著者
浅井 智久 丹野 義彦
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.247-261, 2010 (Released:2010-11-05)
参考文献数
115
被引用文献数
3 4

Auditory hallucinations (AH), a psychopathological phenomenon where a person hears non-existent voices, commonly occur in schizophrenia. Recent cognitive and neuroscience studies suggest that AH may be the misattribution of one's own inner speech. Self-monitoring through neural feedback mechanisms allows individuals to distinguish between their own and others' actions, including speech. AH maybe the results of an individual's inability to discriminate between their own speech and that of others. The present paper tries to integrate the three theories (behavioral, brain, and model approaches) proposed to explain the self-monitoring hypothesis of AH. In addition, we investigate the lateralization of self-other representation in the brain, as suggested by recent studies, and discuss future research directions.
著者
高野 慶輔 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.15-24, 2010-08-31 (Released:2010-08-18)
参考文献数
46
被引用文献数
3 4 3

自己注目には適応的な「省察」と不適応的な「反芻」があることが知られている。Papageorgiou & Wells (2001a) は,反芻の原因として,「反芻に対する肯定的信念」という概念を提案し,自己注目は問題解決のために有効な手段であるという信念が反芻を促進するとした。本研究では,この信念を測定する尺度Positive Beliefs about Rumination Scaleの日本語版を作成し,信頼性と妥当性を確認した(研究1)。さらに,この肯定的信念と抑うつ,反芻,そして省察との関連を検討した(研究2)。大学生を対象とした質問紙調査の結果,肯定的信念は反芻,省察の双方と正の関連がみられたが,反芻は抑うつと正の関連が,省察は抑うつと負の関連がみられた。自己注目を行う背景として肯定的信念が存在しているが,抑うつに陥るのは反芻を行った場合だけであり,省察を行った場合には適応的に働くことが示唆された。
著者
丹野 義彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.49-57, 2020-05-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
14

国家資格である公認心理師制度が成立し、公認心理師の養成が始まった。公認心理師の養成や国家試験において、認知行動療法やエビデンスベイスト・アプローチが重視されている。日本の公認心理師に認知行動療法を普及させるための課題と方法を議論した。うつ病に対する認知行動療法のメタ分析によると、心理師が実施した認知行動療法は、待機リストや他の心理療法より有意に効果が高かった。日本で行われたうつ病への認知行動療法のメタ分析においても、中程度ないし大きな効果が認められた。公認心理師が行う認知行動療法の一刻も早い保険診療報酬化が望まれる。認知行動療法の養成について良きモデルとなるのは、英国認知行動療法学会によるセラピスト認定基準と、英国政府による心理学的治療アクセス改善政策におけるセラピスト認定基準である。
著者
浅井 智久 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.56-65, 2007-09-20
被引用文献数
4

本研究の目的は,自己主体感の生起メカニズムを考察し,それに対する学習の効果を検討することであった。自己主体感とは,ある行為を自分自身でしている,という感覚のことである。フォワードモデルでは,自己主体感は「実際の結果」が「結果の予想」に合致するときに生起されるとしている。本研究では,キー押しをすると音が鳴る,という仕組みを用いた。その結果,「時間差知覚」と「自己主体感」は同じものではないことが示された。これはフォワードモデルを支持するものであった。また学習の結果,より高い自己主体感を報告するようになったが,時間差知覚には学習の効果はなかった。これは学習によって「実際の結果」ではなく,「結果の予想」が変わったために,その結果として自己主体感が変わったと示唆するものであった。本研究はフォワードモデルによる自己主体感の生起モデルの妥当性と,学習が自己主体感に影響をあたえることを示した。
著者
長谷川 晃 服部 陽介 西村 春輝 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.162-165, 2016-11-01 (Released:2016-09-13)
参考文献数
10
被引用文献数
1

The characteristics of social problem solving and rumination in formerly depressed people were investigated. Based on the results of a self-report measure, the participants were divided into a formerly depressed group that had experienced an episode that met the criteria for major depression (n=14), and a never-depressed group (n=92). The formerly depressed group had higher scores on the Rational Problem-Solving subscale of the Social Problem-Solving Inventory-Revised Short Version and the Brooding and Reflective Pondering subscales of the Ruminative Responses Scale, after controlling for gender and the current depression level. It is possible that these factors increase the vulnerability to depression.
著者
守谷 順 丹野 義彦
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.123-131, 2007-03-31 (Released:2010-10-13)
参考文献数
45
被引用文献数
4 3

本研究では,社会不安に見られる脅威関連刺激に対する選択的注意が,刺激からの注意の解放の欠如によるか検討した。社会不安高群と社会不安低群を選出し,実験を行った。プライム刺激には社会的脅威語,中性語,記号を用い,画面中央に100 ms,または800 ms提示した。その後,ターゲット刺激がプライム刺激の左右の一方に提示されるので,実験参加者にはプライム刺激を注視しながらターゲット刺激の位置弁別をキー押しで判断するよう求めた。結果,社会不安高群は社会不安低群に比べ,社会的脅威語を800 ms提示時に反応時間が遅延した。また,刺激提示時間が800 msでは,社会不安高群は中性語・記号よりも社会的脅威語で反応時間が遅れた。しかし,刺激提示時間が100 msの際は,社会不安高群と低群の間で差はなかった。社会的脅威刺激が800 ms程度長く提示されると,社会不安高群は刺激からの注意の解放が困難であることが明らかになった。
著者
丹野 義彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.157-168, 2001-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
44
被引用文献数
1

