著者
秦 利之 秦 幸吉 村尾 文規 北尾 学
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.678-684, 1986

胎児心エコー図、胎児心電図、超音波パルスドップラー法を用い、先天性心疾患及び胎児不整脈の出生前診断を行い、その周産期管理及び予後について検討した。昭和55年4月より昭和60年3月までに、出生前診断が可能であつた症例は、上室性期外収縮(Premature atrial contraction;PAC)5例、PAC及びblockedPAC2例、PAC及び心室性期外収縮(Premature ventricular Contraction ; PVC)1例、PAC、blocked PAC及びPV01例洞性徐脈1例、完全房室ブ弓ツク1例、PAC及びPVCを伴つた心房中隔欠損1例、PAC及びPVCを伴つた胎児水腎症1例、大腸拡張症を伴つた複雑心奇形1例、食道閉鎖・鎖肛を伴つた単心房・単心室1例、単一膀帯動脈及びehcephaloceleを伴つた複雑心奇形1例、糖尿病妊婦に於けるAsymmetrical septalhypertrophy 1例であつた。15例の胎児不整脈のうち9例が生後1ヵ月以内に自然消失した。生後1ヵ月以上持続した胎児不整脈は、洞性徐脈、完全房室ブロック、PAC及びPVCを伴つた心房中隔欠損の3例であつた。完全房室ブロックの1例は、生後48日目にpacemakerを植え込み、順調に発育している。胎児不整脈の3例に於いてCoenzyme Q10による胎内治療を試み、抗不整脈作用を認めた。19例中、複雑心奇形を伴つた3例が生後死亡した。以上のように、胎児心奇形及び不整脈の出生前診断に、胎児心エコー図、胎児心電図、超音波パルスドップラー法を用いることによりその診断能力が向上し∫周産期管理を容易に行い得ることが示された。