著者
鈴木 一郎 正津 晃 井上 宏司 中島 功 猪口 貞樹 上田 守三 大谷 泰雄 三冨 利夫 相川 浩幸 重田 定義
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.917-924, 1990-05-25 (Released:2009-04-21)
参考文献数
22

東海大学病院開設以来14年間に散弾銃銃創8例を経験した.8例とも男性で,事故による被弾であり,全例に入院を要した.2例は血気胸のため胸腔ドレーンを挿入,1例は視神経に隣接した散弾による視力障害のために開頭術,1例は膝関節貫通損傷にて大腿骨・経骨の部分切除を行った.死亡例はない.試験開胸や試験開腹術を要した症例はない. 1例は創感染を生じたが治療により改善し,他の7例には早期・晩期のいずれにおいても感染はなかった. 体内に残留した散弾の完全除去は非常に困難であり,しかも不必要である.ただし,鉛は関節滑液に溶解しやすく,周囲組織に沈着しやすいので,関節内の散弾や関節周囲の偽嚢胞は除去しなければならない. 体内遺残散弾による急性鉛中毒は非常に稀であり,受傷後最長13年8ヵ月を経過しているが,未だ本症を疑わせる症例はない.
著者
井上 宏
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.57-68, 2006

大阪とはどんな街なのか、「文化」の側面から考えるとき、「笑いの文化」を抜きにして大阪を論じることはできない。大阪では、漫才や落語、喜劇などの「笑いの芸能文化」が盛んであるばかりでなくて、大阪人の生活のなかに、暮らしの仕方の中に「笑い」が織りこまれている。大阪弁をはじめとして、大阪人の生活態度、価値観、ものの考え方の中に「笑いの文化」が一貫して流れていると言ってよい。大阪は、「サムライ社会」におけるように、「笑い」を軽蔑することなく、むしろ「笑い」を奨励する文化を発達させてきた。その発達の理由は、大阪が江戸時代から一貫して「商人社会」として発展をみてきたことにあると思われる。そこに商人たちのライフスタイル、生活文化が生まれたわけである。まずは大阪人が発達させた大阪弁があげられる。商人は、「交渉する」ことが日常の生業としてあって、大阪弁を使ってそれを円滑に行ってきたわけである。当然のこととして「 口の文化」が発展する。しかも商いは厳しい「競争関係」のなかで行われるので、競争からくる緊張や対立は、笑いによって緩和する必要がある。人と人との距離をできるだけ近くにとっていこうとするとき、笑顔や笑いは欠かせない。洒落やジョーク、笑わせるための方法も発達する。毎日の生活の中に笑いがあり、笑いのある生活文化が発達をみた。大阪人の生活文化と笑いとの関係を追跡した。
著者
黄木 景二 井上 宏樹 白石 哲郎 藤村 雅博
出版者
学校法人 金沢工業大学 材料システム研究所
雑誌
材料システム (ISSN:02866013)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.19-28, 2007 (Released:2021-02-17)
参考文献数
11

This paper presents temperature dependence of electric resistance and Joule heat properties in carbon fiber reinforced polyethersulphone (PES) resin composites. The composite specimens were fabricated using recycled CFRP pieces or carbon fibers mixed with PES resin through an injection molding method. First, resistivitytemperature curves of the composites specimens were measured during heat cycles. Next, temperature rise due to Joule heat was measured and plotted against input power. Finally, resistivity of carbon fiber was measured for temperatures up to 473 K. It is found that resistivity of the composites obeys the percolation power law and shows the negative temperature coefficient (NTC) in the temperature range lower than load-deflection temperature of the resin. This NTC is proved to be mainly due to the NTC of carbon fiber. Resistivity at room temperature is reduced after each heat cycle. Temperature rise due to Joule heat is approximately proportional to input power per unit volume.
著者
福島 卓司 畦崎 泰男 井上 宏
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.195-200, 2004-06-25
被引用文献数
6

