著者
永田 郁子 上國 愛 岡本 淳子 井町 海太 䑓丸 裕 中西 慶喜 大下 孝史 藤本 英夫
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.39-45, 2016

<b>背景</b> : 腹腔内原発二相型滑膜肉腫の腹腔内洗浄水と腫瘍捺印の細胞像を報告する. <br><b>症例</b> : 50 歳代, 女性. 約 15 cm 大の腹腔内腫瘍に対し, 腹腔内洗浄細胞診と腫瘍捺印細胞診が行われた. 腹腔内洗浄水では, 孤立性の紡錘形異型細胞が少数と小集団の上皮様異型細胞が, 腫瘍捺印では, 細胞密度の高い紡錘形異型細胞集塊と小集団や孤立性の上皮様異型細胞が認められた. 紡錘形異型細胞は, 葉巻状核や核のくびれ, 核内細胞質封入体が, 上皮様異型細胞は類円形で, N/C 比大, 核圧排像, 相互封入像がみられた. 病理組織学的には, 束状配列の紡錘形細胞成分と, 胞巣状の上皮様細胞成分が認められ, EMA, AE1/AE3, CK7, vimentin, calretinin に陽性であった. また, RT-PCR で SYT-SSX1 transcript が証明され, 腹腔内原発二相型滑膜肉腫と診断された. <br><b>結論</b> : 二相型滑膜肉腫の細胞診断には, 紡錘形異型細胞と上皮様異型細胞の腫瘍細胞の出現が手掛かりになると思われ, また, 診断には融合遺伝子の証明が有用である.
著者
万代 光一 森脇 昭介 土井原 博義 中西 慶喜 元井 信 池尻 公二
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.711-716, 1990-07-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
22

各種臓器に発生するblastomaの形態学的共通点あるいは組織発生を明らかにするために, 腎芽腫2例, 肝芽腫1例, 肺芽腫1例および成人の卵巣中胚葉混合腫瘍2例と肝芽腫様の変化を伴つた肝細胞癌の1例を対象とし, 形態学的観察を行うとともに, 上皮系および間葉系組織マーカーについて免疫組織化学的検討を行つた.腎芽腫と肝芽腫は小児例であり, 肺芽腫と中胚葉混合腫瘍は, 成人に発生した. 肺芽腫と中胚葉混合腫瘍は, 形態学的および免疫組織化学的に類似し, 肺芽腫は未分化間葉細胞起源であることが示唆された. 腎芽腫のblastema様細胞にはS-100免疫活性が証明された. また, 部分的に肝芽腫様に組織形態が変化した成人肝細胞癌の1例が経験された.