著者
加藤 恒雄
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.431-438, 1989-12-01
被引用文献数
3

粒大,粒数等,シンク関連形質が大きく異なるイネ29品種(Table1)を用いて,受精後の粒重増加・過程とシンク関連形質との関係を観察し,前者の遺伝的変異に後者のどのような形質が関与しているのかを検討した.ここでは,粒重増加過程を直線的粒重増加期における粒重増加速度と,最終粒重を粒重増加速皮で除した粒重増加期間とで表現した. その結果,粒重増加速度は最終粒重および粒大に関する形質との間に強い正の相関を,また粒数に関する形質との間に負の相関を示した(Table2).シンク関連形質内では粒大と粒教との間に負の相関が見られた(Table2).正準相関分析の結果,粒重増加速度は粒数よりも粒大と密接に関係していることが示唆された(Table3)、粒重増加速度は粒大に関わる何らかの要因によって制御されていると考えられる. 粒重増加速度と粒大との強い相関関係から,粒重増加速度は粒大に関する選抜によって間接的に,かつ比較的容易に選抜できることが期待される.また,大粒化によって粒重増加速度が速くなると胚乳組織がその影響をうけ,結果的に腹白米,心白米等が出現することが予想される.従って,粒重増加速度と粒大の相関は,大粒で良質なイネ品種の育成を困難にするが,他方,酒米品種の育成には好都合であると考えられる. 一方,粒重増加期間は粒重増加速度とも,またいずれのシンク関連形質とも有意な相関を示さなかった(Table2).粒重増加期間とシンク関連形質との間に相関がないことは,様々なシンクをもつものの登熟性等を粒重増加期間の調節によって改良しうることを示すと考えられる.さらに粒重増加速度と粒重増加期間は互いに異なる機構によって制御されていることが示唆される.
著者
猪谷 富雄 加藤 恒雄 藤井 光彦 富永 保人
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会中国支部研究集録
巻号頁・発行日
no.25, pp.28-29, 1983-08-08

いわゆるデントライス構想として、超多収で作りやすく、しかも、食用米と識別可能な飼料専用米の育成が叫ばれている。その有望種として1978年現農業研究センターで育成、発表されたBG系統がある。この系統は、従来から知られていた大粒種であるイタリアのセシア、中国の長香稲ならびに日本のたいほうを母本として作出された。BG系統は粉質部の大きい超大粒種であり、荒砕きで自家用飼料として調整できるばかりでなく、食用米と玄米外観だけで明瞭に区別できる。一方、イタリアのアルボリオも各地で試作され、評価されている。演者らは、これら大粒系統の特性と利用面についての研究を行なっているが、今回、施肥量が生育、収量に及ぼす影響について実験を行ない若干の知見が得られたので、その概要を報告する。
著者
加藤 恒雄
出版者
近畿作物・育種研究会
雑誌
作物研究 (ISSN:1882885X)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.33-38, 2010

イネ大粒品種'BG1'の粒長を制御する5個の粒長QTLsを対象とし,量的形質の一モデルとしての粒長に対する個々のQTLの主効果(相加効果)および2QTL間の相互作用(エピスタシス効果),さらに大粒品種'房吉'由来長粒型主働遺伝子<i>Lkf</i>の主効果と上記QTLsとの相互作用を解析した.そのため,同一の遺伝的背景(品種'銀坊主')をもつ合計21種類の準同質遺伝子系統および銀坊主を用いて,2007年と2008年(<i>Lkf</i>に関するNILsは2007年のみ)に圃場栽培して得られた粒長のデータをもとに上記の主効果と相互作用を推定した.その結果,主効果は<i>Lkf</i>が最も大きかったが,QTLs間でも有意な変異がみられ,<i>Lkf</i>に匹敵する主効果を示すQTLも存在した.さらに,主効果の程度に関するQTLs間の順序は年次が異なってもほぼ変わらず,主効果の発現程度は安定しているといえた.一方.2QTL間相互作用はほとんどの場合負の値となり,組み合わせ間で大きく異なった.さらに,相互作用の発現程度は年次間で変動していた.このように,QTL間相互作用は量的形質の発現に重要な役割を果たし,特に形質発現の不安定性の一因になっていると推察された.