歯科診療時に日常的に行われる処置に患者はストレスを感じているが,そのストレス軽減のためにはインフォームドコンセントや信頼形成が必要とされている.今回の研究目的は,歯科診療処置の繰返し経験が,患者の自律神経活動にどのような影響を与えるかを検討することである.方法 歯科浸潤麻酔と印象採得を疼痛を伴う処置と不快感を伴う処置として選択して負荷ストレッサーとした.被験者5名に1週間隔でこの試行を計3回繰り返して行った.実験中は心電図をモニターし,心拍数と共に,R-R間隔のパワースペクトルから低周波成分(LF:0.04-0.15Hz)および高周波成分(HF:0.15-0.40Hz)の積分値を算出し,その比(LF/HF)を交感神経活動の指標とした.各条件での心拍数とLF/HFの変化は繰り返しのある二元分散分析による解析を行った.1.歯科浸潤麻酔は1回目から3回目にいたるまで開始合図に対して麻酔中は心拍数が低下,麻酔後は上昇した.しかし試行回数を重ねるにしたがって合図時は減少して安静時に近づくのに対して,麻酔中,麻酔後には回数を重ねることによる差は認められなかった.LF/HFでは麻酔中の値に,繰り返しによる差は認められなかった.2.印象採得は1回目2回目は開始合図に対して印象中の心拍数は低下し,印象撤去後は上昇するが,3回目では差は認められなかった.また回数を重ねると,合図,印象時,印象撤去後は安看割犬態に近づく傾向が認められた.LF/HFでは印象中は上昇するが,繰り返しにより安静時に近づいた.以上の結果から,痛みを伴うストレッサーに対しては繰り返しによる交感神経活動の低下がみられず,痛みを伴わないストレッサーに対しては,繰り返しによる交感神経活動の低下と安定化が認められ,ストレスに対する慣れがうかがわれた.
著者
井上 宏 多喜 弘次
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.45-72, 1981-11-30

神先秀雄・薄田桂・友松芳郎三教授古稀記念特輯
著者
井上 宏
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.57-68, 2006-05-27 (Released:2017-09-22)

大阪とはどんな街なのか、「文化」の側面から考えるとき、「笑いの文化」を抜きにして大阪を論じることはできない。大阪では、漫才や落語、喜劇などの「笑いの芸能文化」が盛んであるばかりでなくて、大阪人の生活のなかに、暮らしの仕方の中に「笑い」が織りこまれている。大阪弁をはじめとして、大阪人の生活態度、価値観、ものの考え方の中に「笑いの文化」が一貫して流れていると言ってよい。大阪は、「サムライ社会」におけるように、「笑い」を軽蔑することなく、むしろ「笑い」を奨励する文化を発達させてきた。その発達の理由は、大阪が江戸時代から一貫して「商人社会」として発展をみてきたことにあると思われる。そこに商人たちのライフスタイル、生活文化が生まれたわけである。まずは大阪人が発達させた大阪弁があげられる。商人は、「交渉する」ことが日常の生業としてあって、大阪弁を使ってそれを円滑に行ってきたわけである。当然のこととして「 口の文化」が発展する。しかも商いは厳しい「競争関係」のなかで行われるので、競争からくる緊張や対立は、笑いによって緩和する必要がある。人と人との距離をできるだけ近くにとっていこうとするとき、笑顔や笑いは欠かせない。洒落やジョーク、笑わせるための方法も発達する。毎日の生活の中に笑いがあり、笑いのある生活文化が発達をみた。大阪人の生活文化と笑いとの関係を追跡した。
著者
山本 さつき 井上 宏
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.282-291, 2003-04-10
参考文献数
25
被引用文献数
5 2

