著者
前納 弘武 大鐘 武 草柳 千早 池田 緑
出版者
大妻女子大学
雑誌
大妻女子大学紀要. 社会情報系, 社会情報学研究 (ISSN:13417843)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-82, 2007

1990年代以後、大学における変化あるいは改革のひとつとして、新しい名称をもち複合的な学問分野からなる学部が増えているという現象がある。そうした学部のなかには、カリキュラムに社会学分野の科目を含むものも少なくない。しかしそれらの学部での社会学教育には、従来とは異なる固有の難しさがあるように思われる。筆者らは、平成16年度大妻女子大学社会情報学部プロジェクト研究として、「複合的な学問分野からなる学部における社会学教育の現状と課題」研究を実施し、その一環として、新名称を冠し、複合的な学問分野からなっていると思われる全国の大学学部の社会学教育担当者を対象に質問紙調査を行った。本稿ではこの調査結果について、第1に、学部における社会学教育の位置づけ、第2に、社会学分野の科目を教える際の諸問題、第3に、学生に学んでほしいこと、教育の重点、第4に、社会学教育が担うべき役割、以上の4点について概観し、教育上の課題を論じる。調査結果からは、複合的な学問分野からなる学部における社会学教育の問題として、カリキュラム上の基礎であっても社会学を体系的に教育することが難しい、また基礎であってもなくても、カリキュラム上の他の分野・科目との整合性、連携が難しいこと、学生の関心・知識・理解度にばらつきが生じていること、の主な3点が明らかになった。
著者
前納 弘武 炭谷 晃男 飯田 良明
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

1996年4月1目、東京都小笠原村は新たな歴史の1ページを開くこととなった。これまでテレビ放送と言えば、NHK衛星放送2局しか視聴できなかった小笠原に、民間放送8局の地上波が導入され、東京23区と同じように合計10局のテレビ放送を享受することができるようになったのである。そこで、本研究はテレビ地上波導入をはさんで、「事前調査」と「事後調査」を行い、この2つの結果を比較分析することによって、テレビというマス・メディアが小笠原祉会に与える影響を実証的に明らかにしようとする点にあった。その研究成果については、『メディアの多様化と小笠原社会の変容』と題する調査報告書にとりまとめたが、そのうちの一部のみあげれば、先ず、テレビ視聴時間については、明らかに地上波導入以後の方が長くなるという結果であった。すなわち、事前調査では、2時間以内の視聴が6割程度に達していたが、事後調査では、3時間視聴が23.0%、4時間以上の視聴が29.1%という結果であり、長時間視聴者の増加はまことに顕著であった。しかし小笠原では、新聞の購読が習慣化されていないために、テレビ情報だけでは、これまでの「情報格差」からの脱却は不可能であることを指摘した。また、テレビ視聴時間の増大は、「家族や近隣での会話を少なくする」方向に作用していることが明らかになった。小笠原において、テレビ地上波の導入は人々の会話のチャンスを奪い取るという結果になっていることが判明した。ほかに、テレビの社会的な影響として、小笠原住民が懸念している事柄は、生活様式や思考様式の画一化作用、青少年の非行化作用、風俗や習慣の流動化作用などであった。これらの詳細な分析については、上記「調査報告書」のほか、別途、研究成果として刊行物を予定しているところである。