日本の臨床心理学は心理療法やカウンセリングの成果について量的なデータを持っていない。これはつクライエントの心理的症状について量的な記述をほとんどおこなわないためである。こうした点を克服するために, 科学者-実践家モデル (Scientist-Practitioner Model) の視点からいくつかの提案をした。第1に, 心理療法の成果について実証にもとつくアプローチを提案した。実証にもとつく臨床心理学の良いモデルとしては, アメリカ心理学会の心理的治療のガイドラインや, 実証にもとつく医学をあげることができる。実証にもとつく臨床心理学は, 臨床心理学とその関連領域が共同研究をおこなうための基本的なフレームワークとして機能しうる。第2に, 分類, 実施手順, テストバッテリの視点から心理アセスメントのスキーマを提案した。心理アセスメントを実施する際には, 受理面接・詳しいアセスメント・事例の定式化・治療仮説の形成・治療効果のポストアセスメントを含むべきである。第3に, 異常心理学を確立させることを提案した。異常心理学は臨床心理学とアカデミックな心理学のインターフェースとして機能する。
著者
丹野 義彦 石垣 琢磨 杉浦 義典
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.379-386, 2000-12-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
15
被引用文献数
6 7

In order to measure thematic tendencies of paranoid ideation in non-clinical samples, Delusional Ideation Checklist (DICL) was developed. A wide range of items indicating themes of delusion were collected. From the results of factor analysis on the data of 308 college students, eight scales were constructed. They were: alienation, belittlement, persecution, other-harming, guardedness, self-conceit, favoredness, and other-manipulation. These scales could be classified in terms of emotion: positive versus negative, and direction: self versus others, and could deal with themes of paranoid ideation in a comprehensive and systematic way. Alpha coefficients of the scales were between .66 and .87, and test-retest reliability between .49 and .71. To examine content validity, ten psychiatrists were asked to rate diagnostic importance for each scale item. Six scales were rated as significantly more important in the diagnosis of paranoid schizophrenia than that of anxiety neurosis. Current data revealed that ordinary students experienced delusional ideation more frequently than psychiatrists would expect.
著者
浅井 智久 高野 慶輔 杉森 絵里子 丹野 義彦
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.414-421, 2009 (Released:2012-03-20)
参考文献数
37
被引用文献数
11 11

A “sense of agency” involves a contemporaneous experience that the “self” causes the actions performed by the “self” (i.e., “I am the one who causes my actions”). This may comprise the main component of self-consciousness. The present research focuses on the development of a questionnaire to investigate the subjective aspects of a sense of agency. We selected items from the extant relevant measures and from previous empirical studies, and conducted four longitudinal surveys with additional scales. Statistical computations confirmed the validity and reliability of the Sense of Agency Scale (SOAS), consisting of seventeen items involving three factors. Furthermore, the results indicated that these three factors might be organized hierarchically, with each factor showing a unique relationship with emotional or social traits. This novel finding, emerging from the Sense of Agency Scale, would have been difficult to obtain via traditional empirical studies.
著者
高野 慶輔 坂本 真士 丹野 義彦
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.12-22, 2012
被引用文献数
6

自己注目は,自己に注意を向けやすい特性とされ,非機能的な側面である自己反芻と機能的側面である自己内省の2種類があることが知られている。こうした自己注目の機能性・非機能性に関する議論の多くは個人内の認知・感情の問題に焦点を当てて行われてきており,社会的・対人的な要因との関連はあまり検討されてこなかった。そこで,本研究では,自己注目の機能的・非機能的側面から,自己受容および自己開示との関連を検討した。大学生122名を対象として質問紙調査を実施し,自己反芻・自己内省の傾向,自己受容感,および不適切な自己開示の傾向を測定した。構造方程式モデリングによる分析の結果,自己反芻は,不適切な自己開示と直接的に関連するほか,低い自己受容感を媒介して,不適切な自己開示と間接的に関連していた。一方で,自己内省は,高い自己受容感を媒介して適切な自己開示と関連していることが示された。以上の結果から,自己反芻と自己内省は自己・対人プロセスの中で異なった役割を果たしており,心理的適応に影響を及ぼしていると考えられる。
著者
飯島 雄大 佐々 木淳 坂東 奈緒子 浅井 智久 毛利 伊吹 丹野 義彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.29-41, 2010-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究は、統合失調型を包括的に測定する質問紙であるSchizotypalPersonalityQuestionnaire(SPQ)の日本語版を作成し、統合失調型パーソナリティの多元性を検討することが目的である。大学生558人を対象に、日本語に翻訳したSPQを施行した。各因子の内的整合性(α=.63〜.86)、および再検査信頼性(r=.76〜.86)は高かった。また、既存の統合失調型人格尺度と高い相関を示したため、収束的妥当性が確認された。そして、確認的因子分析および非階層的クラスター分析(k平均法)を行った。確認的因子分析で7つの仮説モデルを比較したところ、解体3因子モデルは最も当てはまりがよかった。クラスター分析では対象を、すべての得点が高い「高得点クラスター」、「認知・知覚」「解体」因子の得点が高い「認知・知覚クラスター」、「対人」「解体」因子の得点が高い「対人クラスター」、すべての得点が低い「低得点クラスター」の4つに分類した。確認的因子分析により、SPQの3因子構造が示された。因子構造の類似が必ずしも統合失調型パーソナリティと統合失調症の連続性を示唆するものではないが、統合失調型パーソナリティの3因子構造は、統合失調症の症状を理解するのに役立っと考えられる。
著者
高野 慶輔 坂本 真士 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.12-22, 2012-07-31 (Released:2012-09-07)
参考文献数
43
被引用文献数
6 6 2

