著者
勝部 伸夫
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第86集 株式会社の本質を問う-21世紀の企業像 (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.14-21, 2016 (Released:2017-03-23)

株式会社は資本集中という機能をフルに発揮して巨大化し,今や社会に不可欠な制度となった。では専門経営者に率いられた巨大株式会社は誰のために,どのように動かされるのか。また大企業はどのようにチェックされるのか。これはコーポレート・ガバナンスの問題であるが,それは実際には,経営者資本主義から株主資本主義への転換を推進するものとして登場した。すなわち資本主義の危機が進行する中,グローバリゼーションの進展と新自由主義思想の台頭を背景として,株主利益の最優先が声高に叫ばれ,国もそれを法制度改革等の面からサポートする流れが加速した。しかし,会社は株主のものだ,と言って済ますことはできない。株主の責任,株式会社の責任が問われる事態が進行しており,改めて株式会社とは何であり,その本質はどこにあるかを根本から問い直す必要が出てきていると言えよう。
著者
勝部 伸夫
出版者
専修大学商学研究所
雑誌
専修ビジネス・レビュー (ISSN:18808174)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.23-34, 2019

わが国では高度成長期に労使一体となった経営が行われ,それは欧米とは異なる特質を備えており日本的経営と呼ばれた。一般には,主に雇用,賃金などの人事労務管理の慣行として論じられることが多いが,より広義には企業間関係やガバナンスなども含むものとして特徴づけることができる。日本的経営は80年代に世界的な注目を集めたものの,バブル崩壊以降は経済停滞の元凶であるかのように批判され,企業の現場では成果主義の隆盛,非正規従業員の急増,さらにはガバナンス面などでも大きな変化が見られた。しかし,部分的な修正はあったものの,日本的経営は現在も維持されてきていると見るべきである。日本的経営の柱の一つである長期安定雇用(「終身雇用」)はまがりなりにも守られてきており,従業員の側でもそれを求める声は根強い。グローバリズムの進展で,日本的経営の将来を楽観視することはできないが,その命運は経営者が長期的視点に立ち,人間中心(尊重)の経営をしていくか否かにかかっているように思われる。