著者
古川 聡子 河口 勝憲 加瀬野 節子 前田 ひとみ 末盛 晋一郎 通山 薫
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.648-654, 2014-09-25 (Released:2014-11-10)
参考文献数
3
被引用文献数
1

溶血・混濁は測定値に影響を与えるため,血清情報(溶血・混濁)を臨床側に報告することは病態把握および検査値を解釈する上で必要である.しかし,血清情報に関しては各施設任意の判定基準を採用しており,標準化が行われていないのが現状である.そこで,現状把握のため調査を実施した.調査内容はアンケート調査,溶血・混濁の希釈系列を用いたコメント付加開始点の調査(岡山県近隣施設の施設間差と目視判定の個人差)および測定値への影響について行った.アンケート調査では,約7割の施設が自動分析装置で血清情報の測定を行っており,報告形態は定性値の軽度(弱または微)・中度・強度の3段階が最も多く使用されていた.溶血のコメント付加開始点の調査ではヘモグロビン(Hb)濃度40~50 mg/dLでの設定が多く,Hb濃度50 mg/dLにおける測定値の変化はLD:53.0 U/L(+29.7%),K:0.16 mEq/L(+4.2%),AST:2.5 U/L(+10.2%)の上昇であり,その他の項目では影響(変化率:4%未満)は認めなかった.混濁のコメント付加開始点はイントラリポス濃度0.02%前後の設定が多く,イントラリポス濃度0.02%では測定値の変化は認められなかった(変化率:4%未満).また,溶血・混濁のコメント付加開始点は施設間で異なり,目視判定も個人の認識に差があることが明らかとなった.
著者
古川 聡子 河口 勝憲 前田 ひとみ 加瀬野 節子 小野 公美 上杉 里枝 通山 薫
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.332-336, 2016-05-25 (Released:2016-07-10)
参考文献数
6

急性冠症候群の診断に有用な検査項目として,ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)とトロポニンTがある。今回,H-FABP定性迅速検出キット「ラピチェック® H-FABP:ラピチェック」(DSファーマバイオメディカル)とH-FABP定量迅速検出キット「ラピッドチップ® H-FABP:ラピッドチップ」(積水メディカル)およびトロポニンT定性迅速検出キット「トロップTセンシティブ®:トロップT」(ロシュ・ダイアグノスティックス)の比較検討を行い,それぞれの検査キットの特徴を評価した。3キットともに陽性を示した疾患は急性心筋梗塞,狭心症,心不全,大動脈乖離,たこつぼ型心筋症などであった。H-FABPとトロポニンTの判定が異なった症例はすべてH-FABP:陽性,トロポニンT:陰性であった。H-FABPのみが陽性を示した中には,急性心筋梗塞の超急性期の症例,腎機能低下によりH-FABP濃度が上昇している可能性がある症例,骨格筋由来のH-FABPが血中に逸脱した症例などが確認された。さらに,H-FABPのみが陽性の中には心電図や心エコー上で治療介入を要する明らかな所見が確認されなかった症例(意識消失やヘルニア)も含まれていた。また,H-FABPのうちラピチェックのみが陽性であった2例は,めまい,不安障害の症例であり,ラピッドチップの定量値はそれぞれ5.5 ng/mL,5.0 ng/mLと陰性であった。これらの症例における,H-FABP上昇の可能性は低く,ラピチェックの偽陽性であることが示唆された。それぞれの心筋マーカー迅速キットが持つ特徴を理解し,使用することが必要である。