著者
内田 九州男 松原 弘宣 寺内 浩 山川 廣司 藤田 勝久 加藤 國安
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

[資料収集と現状把握](1)日本国内。2700件余の四国遍路関係資料・文献のデータを収集し、原資料では、納経帳等愛媛県歴史文化博物館蔵の資料、また接待資料や『四国霊験奇応記』、伊予小松藩会所日記等の写真を収集した。(2)海外。中国、チベット、スペイン、イギリスへ出張し、巡礼の現状、旅行・宗教のルート等の調査を実施した。[口頭発表](1)愛媛大学公開講座または愛媛大学法文学部開放講座を3年間で3回(年に1回)実施し、合計22本の講演を行った。(2)平成15年度に「四国遍路と世界の巡礼-その歴史的諸相の解明と東西比較-」(国内シンポジウム)を開き、12本の報告を行った。16年度はフランスから巡礼研究者2名を招き「四国遍路と世界の巡礼-歴史的諸相の解明と東西比較-」(国際シンポジウム)を開いた。このシンポジウムに国内からは11本の報告を用意した。また個人による個別の口頭発表を約20本おこなった。[学会誌その他の発表]遍路・巡礼・旅・いやし等多方面からの研究成果を50編余の論文・小論等にまとめ発表した。[印刷物]研究成果を以下のように刊行した。『四国遍路と世界の巡礼 平成15年度愛媛大学国内シンポジウムプロシーディングズ』(平成16年2月)、『愛媛大学「四国遍路と世界の巡礼」国際シンポジウム』(平成16年10月)、『愛媛大学「四国遍路と世界の巡礼」国際シンポジウムプロシーディングズ』(平成17年3月)。また個人の関係著書は9冊に及んだ。3ヶ年の研究活動を通して、国内の四国遍路や六部研究を初め古代ギリシャや近世イギリスの巡礼等、諸巡礼とその時代環境の解明等の個別研究を大きく前進させたと同時に、その国際比較の基礎を築いたと評価できる。
著者
加藤 國安
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

子規文庫の漢籍や自編漢詩集の調査から、子規が生涯を通して深く漢文と関わり、その豊富な漢詩理解から自作の漢詩が創作され、また近代俳句が醸成されたことが明確となった。また『中等教科漢文読本』を中心に調査した結果、明清の散文を入り口とするという基本的な方針のもとに編集されていることが分かった。それは齋藤拙堂-三島中洲-簡野道明という、江戸後期から明治期へという一連の人脈を通して踏襲されていること。また時代が明治に変わっても、高い学識でもって古今の漢文を厳選し、これにより近代的な国民教育を実践し、すぐれた人材の育成に資せんとする顕著な意図があったこと等を論証した。以上を総合して、明治の社会が観念的な近代西洋文学の直輸入に覆い尽くされたわけではなく、長年にわたり培ってきた豊富な漢文力の土壌の上に、東洋の豊かな人間観や調和的な自然観と親密な関係性を保ちながら、三千年の言語的文化遺産に深く.がっていたこと。そしてそこから生まれてきた東西文化の高度な融合文芸や、国際的な運用にかなう道義・見識の形成に大きく寄与したこと、またそれゆえに文化的様性のもつ資源力のきわめて重要なことについて述べた。