目的: 咬合障害とストレス反応の関連を明らかにするために咬合障害を与えたラットの前頭皮質ドーパミン放出量を測定した. 咬合障害を付与した状態での摂食時ドーパミン放出量の増加は不安を含めた精神医学的なストレス反応に関与しているという仮説を検証するために, 抗不安作用のあるベンゾジアゼピン系薬物ジアゼパムの影響を調べた.<BR>方法: 前頭皮質中のドーパミン放出量の測定はマイクロダイアリシス法を用いて行った. 各実験において対照群と咬合障害群の2群に分け, おのおのをn=6とした. ドーパミン放出量の測定は摂食180分後まで行った. 実験1固形飼料を摂食させ, ドーパミン放出量の経時的変化を測定した. 実験2摂食前にジアゼパムを投与し, その後のドーパミン放出量の経時的変化を測定した. 実験3摂食前に生理食塩水を投与し, その後のドーパミン放出量の経時的変化を測定した.<BR>結果: 実験1咬合障害群は摂食後ドーパミン放出量に有意な増加を認めた.実験2咬合障害群と対照群でドーパミン放出量に有意差は認められなかった. 実験3咬合障害群は摂食後, ドーパミン放出量に有意な増加を認めた.<BR>結論: 咬合障害を付与したラットの摂食時前頭皮質ドーパミン放出は増大し, その反応はジアゼパムにより抑制されることが統計学的に証明された. 本研究により, 咬合障害は不安を含めた精神医学的ストレスを惹起することが明らかにされた.
著者
飯野 成憲 辰市 祐久 山崎 実 茂木 敏 吉田 慎太郎 井上 宏 荒井 康裕
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集
巻号頁・発行日
vol.24, 2013

東京都は小型電子機器などが多く排出されているため、「都市鉱山」としてのポテンシャルが高い。しかし、不燃ごみ中の希少金属・主要金属は鉄やアルミなど一部の資源を除いて破砕を経て最終処分場に埋め立てられている<sup>1)</sup>。不燃ごみ中の有用な金属の再資源化のためには、小型電子機器等の回収可能量を定量的に把握することが必要である。<br> そこで、不燃ごみ中の電子機器等のごみ質組成を調査することにより、都内において実際に排出される小型電子機器等の総排出量を推計した。また、天然資源採掘量の削減という点に着目し、再資源化による天然資源採掘量の削減効果を推計したので報告する。
著者
上り口 晃成 青木 誠喜 森田 真功 田畑 勝彦 畦崎 泰男 前田 照太 井上 宏
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.248-254, 2002-12-25
被引用文献数
10

我々は唾液を経時的に採取しつつ,歯肉浸潤麻酔を行う試行と行わない試行を設定し,唾液中ストレスホルモンであるコルチゾールおよびクロモグラニンAの濃度変化を分析することで,疼痛刺激が唾液中ストレスホルモン濃度に与える影響を検討した.被検者として,健康な健常有歯顎者8名を用いた.実験は3日間行い,1日目は実験説明日とし,2日目と3日目に浸潤麻酔日とコントロール日をランダムに割り当てた.実験説明日は実験内容の説明と実験環境への順応を目的とした.コントロール日と浸潤麻酔日は同一時刻に実験を開始し,被検者を水平位にて10分間安静に保った後2分間の唾液採取と8分間の安静期間を交互に6回繰り返した.浸潤麻酔日においては,2回目の唾液採取直前である,安静開始後19分15秒から45秒までの30秒間,上顎中切歯歯肉頬移行部に浸潤麻酔を行った.採取した唾液は直ちに-50℃にて凍結し,ホルモン濃度を測定するまで保存した.濃度分析は凍結した唾液を解凍した後,3000rpmで30分間遠心分離し,EIA法にて測定した.統計解析として,危険率10%で浸潤麻酔の有無および時間を因子とした反復測定分散分析を行った.また,被検者ごとに異なる変化パターンを統合的に比較するため,各試行における変動係数を求め,危険率10%で浸潤麻酔の有無について対応のあるt検定を行った.分析の結果,歯肉浸潤麻酔による疼痛刺激は唾液中コルチゾール濃度およびクロモグラニンA濃度を上昇させるほど大きなストレスではないことが明らかとなった.また,唾液中コルチゾール濃度の経時的減少は水平位による安静効果がもたらしたと推察された.そして,経時的測定を行った唾液中コルチゾール濃度の変動係数を比較することで,歯肉浸潤麻酔によるストレスを評価できる可能性が示唆された.
著者
池田 直也 内田 愼爾 井上 宏
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.77-89, 1999-06-25
被引用文献数
1