自己注目は,自己に注意を向けやすい特性とされ,非機能的な側面である自己反芻と機能的側面である自己内省の2種類があることが知られている。こうした自己注目の機能性・非機能性に関する議論の多くは個人内の認知・感情の問題に焦点を当てて行われてきており,社会的・対人的な要因との関連はあまり検討されてこなかった。そこで,本研究では,自己注目の機能的・非機能的側面から,自己受容および自己開示との関連を検討した。大学生122名を対象として質問紙調査を実施し,自己反芻・自己内省の傾向,自己受容感,および不適切な自己開示の傾向を測定した。構造方程式モデリングによる分析の結果,自己反芻は,不適切な自己開示と直接的に関連するほか,低い自己受容感を媒介して,不適切な自己開示と間接的に関連していた。一方で,自己内省は,高い自己受容感を媒介して適切な自己開示と関連していることが示された。以上の結果から,自己反芻と自己内省は自己・対人プロセスの中で異なった役割を果たしており,心理的適応に影響を及ぼしていると考えられる。
著者
丹野 義彦 浅井 智久
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.43-46, 2010-09-30 (Released:2016-12-01)

With the development of Cognitive Behavioral Therapies and Evidence-Based Practice, the American Psychological Association and the British Psychological Society are large umbrella organization under which clinical psychologists cooperated with the researchers of psychonomic science. The benefits of cooperation between clinical psychology and psychonomic science in Japan are discussed, taking an example of the study of schizotypal personality traits (schizotypy). A perspective that situates schizophrenia on a continuum implies that a cognitive psychological approach to the schizotypal personality in the general population could be useful to understand schizophrenia. The establishment of abnormal psychology in Japan is proposed, which will interface clinical psychology practice with academic psychology.
著者
高野 慶輔 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.259-261, 2008-01-01 (Released:2008-03-30)
参考文献数
7
被引用文献数
17 24

The purpose of the present study was to develop a Japanese version of Rumination-Reflection Questionnaire (RRQ) and examine its reliability and validity. Previous studies suggested that RRQ had two subscales: rumination and reflection. Rumination was dispositional self-attentiveness evoked by negative events, and reflection was dispositional self-attentiveness motivated by intellectual interests. Data from 241 undergraduates were analyzed, and factor analysis showed two factors, corresponding to the previous findings. Both subscales showed sufficient internal consistency and concurrent validity with clinical and personality scales. These findings provided support for reliability and validity of Japanese-version RRQ.
著者
守谷 順 佐々木 淳 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.171-182, 2007
被引用文献数
3

本研究は,対人不安の維持要因として考えられている判断・解釈バイアスと自己注目との関連についての検討を行った。研究1では被調査者の大学生194名から対人不安高群53名,対人不安低群48名を対象に質問紙調査を行い,対人・非対人状況での判断バイアスと自己注目との関連について検討した。その結果,対人場面かつ自己注目時でのみ対人不安高群は対人不安低群に比べて否定的な判断バイアスが働くことを示した。研究2では,研究1と同様の被調査者を対象に肯定的とも否定的とも考えられる曖昧な対人・非対人状況での解釈バイアスについて質問紙調査を行った結果,判断バイアス同様,対人場面かつ自己注目時でのみ対人不安高群に顕著な否定的解釈バイアスが認められた。以上のことから,否定的な判断・解釈バイアスが対人不安高群に働くときは,対人場面であり,かつ自己注目状況であることが明らかにされた。
著者
高野 慶輔 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.259-261, 2008-01-31
被引用文献数
24

The purpose of the present study was to develop a Japanese version of Rumination-Reflection Questionnaire (RRQ) and examine its reliability and validity. Previous studies suggested that RRQ had two subscales: rumination and reflection. Rumination was dispositional self-attentiveness evoked by negative events, and reflection was dispositional self-attentiveness motivated by intellectual interests. Data from 241 undergraduates were analyzed, and factor analysis showed two factors, corresponding to the previous findings. Both subscales showed sufficient internal consistency and concurrent validity with clinical and personality scales. These findings provided support for reliability and validity of Japanese-version RRQ.