著者
狐塚 順子 宇野 彰 北 義子
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.131-137, 2003-04-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

モヤモヤ病術後の脳梗塞により左大脳後部に病巣を認め, 新造語, 錯語を呈した小児失語の1症例について, 呼称における誤反応の継時的変化を検討した.SLTAの呼称においても, 訓練時使用したすずき絵カードの呼称においても, 発症から時間が経つにつれ, 誤反応における新造語と語性錯語, 字性錯語の占める割合が減少した.これらの経過から, 本症例では意味処理過程も音韻処理過程も改善したのではないかと推察された.また小児失語症では新造語や錯語の報告は少なく, 新造語は発症のごく初期に限られ, その特有な経過は頭部外傷に関係するとされているが, 本症例では脳梗塞が原因で, 発症約1年後でも呼称において新造語が出現したことから, 成人失語症例と同様, 脳血管障害であっても新造語は生じ, かつ慢性期においても残存する可能性が考えられた.流暢性失語症である本症例の病巣は左大脳後部病変であったことから, 成人例での損傷部位と流暢性に関する対応関係が, 小児失語症例においても認められるのではないかと思われた.
著者
北 義子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.1-10, 2019

<p>乳児と養育者の関係性発達は出生直後から始まり,養育者によるケアがコミュニケーションのなかで与えられることによって,健全なアタッチメント(愛着)が形成される.近年,その基盤は養育者と情動を共有する間主観的コミュニケーションやコミュニケーション的音楽性にあるとされている.難聴児が自己および他者の情動や意図の認識に目覚め,養育者とのアタッチメント(愛着)を確立することは,機能的な言語発達や望ましい社会性を獲得するために重要である.この視点より,言語聴覚士の一臨床ビデオ映像を分析し,乳児期の難聴児に必要な「養育者と子の間主観的コミュニケーション支援」の一端を示し,その意義について考察した.今後言語聴覚士による間主観的コミュニケーション支援の方法が乳児期の難聴児ケアの視点から確立されることが望まれる.</p>
著者
岡野 由実 廣田 栄子 原島 恒夫 北 義子
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.91-99, 2013 (Released:2013-06-14)
参考文献数
12

成人一側性難聴者4名を対象に, 読話の活用状況と聴取困難場面での対処法と日常生活における聴こえの困難度について面接法と自己評価法により検討した。併せて, 読話検査を用いて有用性を検討し聴力正常者20例の結果と比較した。その結果, 一側性難聴症例では, 聴取困難な状況で読話の活用などの対処が必要であるものの, 対処法の習得には個人差が大きいことが示された。また, 読話能力については聴力正常者と差は少なく, とくに読話低下例では, 日常生活で読話の活用は乏しく, 聴取困難場面に消極的な対処をしており, 会話場面で困難度が高い傾向を示した。そこで, 一側性難聴者に対して, 聴取困難な場面での対処法について評価し, 個別状況に応じて, 指導・助言等のリハビリテーション支援を行う必要性があることを指摘した。