関節運動音とマイクロフォンの揺れはコンタクトマイクロフォンとそれに外付けした加速度計を用いて観察した.その結果, 1.正常者の顎関節運動音は30Hz以下に限局した周波数分布を示し, 2〜4Hz付近にピーク周波数をもつことが明らかとなった.2.コンタクトマイクロフォンによる正常者の顎関節運動音は関節内部の音とともに顆頭運動に伴う顎関節の動きをもとらえていることが推察された.3.測定部位の違いにより顎関節運動音は周波数分布が変化し, 開口速度の違いにより運動音の大きさが変化することが明らかとなった.4.マイクロフォンの揺れ(加速度)からみて, 顎関節運動音は平均的顆頭点の前方20mmの位置で測定することが最適であると考えられた.