著者
加納 聖
出版者
岩手大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

動物には、種固有の大きさがあるが、それはどのような仕組みで決まっているのであろうか。例えば5倍体イモリにおいては、細胞の大きさは1倍体の5倍の大きさであり、全体の細胞数は5分の1になり結果的に体全体や組織の大きさは変わらない。このことから、体の大きさを制御するための細胞分裂調節機構があり、単に細胞数や分裂回数を数えているのではなく、何らかの方法で実際に大きさを調整する因子が存在すると考えられている。この体の大きさを調節していると考えられる因子の探索の糸口として本研究では、異数体ニワトリに注目した。異数体ニワトリは、コルセミドを投与することによって、卵子の減数分裂に異常を起こし、2倍体卵子が精子と受精することによって3倍体の個体が作出されるものである。この3倍体ニワトリ個体の外見上の大きさは、他の異数体動物と同様に2倍体個体と変わらない。雌ニワトリにコルセミドを投与し、3倍体ニワトリの作出を行った。一方、3倍体ニワトリは間性となることが多いので、その生殖巣についての研究が比較的よく行われているが、われわれはTGF-βシグナル伝達を中心としたゴールデンハムスター精巣の機能・大きさの変化の機構解明を中心に研究を行った。まず細胞増殖の制御、動物の体の大きさに対し重要な役割を持つと考えられるTGF-βスーパーファミリーのシグナル伝達因子であるSmad3のクローニングを行った。また飼育室の点灯条件を変化させて人工的に萎縮させたゴールデンハムスター精巣においてSmadフアミリー、特にSmad2ならびにSmad3の発現や局在の変化についての解析を行ったところ、点灯条件変化によって精母細胞や精祖細胞における発現や局在の変化がみられ、TGF-βやアクチビンを介した精巣の機能や大きさの調節にSmad2ならびにSmad3が大きく関与していることが示唆された。
著者
加納 聖
出版者
山口大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

哺乳類において多倍体胚は着床後致死となることから、多倍体化により胚発生が停止する哺乳類独自の発生システムの存在が予想される。そこでゲノムの倍数性の変動が哺乳類の胚発生への影響について調べるため、マウス四倍体胚性幹細胞の樹立を試み、その性質を解析した。マウス四倍体胚性幹細胞における幹細胞マーカーの特徴は、マウス二倍体胚性幹細胞とほぼ同等であった。さらに、胚様体およびテラトーマの形成実験より、マウス四倍体胚性幹細胞から三胚葉へ分化誘導がなされ、マウス二倍体胚性幹細胞と同等の分化能を有することが示された。以上、倍数性の変動によりマウス胚性幹細胞の多能性は失われないことが明らかとなった。
著者
山内 啓太郎 加納 聖 添田 知恵 HASEGAWA Telhisa ISHIDA Nobushige MUKOYAMA Harutaka TOJO Hideaki TACHI Chikashi
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
Journal of equine science (ISSN:13403516)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.13-19, 1997-03
参考文献数
15
被引用文献数
2 4

A partial cDNA fragment of equine (Thoroughbred) c-ski gene (exon 1) was cloned by means of the polymerase chain reaction (PCR) amplification, and its nucleotide sequence was determined. The nucleotide and the deduced amino acid sequences of equine c-ski showed very high homology (>90%) with human and mouse c-ski, suggesting that this gene is highly conserved in different species of mammals. Genomic DNAs from other breeds of horse, e.g., Breton, New Zealand Pony, Shire, Anglo-Arab and Tokara Horse, were also subjected to PCR analysis. No difference, however, was observed in the nucleotide sequences of the partial c-ski DNA fragments examined. The patterns of c-ski gene expression in various male fetal equine tissues, i.e., cerebrum, lung, heart, skeletal muscles etc., obtained on day 180 of pregnancy, were analyzed by means of reverse transcriptase-mediated PCR (RT-PCR). In all the tissues examined, the expression of c-ski genes was confirmed. Northern blot analysis was carried out to assess the relative expression levels of c-ski genes in the male fetal equine tissues. In all tissues examined, two forms of the transcripts were detected at molecular sizes of 7.8 kb and 6 kb, respectively. In the cerebellum and the lung, the relative expression levels were high. The expression levels in skeletal muscles were moderate compared to the other tissues. The small population size of satellite cells may explain the relatively low expression levels of c-ski genes in the well developed skeletal muscles.