著者
池田 緑
出版者
大妻女子大学
雑誌
大妻女子大学紀要. 社会情報系, 社会情報学研究 (ISSN:13417843)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.39-61, 2006

女子大学の教育目的には、「地位形成機能」と「地位表示機能」が存在するといわれてきた。しかし男女共同参画社会の趨勢のなかで、女子大学には改めて「地位形成機能」の充実が求められている。しかしながら目を転じれば、女子大学では古風な性別役割観が再生産され、家父長制的価値観に学生を回収しようとする企図も、いまだ根強く残っている。そのような企図は、女性へのセクシャルなまなざし、ミソジニー(女性嫌悪)と共に存在している。同様な視点は女子大学を取り巻く環境にも、また女子大に勤務する教員にも共有されている。家父長制的価値観は、女子学生の「成功不安」を喚起し、学生の自己評価を貶め、男性依存への道を準備する。その結果、女子大学においては「地位表示機能」が重視され、そのことが彼女らを学問から遠ざけてしまう。このように伝統的性別役割観が再生産され、学生たちの学問への動機が奪われてゆく過程は、一種の「温室効果」に似ている。そのような状況を打ち破るためには、「温室」を、ジェンダーの政治が露見する「戦場」に作り変える必要がある。そのためには、最初に男性教員を中心に、ジェンダーを克服することが、学生自身に学業の意義を理解させるための第一歩であり、そのような学問が社会的需要とも合致していることを理解することが必要である。そのような認識の共有のためには、男性教員をジェンダーに意識的にするための制度作りが必要である。そしてすべての授業において、ジェンダーの視点から男性中心の学問体系を再構築することが求められており、その結果として行われる教育は「女性支援教育」と呼ばれるにふさわしいものとなるだろう。
著者
池田 緑
出版者
大妻女子大学
雑誌
大妻女子大学紀要. 社会情報系, 社会情報学研究 (ISSN:13417843)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.25-41, 2004

女子大学はその学生を女性に限定していることによって,すでにジェンダー・ポリティックスの実践の場となっている。とくに女子大学に勤務する男性教員は,この女子大学のもつ政治性ゆえに,政治的な存在であらざるをえない。男性教員による女子学生への監視の視線,男性教員による言説の女子大特有のジェンダー・ポリティックスに伴う政治的効果,女子大における男性性およびホモソーシャリティの再生産の政治的効果など,を考えることにより,良妻賢母思想と女性解放思想の間で揺れ動いてきた女子大の政治性と,そこに勤務する男性教員のポジショナリティを問う枠組みを示したい。そのうえで,男女共同参画時代に女子大において男性教員の存在が果たしうる政治的な効果と,社会への貢献の可能性について考える。
著者
前納 弘武 大鐘 武 草柳 千早 池田 緑
出版者
大妻女子大学
雑誌
大妻女子大学紀要. 社会情報系, 社会情報学研究 (ISSN:13417843)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-82, 2007

1990年代以後、大学における変化あるいは改革のひとつとして、新しい名称をもち複合的な学問分野からなる学部が増えているという現象がある。そうした学部のなかには、カリキュラムに社会学分野の科目を含むものも少なくない。しかしそれらの学部での社会学教育には、従来とは異なる固有の難しさがあるように思われる。筆者らは、平成16年度大妻女子大学社会情報学部プロジェクト研究として、「複合的な学問分野からなる学部における社会学教育の現状と課題」研究を実施し、その一環として、新名称を冠し、複合的な学問分野からなっていると思われる全国の大学学部の社会学教育担当者を対象に質問紙調査を行った。本稿ではこの調査結果について、第1に、学部における社会学教育の位置づけ、第2に、社会学分野の科目を教える際の諸問題、第3に、学生に学んでほしいこと、教育の重点、第4に、社会学教育が担うべき役割、以上の4点について概観し、教育上の課題を論じる。調査結果からは、複合的な学問分野からなる学部における社会学教育の問題として、カリキュラム上の基礎であっても社会学を体系的に教育することが難しい、また基礎であってもなくても、カリキュラム上の他の分野・科目との整合性、連携が難しいこと、学生の関心・知識・理解度にばらつきが生じていること、の主な3点が明らかになった。
著者
池田 緑
雑誌
大妻女子大学紀要. 社会情報系, 社会情報学研究 = Otsuma journal of social information studies
巻号頁・発行日
vol.15, pp.39-61, 2006

