著者
友岡 史沙 前田 ひとみ
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.5_869-5_875, 2020-12-20 (Released:2020-12-20)
参考文献数
48

目的:国内外の文献から医療事故後の当事者サポートについて考察し,日本における効果的な当事者サポート体制への示唆を得る。方法:医中誌Web版を用い「医療事故」「サポート」「対応」をキーワードに抽出した和文献16件,CINAHL,MEDLINE,PubMedを用い「second victim」「support」「medical error」をキーワードに抽出した英文献26件を分析した。結果:当事者は同僚や先輩によるインフォーマルなサポートを求めており,当事者の安寧や成長に繋がっていた。欧米では同僚によるサポートプログラムの研究が進んでいたが,日本では管理者によるサポート研究が主であった。結論:医療事故後のサポートとともに組織の文化的背景が当事者に与える影響も大きかった。同僚であるスタッフへの当事者サポート教育や,組織の文化背景へアプローチするサポート体制が求められる。
著者
前田 ひとみ
出版者
医学書院
雑誌
看護研究 (ISSN:00228370)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.23-29, 2000-02-15

はじめに アメリカ合衆国の首都であるワシントンD.C.に隣接するメリーランド州ベセスダに,米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:略称NIH)のメインキャンパスがある。NIHは衛生機関の1つであるが,アメリカ合衆国最大の生物医学研究所でもある。昔,ゴルフ場だったというベセスダのキャンパスは300エーカー(1.2km2)以上の広さをもち,木々や芝生の緑に囲まれ,りすや鹿も訪れる自然豊かなところである。 NIHには博士取得者が約6,000人働き,年間7,000以上の論文が世に送り出されていると言われる。NIHは,ベセスダ以外にもフレデリック,バルチモア,ロッキーマウンテン等にも研究施設をもち,おそらく世界最大規模の生物医学研究機関といっても過言ではないであろう。また外国人研究者として日本人研究者も常に400人以上がNIHで働いていることから考えると,日本人にとってもNIHは最大の生物医学研究施設と言えるのではないだろうか。
著者
村上 美華 前田 ひとみ
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1_133-1_139, 2010-04-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
26

本研究の目的は,新人看護師の職業性ストレスを測定する尺度を開発することである。まず,2006年1月と2007年1月に就職後10 ヶ月目の新人看護師を対象に尺度原案を作成するための調査を行った。文章完成法により得られた記述を内容分析し,23項目5件法の質問紙を作成した。次に,3県の施設に勤務する新人看護師383名を対象に,就職後6~7ヶ月目である2007年9月~ 10月に質問紙調査を行い,尺度項目の選定とCES-D及びSEとの相関から信頼性と妥当性を検討した。因子分析の結果, 16項目3因子が精選され,『職場環境』『看護実践』『自己成長』と命名した。尺度全体のCronbach’s α係数は0.860であり,抑うつ自己評価尺度とは正の相関,自尊感情尺度とは負の相関が認められた。以上の結果から,本尺度の信頼性と妥当性は概ね確保されており,実用可能な尺度であると判断できる。
著者
伊山 聡子 前田 ひとみ 松本 智晴 南家 貴美代 児玉 栄一
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.4_769-4_777, 2020-09-20 (Released:2020-09-20)
参考文献数
12

本研究は,2016年の熊本地震を経験した医療機関の被害状況の特徴や診療体制,支援体制への影響をもとに,災害時の業務継続に必要な取り組みを考察することを目的とした。熊本地震被害の大きかった地域で,病床数100床以上の病院の看護部長と医療設備担当者を対象に半構造化面接法によるデータ収集を行った。①震災による診療・看護への影響,②施設のライフライン,建築・医療設備の被害状況,③災害対策マニュアルとBCPの活用状況,④医療スタッフへの対応と健康管理について分析した。災害時の業務継続に向けた取り組むべき対策として,医療設備や地域性を考慮した「使える災害対策マニュアル・BCPの作成」,「災害に対する社会が持つ脆弱性を考慮した防災教育・訓練の実施」,「業務継続に伴う職員の健康管理対策および平常時の地域・広域施設との連携の強化」の重要性が示された。
著者
古川 聡子 河口 勝憲 加瀬野 節子 前田 ひとみ 末盛 晋一郎 通山 薫
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.648-654, 2014-09-25 (Released:2014-11-10)
参考文献数
3
被引用文献数
1

