- 著者
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勝井 洋
町 貴仁
長面川 友也
- 出版者
- JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
- 雑誌
- 日本理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- vol.2010, pp.CbPI1252-CbPI1252, 2011
【目的】<BR>頚椎深層屈筋群の抑制と頚部痛との関連性が、Boydら(2001)により報告されている。頸椎深層屈筋群の評価は、Jullらによって報告されている頭頚部屈曲テストがあるが、この評価を行うためにはStabilizer(米国Chattanooga社製)というプレッシャーバイオフィードバック器具が必要となる。我々は器具を使用しない頸椎深層屈筋群評価法を開発することを目的に、胸椎の代償を制御しながら頚椎の最大伸展から正中位への屈曲運動を評価する、頚椎伸展―屈曲テストを考案した。我々が行った先行研究(2010:ACPT)では、頚椎伸展―屈曲テストで正中位に戻すことが不可能な健常女性12名に3週間の頚椎深層屈筋トレーニングを行った結果6名が可能となり、頚椎深層屈筋群との関連があると考えた。しかし頸椎運動は頭部重量とそれを支える頚椎により行われる運動であり、頭部重量や頸部長など骨格的な影響を検討する必要があると考えた。作田ら(1990)は頭重負荷指数評価(頭部周径R、頚部周径r、頚部長Lとし公式index=R<SUP>3</SUP>・L/r<SUP>2</SUP>/1000に当てはめる)を開発した。槻本ら(2006)の研究では頭重負荷指数において頭痛あり・なしの群間,また頚部痛あり・なしの群間で有意差を認め身体的特徴が頭痛・頚部痛の原因となりうると示唆している。頭部重量とそれを支える頚椎の関係性を考える上でこの頭重負荷指数は有用であると考えた。そこで本研究の目的は頸椎伸展―屈曲テストの結果と頭重負荷指数との関連を調べ、胸椎代償運動を除いた頚椎運動と頭頚部形態の影響を検討することとした。<BR>【方法】<BR>対象者は頚椎疾患の既往の無い健常女性で、30名(平均年齢32±10歳)であった。頚椎伸展―屈曲テストは、検者による肩甲骨内転強制により胸椎屈曲運動を制限しながら、被験者に頚椎を最大伸展位から屈曲させ正中位に戻せるかを評価した。頭頚部形態測定肢位は座位で頚椎屈曲20度位とした。各形態項目は、頭部周径は眉間の位置、頚部長は大後頭隆起から第7頸椎間、頚部周径は第7頸椎を指標に計測した。測定はすべて同一検者が行なった。頚椎伸展―屈曲テストの結果から可能群・不可能群に分け頭重負荷指数を群間比較した。統計にはt検定を用い、有意水準を危険率5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR>この研究は対象者にヘルシンキ宣言に基づき説明し、文書にて承諾を受けた上で行った。<BR>【結果】<BR>頚椎伸展―屈曲テストの結果、正中位まで屈曲可能だった群(可能群)は17名(平均年齢35±11歳)、不可能だった群(不可能群)は13名(平均年齢27±8歳)であった。頭重負荷指数の平均は可能群1.6±0.3、不可能群1.7±0.3で有意差はみられなかった。<BR>【考察】<BR>今回の結果では頚椎伸展―屈曲テストによる可能・不可能の群間に頭重負荷指数の差はみられず、頭頚部形態の与える影響は無かったと考えられた。計測した形態測定項目のうち頭部周径、頚部長は骨形態であり理学療法アプローチで変化させることは出来ない要素である。これらと頚椎伸展―屈曲テストに関係がみられなかったことで、今後理学療法アプローチ可能な筋力や関節可動域、姿勢アライメント等の関連を中心に検討することが出来ると考えた。頚椎伸展位からの屈曲運動は、頚椎深層屈筋群と胸鎖乳突筋の活動がみられたとFallaらにより報告されている。Vasavada(1998)らは、頸椎伸展につれて胸鎖乳突筋と前斜角筋のモーメントアームは短縮し伸展最終域では正中位に比べ25%以下となり、頭頚部に対する屈曲モーメントは働かないと述べている。今回用いた頚椎伸展―屈曲テストでは、頸椎最大伸展位からの屈曲では頸椎深部屈筋群の作用、軽度伸展位からの屈曲では胸鎖乳突筋と頚椎深層屈筋群の作用が重要となると考えた。今後はさらに頚椎伸展―屈曲テストの頸椎伸展時の動きの評価や、各頸椎屈筋の個別の作用の評価、姿勢アライメントとの関連についても検討したいと考えた。現在健常者において研究を行っているが、健常者においても正中位まで屈曲不可能なケースがあることは興味深く、むちうち損傷等の傷害予防の視点も含め今後臨床応用を検討したいと考えた。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>頸椎のアプローチにおいて重要とされている頸椎深部屈筋群の簡便な評価の開発は臨床において有益と考える。頚椎伸展―屈曲テストを利用し健常者においても差がみられたことは頸椎疾患の予防の為の評価としても利用できる可能性があると考える。