女子大学の教育目的には、「地位形成機能」と「地位表示機能」が存在するといわれてきた。しかし男女共同参画社会の趨勢のなかで、女子大学には改めて「地位形成機能」の充実が求められている。しかしながら目を転じれば、女子大学では古風な性別役割観が再生産され、家父長制的価値観に学生を回収しようとする企図も、いまだ根強く残っている。そのような企図は、女性へのセクシャルなまなざし、ミソジニー(女性嫌悪)と共に存在している。同様な視点は女子大学を取り巻く環境にも、また女子大に勤務する教員にも共有されている。家父長制的価値観は、女子学生の「成功不安」を喚起し、学生の自己評価を貶め、男性依存への道を準備する。その結果、女子大学においては「地位表示機能」が重視され、そのことが彼女らを学問から遠ざけてしまう。このように伝統的性別役割観が再生産され、学生たちの学問への動機が奪われてゆく過程は、一種の「温室効果」に似ている。そのような状況を打ち破るためには、「温室」を、ジェンダーの政治が露見する「戦場」に作り変える必要がある。そのためには、最初に男性教員を中心に、ジェンダーを克服することが、学生自身に学業の意義を理解させるための第一歩であり、そのような学問が社会的需要とも合致していることを理解することが必要である。そのような認識の共有のためには、男性教員をジェンダーに意識的にするための制度作りが必要である。そしてすべての授業において、ジェンダーの視点から男性中心の学問体系を再構築することが求められており、その結果として行われる教育は「女性支援教育」と呼ばれるにふさわしいものとなるだろう。
著者
池田 緑
出版者
大妻女子大学
雑誌
大妻女子大学紀要. 社会情報系, 社会情報学研究 (ISSN:13417843)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.55-77, 2005

これまで植民地主義は主に政治制度と歴史性に結び付けて論じられてきた。しかしそのような認識枠組みでは,制度としては消滅しても実効的に存続する植民地主義を問題化できない。また,この社会に遍在する植民地主義的な支配関係も捉えることができない。本稿では,植民地主義を制度や歴史性の問題ではなく,心的傾向の問題として再定義したい。それによって,社会に遍在する支配関係において,植民地主義の痕跡を発見することが可能になり,さらにはコロニアリストの心性の問題としてその責任を問題化することが可能になる。さらに本稿では,国民国家システムにおけるフォーディズム体制が社会の分業化を促し,被抑圧者を創設し,やがて本質主義によって正当化してきたことを整理する。その過程では,コロニアリストによる支配に際しての共通の手法が発見できる。支配関係を指し示す言説の欠落,区別論,被支配者への問題の転嫁,被支配者への介入と分断,被支配者の多様性の賞賛,自己欺瞞の強要,などである。これらの手法を注意深く見ることによって,制度化された支配の中に植民地主義の痕跡を発見し,「心の支配」の問題に転換して捉え直すための視点を模索する。
著者
池田 緑
雑誌
大妻女子大学紀要. 社会情報系, 社会情報学研究 = Otsuma journal of social information studies
巻号頁・発行日
vol.13, pp.25-41, 2004

女子大学はその学生を女性に限定していることによって,すでにジェンダー・ポリティックスの実践の場となっている。とくに女子大学に勤務する男性教員は,この女子大学のもつ政治性ゆえに,政治的な存在であらざるをえない。男性教員による女子学生への監視の視線,男性教員による言説の女子大特有のジェンダー・ポリティックスに伴う政治的効果,女子大における男性性およびホモソーシャリティの再生産の政治的効果など,を考えることにより,良妻賢母思想と女性解放思想の間で揺れ動いてきた女子大の政治性と,そこに勤務する男性教員のポジショナリティを問う枠組みを示したい。そのうえで,男女共同参画時代に女子大において男性教員の存在が果たしうる政治的な効果と,社会への貢献の可能性について考える。