溶血・混濁は測定値に影響を与えるため,血清情報(溶血・混濁)を臨床側に報告することは病態把握および検査値を解釈する上で必要である.しかし,血清情報に関しては各施設任意の判定基準を採用しており,標準化が行われていないのが現状である.そこで,現状把握のため調査を実施した.調査内容はアンケート調査,溶血・混濁の希釈系列を用いたコメント付加開始点の調査(岡山県近隣施設の施設間差と目視判定の個人差)および測定値への影響について行った.アンケート調査では,約7割の施設が自動分析装置で血清情報の測定を行っており,報告形態は定性値の軽度(弱または微)・中度・強度の3段階が最も多く使用されていた.溶血のコメント付加開始点の調査ではヘモグロビン(Hb)濃度40~50 mg/dLでの設定が多く,Hb濃度50 mg/dLにおける測定値の変化はLD:53.0 U/L(+29.7%),K:0.16 mEq/L(+4.2%),AST:2.5 U/L(+10.2%)の上昇であり,その他の項目では影響(変化率:4%未満)は認めなかった.混濁のコメント付加開始点はイントラリポス濃度0.02%前後の設定が多く,イントラリポス濃度0.02%では測定値の変化は認められなかった(変化率:4%未満).また,溶血・混濁のコメント付加開始点は施設間で異なり,目視判定も個人の認識に差があることが明らかとなった.
著者
古川 聡子 河口 勝憲 前田 ひとみ 加瀬野 節子 小野 公美 上杉 里枝 通山 薫
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.332-336, 2016-05-25 (Released:2016-07-10)
参考文献数
6

急性冠症候群の診断に有用な検査項目として,ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)とトロポニンTがある。今回,H-FABP定性迅速検出キット「ラピチェック® H-FABP:ラピチェック」(DSファーマバイオメディカル)とH-FABP定量迅速検出キット「ラピッドチップ® H-FABP:ラピッドチップ」(積水メディカル)およびトロポニンT定性迅速検出キット「トロップTセンシティブ®:トロップT」(ロシュ・ダイアグノスティックス)の比較検討を行い,それぞれの検査キットの特徴を評価した。3キットともに陽性を示した疾患は急性心筋梗塞,狭心症,心不全,大動脈乖離,たこつぼ型心筋症などであった。H-FABPとトロポニンTの判定が異なった症例はすべてH-FABP:陽性,トロポニンT:陰性であった。H-FABPのみが陽性を示した中には,急性心筋梗塞の超急性期の症例,腎機能低下によりH-FABP濃度が上昇している可能性がある症例,骨格筋由来のH-FABPが血中に逸脱した症例などが確認された。さらに,H-FABPのみが陽性の中には心電図や心エコー上で治療介入を要する明らかな所見が確認されなかった症例(意識消失やヘルニア)も含まれていた。また,H-FABPのうちラピチェックのみが陽性であった2例は,めまい,不安障害の症例であり,ラピッドチップの定量値はそれぞれ5.5 ng/mL,5.0 ng/mLと陰性であった。これらの症例における,H-FABP上昇の可能性は低く,ラピチェックの偽陽性であることが示唆された。それぞれの心筋マーカー迅速キットが持つ特徴を理解し,使用することが必要である。
著者
前田 ひとみ 岡本 淳子 寺本 淳子 山下 清香 山本 悌子 成田 栄子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.2_14-2_20, 1989

より行動化され易く、また、母親の意識を高めることの出来る保健指導を検討する為に、育児指導の内容や方法が異なる竜北町と熊本市の1才6ケ月児検診における母親の育児行動ならびに児の日常生活習慣の自立等の実態とそれまでに受けた指導とを比較した。 その結果、児の発達を追いながら個別性を考慮し、期間を区切って身近な目標を持たせるような指導は効果のあることが示唆された。そして、集団指導は効果的な指導の場となっており、加えて実習することによって母親自身に方法や知識が確実に習得されると思われる結果が得られたことから、項目によっては単に口述だけでなく、実習をまじえた指導がより効果的であると考えられた。一方、正常な発達過程や家族の生活形態や家族形態の影響を受け易い日常生活習慣については、指導の効果が現れにくいことが示唆された。
著者
前田 ひとみ 高村 寿子 渡邉 至 大石 時子
出版者
宮崎大学
雑誌
南九州看護研究誌 (ISSN:13481894)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.11-18, 2007-03
被引用文献数
2

