著者
砂川 智佳 後藤 縁 小川 健一朗 北川 喜己
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.946-950, 2022-12-28 (Released:2022-12-28)
参考文献数
11

水タバコは,燃やしたタバコの煙を水にくぐらせ濾過された煙を吸う喫煙方法である。タバコの加熱時に発生する一酸化炭素(CO)を吸入することで急性CO中毒を生じるリスクがあるが,わが国での報告は限られている。症例は25歳,女性。シーシャバーで水タバコを3時間喫煙した後,意識障害を生じ救急搬送された。意識レベルはGlasgow Coma Scale(GCS)E1V1M4。静脈血ガス検査でCOHb 30.7%と高値であり,急性CO中毒と診断した。 高濃度酸素を投与し,COHbは2時間後に14.5%,8時間後に0%まで低下。意識レベルは4時間後にGCS E4V5M6まで改善した。遅発性脳症のリスクを考慮し,高気圧酸素療法が可能な施設へ転院とした。5カ月後の時点で後遺症はみられていない。わが国でも水タバコを提供する店舗が増加しており,救急医療にかかわる者は,水タバコによるCO中毒の危険性を認識し啓発に努める必要がある。
著者
岩田 充永 梅垣 宏行 葛谷 雅文 北川 喜己
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.330-334, 2008 (Released:2008-07-14)
参考文献数
5
被引用文献数
4 3

目的:夏季の高温多湿が進む日本では,熱中症が増加することが予想されるが,高齢者の熱中症については十分な検討がなされていない.高齢者熱中症の特徴を明らかにするために,65歳以上高齢者で入院となった熱中症例について検討した.方法:2006年の7∼9月とおよび2007年の7∼9月に名古屋掖済会病院救命救急センターを熱中症で受診し,入院となった65歳以上高齢者を対象に,発症日の気候,同居家族,発症環境,空調設備の有無や利用状況,基本的ADL,かかりつけ医の有無,認知症の有無,介護サービスの利用状況,重症度,入院期間,転帰について調査した.結果:研究期間中の熱中症受診104例中31例(31%)が入院となり,そのうち65歳以上高齢者は25例中20例(80%)で,若年者79例中11例(13.9%)に比較して有意に入院率が高かった(p<0.001).平均入院期間は20.6±17.8日で,65歳以上入院群27.5±18.6日,65歳未満入院群5.3±3.0日と高齢者群の入院期間は有意に長期となった(P<0.001).自宅内発症の熱中症は16例で,全例65歳以上で入院を必要とし,65歳以上高齢者の入院熱中症症例(20例)の80%を占めた.自宅内発症例の多くは,最高WBGT 28°C以上(14例),空調設備を有していない(11例),ADL自立(10例),認知症(12例),介護サービス未利用(11例),独居もしくは配偶者と2人暮らし(14例)などの特徴を認めた.入院症例のうち12例(60%)が自宅に退院できなかった.結論:高齢者は通常の自宅生活でも熱中症を発症する危険があり,WBGT28°C以上の日は特に危険が高い.高齢者の熱中症を予防するためには,(1)ADLが比較的保たれ介護サービスを受けない高齢者や独居もしくは配偶者と2人暮らしの高齢者に対する見守り体制の構築,(2)住居における空調設備の設置援助と適正利用への啓発と見守り体制の構築の2点が重要である.
著者
金原 佑樹 山田 秀則 北川 喜己 市川 敦子 長瀬 亜岐 筧 裕香子
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.675-679, 2014-10-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
9

精神科病床のない救命救急センターである当院において,精神科病院から紹介・救急搬送された身体合併症患者の診療改善点を見つける目的で,当院の現状と傾向を調査・検討した。2007年6月1日〜2012年5月31日の5年間における,近隣10施設の精神科病院から救急搬送され入院となった患者全303症例に対して診療録から後ろ向きに観察し,精神科基礎疾患,診断名,疾患分類,転帰,在院日数について調査・検討した。結果,統合失調症患者の身体合併症には肺炎,骨盤・下肢骨折,イレウス,低Na血症の頻度が高い特徴があり,また精神科疾患を基礎に持ち身体疾患を合併した患者の入院加療は,病棟運用に影響を及ぼすことがわかった。身体合併症の重症化を未然に防ぐ取り組みと,精神科病院との連携によるスムーズな診療,精神疾患に対する正しい知識と的確な看護における負担感の把握が,今後の病棟運用改善の重要課題である。