著者
前島 英恵 北原 雅樹
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.184-187, 2020-06-25 (Released:2020-06-30)
参考文献数
6

認知症は慢性疼痛の症状や治療に大きく影響するため,早期に気づき介入することが必要である.痛みの訴えによってペインクリニック外来を訪れる患者のなかには,痛みが実は認知症のために表れている症状の一つに過ぎず,本当の問題は認知症であるということがある.今回,睡眠障害を伴う難治性の背部痛として当科を紹介受診し,軽度のparkinsonismや幻覚,強い抑うつの存在からレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)の診断に至った1症例を経験した.診断後はDLBに対する薬物治療,認知機能に影響を及ぼす可能性のある鎮痛薬の整理のほか,今後予想される生活機能の低下への福祉的対応が必要であった.DLBは多彩な症状(認知機能低下以外に睡眠行動異常やparkinsonism,幻覚など)があるものの,アルツハイマー型認知症(Alzheimer's disease:AD)のように早期から記憶障害が前面に出現せず,疑わなければ気づきにくい.認知症の存在に気づくためには,認知症に関する知識の習得や高齢者に対する積極的な認知機能検査が必要である.