バイトプレート上における咬合接触状態の変化が,開閉口運動と開閉口筋活動に及ぼす影響を観察するため,下顎両側臼歯部歯列を覆う実験用バイトプレートを作製し,上顎臼歯部の左右機能咬頭を8点接触させるよう調節した(AL).この状態からバイトプレート上の咬合接触点を7__-6__-5__-&mid;5__-6__-7__-,7__-6__-&mid;6__-7__-,6__-&mid;6__-,6__-&mid;接触と変化させていき,各接触状態でopen-close-clench cycleを行わせた.この時の外側翼突筋下頭(Lpt),顎二腹筋削腹(Dig),咬筋(Mm)からの筋電図を,MKG下顎切歯点運動とともに記録し,下顎運動とEMGの時間的要素,筋活動要素,開閉口経路,閉口時終末顎位の分析から,次のような結果を得た. Cycle time,各筋のdurationおよびintervalは,おおむね咬合接触の減少とともに短縮した.平均開口加速度はAL接触から6__-&mid;6__-接触まで有意に増加したが,6__-&mid;接触で再び低下した.変異係数(CV)の観察では,cycle timeのCV値には接触点の変化による変動が見られなかった.durationのCV値は,開口筋,MmともにALでは低い値を示し,接触点が変わると変動したが,その傾向は筋間で異なった.積分値は開口筋,Mmとも接触点の減少により低下する傾向を示した.開閉口経路は,接触点の変化により変化しなかった.切歯点の閉口時終末点平均値は,接触点の変化によって,左右,前後方向とも有意に変動しなかったが,そのばらつきを示す標準偏差(SD)は,6__-&mid;接触時に他の接触条件に比べて左右方向で有意に増大した. 以上の結果より,AL接触は開閉口リズムは遅いものの規則性に優れており,接触点の減少によって開閉口運動に要するエネルギーは少なくなり,開閉口速度は速くなるがリズム性は乱れる可能性が示唆された.特に片側性の接触では,リズムばかりでなく,終末顎位にも影響を及ぼすことが示された.
著者
呉本 晃一 前田 照太 井上 宏
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-23, 1997-08-30
被引用文献数
1 1

クリッキングやクレピタスなどの顎関節雑音はこれまで多くの研究によって報告されてきたが, その対照となる正常者の顎関節運動音に関する研究は数少ない.我々は正常者の顎関節運動音の性状を明らかにし, またコンタクトマイクロフォンにより測定する場合, どの様な要因に影響を受けるかを明らかにすることを目的として実験を行った.被検者は自覚的他覚的に顎関節に異常を認めず, 聴診および触診においても顎関節に雑音を認めない正常有歯顎者9名とし, 測定部位を4カ所に設定し, 開口速度も3段階に変化させた.顎関節運動音とマイクロフォンの揺れはコンタクトマイクロフォンとそれに外付けした加速度計を用いて観察した.その結果, 1.正常者の顎関節運動音は30Hz以下に限局した周波数分布を示し, 2〜4Hz付近にピーク周波数をもつことが明らかとなった.2.コンタクトマイクロフォンによる正常者の顎関節運動音は関節内部の音とともに顆頭運動に伴う顎関節の動きをもとらえていることが推察された.3.測定部位の違いにより顎関節運動音は周波数分布が変化し, 開口速度の違いにより運動音の大きさが変化することが明らかとなった.4.マイクロフォンの揺れ(加速度)からみて, 顎関節運動音は平均的顆頭点の前方20mmの位置で測定することが最適であると考えられた.
著者
上り口 晃成 井上 宏 森本 兼曩
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.48-54, 2003-03-25
参考文献数
27
被引用文献数
7

