著者
北村 綾子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101901, 2013

【はじめに、目的】訪問リハビリテーションは、現行制度においてその実施機関が、診療所や老人保健施設で実施されるリハビリテーションと、訪問看護ステーションのセラピストが行うリハビリテーションがある。いずれも理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職種が疾患や障がいを抱える利用者の自宅へ訪問し、リハビリテーションサービスを提供するが、介護保険制度上、前者は「訪問リハビリテーション」に、後者は「訪問看護」に位置づけられている。平成22 年の介護給付費実態調査では、訪問看護ステーションからのセラピストによる訪問リハビリテーションの比率は訪問リハビリテーション全体の3 割と報告されているが、大阪府においては5 割近くを占めており、その役割は大きい。今回、訪問看護ステーションから行われるリハビリテーションの利用者特性を把握するため、当事業所の利用者の属性について年齢区分に調査・分析したので報告する。【方法】対象は、平成24 年10 月度、当事業所のセラピストによるリハビリテーション(以下リハビリ)を受けた利用者70名である。方法はカルテからの遡及的分析で、調査期間は平成24 年10 月1 日〜31 日とした。調査内容は、疾患、ADL、利用保険、医療機器の使用状況、看護師介入の有無、認知症の状況、生活活動状況などで、ADLはBarthel Index(以下BI)、認知症状況は認知症老人の日常生活自立度(以下、自立度)、生活活動状況には障がい老人の日常生活自立度(以下、寝たきり度)を使用した。対象者を75 歳未満と75 歳以上に分類し分析を行った。統計処理はPearsonのχ2 検定を用い有意水準は5%未満とし、統計ソフトはSPSS11.OJを使用した。【倫理的配慮、説明と同意】事業所の倫理規定に基づき、個人が特定されないよう個人情報の保護に配慮し実施した。【結果】対象者の年齢の平均は72.4 歳(18 〜100)で男性22 名31.4%、女性48 名68.6%であった。対象者全体の年齢区分は75 歳以上が38 名54.3%、75 歳未満32 名45.7%であった。利用保険は、75 歳以上で介護保険が35 名92.1%、75 歳未満では17 名53.1%が医療保険利用であり、75 歳未満で医療保険利用の割合が有意に高かった(p<0.05)。疾患は、75 歳未満で神経難病などが14 名43.8%、75 歳以上は3 名7.8%で75 歳未満に神経難病などが有意に多かった(p<0.05)。在宅酸素やPEGなどの医療機器は75 歳未満が14 名43.8%の利用者が使用し、75 歳以上では6 名15.8%で75 歳未満の使用が有意に高かった(p<0.05)。看護師介入は75 歳未満19 名59.4%、75 歳以上が15 名39.5%であった。寝たきり度は75 歳未満のランクJ10 名31.2%、A6 名18.8%、B4 名12.5%、C12 名37.8%、75 歳以上はランクJ5 名13.1%、A18 名47.4%、B8 名21.1%、C7 名18.4%であった。自立度は75 歳未満が、ランクIが17 名53.1%、II6 名18.8%、III1 名3.1%、IV以上8 名25%、75 歳以上はランクI17 名44.7%、II12 名31.5%、III2 名5.3%、IV以上9 名23.8%であった。BIの合計点の平均は75 歳未満が45.6 点で75 歳以上は61.2 点であった。【考察】本研究では、訪問看護ステーションのセラピストにおけるリハビリ対象者の属性を、75 歳以上、75 歳未満の年齢区分により行った。75 歳未満の特性としては、75 歳以上と比較し、医療保険利用が多く、医療機器使用者が多く、寝たきり度が高い。疾患分類では、神経難病や先天性疾患が4 割を占めており、神経難病の利用者の多さが関連すると考えられた。75 歳未満にこれら利用者が多く集まる理由としては、訪問看護のリハビリと病院・診療所などの訪問リハビリでは、活用できる公費制度が異なり、特に特定疾患については、訪問看護ステーションは利用者負担が全額公費負担となり利用しやすいためと考えられる。次に後期高齢者の特性としては、生活の活動性と認知症症状は、概ね屋内生活が自立し日常活に支障はなく、看護師介入の必要性が低い等であり、ADL維持と認知症症状、生活圏狭小化の予防を目的とした利用者であると考えられた。以上から75 歳以上と未満との対象者は明らかに異なるものといえ、75 歳未満の利用者には医療機器や重度利用者対応への知識と技術、後期高齢者においては、認知症予防への取りくみ、老年症候群の知識と評価能力がセラピストに求められると考えられた。【理学療法学研究としての意義】訪問看護ステーションによるリハビ対象者の年齢区分による属性分析により75 歳未満、75 歳以上の特性を明らかにし、対象者を把握することで、訪問看護ステーションの役割・機能を踏まえたリハビリテーション活動を行うための資料とすることができる。