著者
瀬戸 健介
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.25-40, 2023-11-01 (Released:2023-12-02)
参考文献数
125

真菌類の分類,系統の全体像は,分子系統解析の台頭,進展によりここ20年ほどで大きく塗り替えられた.特に,基部系統群として扱われてきたツボカビ門および接合菌門については,複数の門に分割されるなど大きな影響を受けてきた.また,近年ツボカビ門より原始的な系統に位置するオピストスポリディア系統群が認識され,その系統学的研究が急速に進展した.これらの真菌類基部系統群の系統関係を正確に推定することは,真菌類の起源や初期進化を考察する上で重要である.これまで,初期の単領域から数領域の規模の分子系統解析から,近年のゲノムデータを用いた大規模解析まで,真菌類基部系統群の系統関係を明らかにしようとする研究が多数行われてきた.本稿では,広義ツボカビ門およびオピストスポリディア系統群に焦点を当て,それらの分類,系統に関する研究史を解説するとともに,今後の展望について考察した.
著者
勝井 洋 瀬戸 健 町 貴仁 長面川 友也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3O2136, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】頚椎深層屈筋群の抑制と頚部痛との関連性が、Boydら(2001)により報告されている。Jullら(2009)は頚椎深層屈筋群が筋力低下していると、頭部重心が肩関節を通る前額面を越えて伸展せず頭頚部の伸展が優位になると述べている。以前、頚椎伸展制限のある患者において頚椎伸展可動域を改善しても最終伸展位からの頚椎屈曲が不可能な症例を経験した。前述の症例の場合、頚椎屈曲に先立ち肩甲骨外転を伴った代償的な胸椎屈曲運動がみられた。以上の経験から、胸椎の代償を制御した頚椎の運動を評価する為、肩甲骨内転強制により胸椎屈曲運動を制限しながら頚椎を伸展位から屈曲させる頚椎伸展―屈曲テスト(以下本テスト)を考案した。頸部深層筋群では遅筋線維の割合が多いという伊藤ら(2001)の報告を参考に我々が行った先行研究(2009)では、健常女性28名に本テストを行った結果13名が屈曲不可能で、可能な群に比べ頚椎筋持久力として測定した平均頸部正中位保持時間は有意に短かった(p<0.01)。そこで今回は本テスト不可能群に対し頚椎深層屈筋トレーニング(以下トレーニング)を行い、頚椎運動と頚椎筋持久力に対する効果を調べることとした。【方法】対象者は頚椎疾患の既往の無い健常女性で、本テストにて不可能だった13名のうち協力の得られた7名(平均年齢27±4歳)であった。頚部正中位保持時間測定方法は再現性の報告されている木津ら(1995)の方法に従い、ベッド上背臥位で第7頸椎棘突起をベッド辺縁上に位置させ、頭頂・耳介・肩峰が直線上にならぶ位置を頸部正中位とした。トレーニングの運動方法は、Jullらの方法に従い空気圧を利用したプレッシャーバイオフィードバック(TYATTANOOGA社製Stabilizer)を背臥位にて頚椎下に置き,顎を引く運動を行なわせた。運動負荷・量については、Stabilizerのカフ圧を20mmHgから24 mmHgまで上昇させる負荷で10秒を5セットの量とし、頻度は週3回、期間は3週間とした。実際のトレーニングの進行は、まずStabilizerを用いて運動方法・負荷を指導し、その後はタオルを用いて監視下にて行った。統計にはt-検定を用いた。【説明と同意】この研究は対象者にヘルシンキ宣言に基づき説明し、文書にて承諾を受けた上で行った。【結果】対象者7名中4名が3週間のトレーニング後、本テストにおいて可能となった。対象者全員の平均頸部正中位保持時間はトレーニング前が7±4秒、トレーニング後は12±8秒で、平均変化率は208±180%であった。トレーニング後も不可能のままであった3名(不変群)の平均頸部正中位保持時間はトレーニング前が9±4秒、トレーニング後は18±10秒で、平均変化率は272±284%であった。トレーニング後可能となった4名(改善群)の平均頸部正中位保持時間はトレーニング前が6±3秒、トレーニング後は8±2秒で、平均変化率は160±65%であった。年齢・トレーニング前後それぞれの平均頸部正中位保持時間において、不変群と改善群との間で有意差はみられなかった。また全体・不変群・改善群それぞれの平均頸部正中位保持時間において、トレーニング前後の間で有意差はみられなかった。【考察】頚椎伸展位からの屈曲運動は、Fallaらによると頚椎深層屈筋群と胸鎖乳突筋の活動がみられており、頚椎深層屈筋群であり後頭骨と上位頚椎をつなぐ頭長筋や下位頚椎と上位胸椎をつなぐ頚長筋、頚椎表層の屈曲筋である胸鎖乳突筋が関連していると考えられる。今回行ったトレーニングはその中でも頚椎深層屈筋群をトレーニングする運動であった。このトレーニングで頚椎最大伸展位からの屈曲運動に改善がみられたことは、頚椎深層屈筋群の機能不全により頚椎屈曲運動が制限されていたと推察できる。しかし、このトレーニングで変化がみられなかった対象者もいた。頚椎伸展位からの屈曲運動には頚椎深層屈筋群のみでなく表層筋である胸鎖乳突筋や胸椎・肩甲帯アライメントも関係しており、これらの要素に問題があった可能性もある。今後は表層・深層の頚部筋力やアライメント評価を本テスト法に含めることで、より頚椎深層屈筋群の機能不全を評価できるテストとして活用できる可能性がある。また今回のトレーニングでは全体・不変群・改善群ともに平均頚部正中位保持時間に有意な増加はみられなかった。頚椎屈曲筋持久性トレーニングを同頻度・期間で行った我々の先行研究(2009)では、頚椎正中位保持時間に有意な増加がみられており、今回の頚椎深層屈筋トレーニングでは筋持久力改善効果はみられにくいと考えた。【理学療法学研究としての意義】我々の調べた限りでは頚椎伸展位からの屈曲運動へのトレーニング効果についての報告は無く、臨床上重要とされる頚椎深層屈筋群のトレーニングの頚椎運動への効果や、考案した本テストと頚椎深層屈筋機能との関連を探る上で有益と考えた。
著者
沢田 拓士 村松 昌武 瀬戸 健次
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.565-570, 1982-08-25

豚丹毒生菌ワクチンを皮下接種した豚29頭の感染防御能と血清の受身マウス感染防御能の関係を調べた. ワクチン接種前(18例), ワクチン接種後攻撃直前まで(115例)および攻撃後(38例)の血清, 合計171例についての受身マウス感染防御試験の結果, マウス生残率(SRM)と生菌発育凝集抗体価(GA価)の間には正の相関関係(P<0.01)が認められた. ワクチン接種後10あるいは15日目の血清のSRMとワクチン接種2, 3, 4力月後の強毒菌による攻撃に対する豚の感染防御能とには関連性が認められた. このことから, ワクチン接種後早期の豚血清のマウス感染防御能は接種豚の免疫の持続性を示唆すると思われた. ワクチン接種後1力月以内に攻撃された豚は, 攻撃前血清でのSRMが低いか, 多くは陰性であったにもかかわらず, 何ら接種部位における限局性皮膚反応(発疹)を示さなかった. 一方, ワクチン接種後3あるいは4力月目で攻撃された豚の多くは, 攻撃前血清でのSRMが陽性であったにもかかわらず, 種々の強さの発疹を呈した. これらの結果から, ワクチン接種豚血清のマウス感染防御能のみからその免疫状態を推測することは困難であると思われた.