- 著者
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井上 宏
- 出版者
- 園藝學會
- 雑誌
- 園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.1, pp.75-82, 1989
- 被引用文献数
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3
10
カラタチ台ウンシュウミカン('興津早生'または'宮川早生') の1~3年生樹 (素焼鉢またはワグナーポット植え) を環境制御室の15,20,25及び30°C室に適宜,搬入し, 昼夜恒温の条件下で栽培し, 新梢上の花芽の分化と発達の温度条件を, 露地においた個体との比較で観察した.<br>1. 1年生樹を, 3月1日または4月1日から各温度室に搬入して, 地上部の生長周期を調査した. 露地区では春枝の伸長停止後, 30~50日して, 春枝上に夏枝が発生した. 温度処理区では高温区ほど春枝の発芽までの日数が短く, その伸長期間も短く, また夏枝発生までの伸長停止期間も短くなった. ただし, 15°C区では春枝上に夏枝は発生せず, 直花が多数に発生した. 20°C区でも夏枝の発生はごくわずかで, 有葉花を含む花蕾が多発した. 一方, 25°C区と30°C区では夏枝が盛んに伸長したが, 花蕾の発生は認められなかった.<br>2. 1年生樹を, 春枝が伸長停止し, 充実を開始した6月中旬より20°Cまたは15°C室におく期間を種々変え, その後25°C室に移して花蕾発生の有無を観察した.15°C室に2か月, 20°C室に2.5か月以上おいた個体で発蕾したが, 低温の室におくほど, また長期間おくほど発蕾数が多くなり, 直花の割合は高くなった. 20°Cまたは15°C室に開花までおいたものでは, 大きな偏平な子房を示したが, 25°C室に早く移した個体ほど腰高の子房となり, 小さかった.<br>3. 3年生樹を花芽の形態的分化期(3月20日) 及びその前後1か月に15, 20, 25°C室に搬入して, 花芽の分化と発達の状態を観察した. 形態的分化1か月前でさえも, 各温度室で極めて短期間 (25°C室で8日で発蕾) に花器が完成され, 開花に至ることを認めた. 開花期間も高温におかれるほど短くなった.<br>4. 2年生または3年生樹を9月下旬から各月に2回, 20°Cまたは25°C室に搬入して, 発蕾及び開花の状況を調査した. 25°C区では10月下旬搬入区から花蕾が発生して開花したが, 20°C区では11月上旬以前には花蕾が極端に少なく, 開花までに落下した.