本研究の目的は,唾液を非侵襲的に採取し,そのコルチゾール濃度を分析することで,歯科処置によるストレス反応に治療内容の詳細な説明と来院の繰り返しが与える影響を検討することにある.被検者は,専門的な医学的知識をもたない者を対象に本研究の主旨を説明し,実験協力の同意を得たボランティア18名(男性16名,女性2名,平均年齢20.3歳)を用いた.実験手順として,まず被検者を診療室に入室させ,実験の説明を行い,同意を再確認した.説明群には実験器具をすべて見せながら詳細な手順を説日し,非説明には実験の概略のみを説明した.次に,SpielbergerのSTATE-TRAIT ANXIETY INVENTORY(以後STAIとする)および不安に関するVisual Analogue Scale(以後VASとする)を記入させた.そして水平位にて歯科処置を行い,唾液を採取し,再度VAS、STAIを記録した.歯科処置として,□腔内診査,上顎中切歯部歯肉への浸潤麻酔,下顎歯列の超音波スケーリング,上顎のアルジネートによる印象採得を順に行った.統計解析の結果,コルチゾール濃度のCV値は,非説明群が説明群と比べて有意に高い値を示した.また,非説明群において第1日目のCV値が高<,第2日目にかけて減少する傾向がみられた.STAIの状態不安スコアに関しては開始時が終了時よリ,また第1日目が第2日目より有意に高い値を示した.不安に開するVAS値は説明の有無と来院回数間に交互作用がみられ,非説明群において第1日目が第2日目よリも有意に高い不安VAS値を示した.さらに,不安に関するVAS値と疼痛に関するVAS値はともに同一処置への来院の繰り返しによって低下することが示された.以上の結果から、歯科処置によって生じるストレス反応は,来院回数によって慣れが生じて減少するとともに,ストレスの軽減には詳細な処置内容の説明が有効であることが明らかとなった.
著者
井上 宏
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.75-82, 1989
被引用文献数
3 10

カラタチ台ウンシュウミカン('興津早生'または'宮川早生') の1~3年生樹 (素焼鉢またはワグナーポット植え) を環境制御室の15,20,25及び30°C室に適宜,搬入し, 昼夜恒温の条件下で栽培し, 新梢上の花芽の分化と発達の温度条件を, 露地においた個体との比較で観察した.<br>1. 1年生樹を, 3月1日または4月1日から各温度室に搬入して, 地上部の生長周期を調査した. 露地区では春枝の伸長停止後, 30~50日して, 春枝上に夏枝が発生した. 温度処理区では高温区ほど春枝の発芽までの日数が短く, その伸長期間も短く, また夏枝発生までの伸長停止期間も短くなった. ただし, 15°C区では春枝上に夏枝は発生せず, 直花が多数に発生した. 20°C区でも夏枝の発生はごくわずかで, 有葉花を含む花蕾が多発した. 一方, 25°C区と30°C区では夏枝が盛んに伸長したが, 花蕾の発生は認められなかった.<br>2. 1年生樹を, 春枝が伸長停止し, 充実を開始した6月中旬より20°Cまたは15°C室におく期間を種々変え, その後25°C室に移して花蕾発生の有無を観察した.15°C室に2か月, 20°C室に2.5か月以上おいた個体で発蕾したが, 低温の室におくほど, また長期間おくほど発蕾数が多くなり, 直花の割合は高くなった. 20°Cまたは15°C室に開花までおいたものでは, 大きな偏平な子房を示したが, 25°C室に早く移した個体ほど腰高の子房となり, 小さかった.<br>3. 3年生樹を花芽の形態的分化期(3月20日) 及びその前後1か月に15, 20, 25°C室に搬入して, 花芽の分化と発達の状態を観察した. 形態的分化1か月前でさえも, 各温度室で極めて短期間 (25°C室で8日で発蕾) に花器が完成され, 開花に至ることを認めた. 開花期間も高温におかれるほど短くなった.<br>4. 2年生または3年生樹を9月下旬から各月に2回, 20°Cまたは25°C室に搬入して, 発蕾及び開花の状況を調査した. 25°C区では10月下旬搬入区から花蕾が発生して開花したが, 20°C区では11月上旬以前には花蕾が極端に少なく, 開花までに落下した.