Objectives: In order to develop a peer counseling program as a new strategy for youth-to-youth sex education, we examined whether the program modified cognition and behaviors of high school students regarding sexuality.###Methods: We administered a questionnaire about sexuality to high school students who participated in a peer counseling program under the auspices of the health centre from December 2003 to July 2004. The questionnaire contained Questions about sexually transmitted diseases, contraception, decision-making related to sexual behaviors, self-efficacy and self-esteem. This peer counseling program provided information about sexuality and negotiation skills in face of sexual pressures, was provided for hig-h school students by university students who had finished the peer counselor course using an empowerment-evaluation approach. The data were collected before and three months after the peer counseling program.###Results: 125 high school students were enrolled the peer coungeling program. The data from all students were collected before the peer counseling program. Follow-up data from 86 high school students were collected three months later. We were able to analyze 77 paired data on the pre-to post-intervention questionnaire.### 94.1% of the high school students had a favorable impression of the peer counseling program. They learned communication skills, and they reported an improved ability to form good human relations after the program. In addition, they reported an increase in knowledge and recognition about their sexuality. Scores of self-efficacy and self-esteem were higher after the program compared with scores before the program. As a result, it was suggested that their decision-making about safer sexual behaviors was improved.###Conclusion: Peer counseling, which is a new strategy of youth-to-youth sex education, was effective###in providing information and empowerment about sexuality for high school students.
著者
柊中 智恵子 中込 さと子 小野 ミツ 前田 ひとみ 武藤 香織 北川 小夜己 矢野 文佳 村上 理恵子 福田 ユカリ
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、遺伝性神経難病である家族性アミロイドポリニューロパチーに焦点を当て、患者・家族と看護職のニーズ調査をもとに、看護職に対する遺伝看護教育プログラムを開発することを目的として実施した。患者・家族のニーズ調査から、発症前遺伝子診断を受けて生きる人、発症者、家族といった立場の様々な苦悩や葛藤の様がわかった。また、看護職も遺伝性疾患ということで、対応に困難を感じていた。これらの結果に基づき、教育プログラムに盛り込む内容を検討した。
著者
深井 喜代子 前田 ひとみ 佐伯 由香 關戸 啓子 兵藤 好美 樅野 香苗 大倉 美穂
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は,看護ケア技術の科学的根拠を明らかにし,看護界におけるEvidence-Based Nursing(以下,EBN)推進の一役を担うことであった。清潔ケア,感染看護,寝床環境,食のケア,そして痛みのケアのそれぞれの領域において,ケア技術のエビデンスを探究する研究を遂行した結果,以下のことが明らかになった。1)39℃の湯を用いた10分間の片手の手浴は,事後に保温することによって1℃以上の両手の皮膚温上昇と温感が手浴後少なくとも30分間は保たれた。2)手浴終了後の薬用クリームの使用で保湿効果が持続し,皮膚の生理機能が維持された。3)学生の手洗い行動を習慣化させるには,行動化に向けた教育方法の検討が必要なことが分かった。4)シーツ素材の吸湿性が低いと,寝床気候の悪化を招来することが示唆された。5)ヒトの話声は,話の内容に係わらず,70dB以上の大きな声の場合,不快感や交感神経系の緊張を高めることが明らかになった。6)欠食は疲労の原因になるほか,やる気や精神状態の安定にも影響を及ぼすこと分かった。7)一側の手の手浴で反対側の手の実験的疼痛閾値が上昇することが明らかになった。8)看護行為で発生する様々な音のうち,比較的持続時間が長く,大きな音は鎮痛をもたらすが,一時的にストレス性の生体反応を引き起こすので,看護行為中の不用意な音の発生を避けるとともに,事前に音についての説明を行うべきであることが提案された。9)4基本味うち,甘味と酸味にpricking painに対する鎮痛効果があることが分かった。10)温罨法の鎮痛効果は,皮膚温38℃以上の加温で始めて現れることが,実験的に誘発したpricking painで証明された。