著者
岩田 晃 淵岡 聡 木村 大輔 樋口 由美 灰方 淑恵 上 勝也 増原 光彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.213-216, 2010 (Released:2010-05-27)
参考文献数
15
被引用文献数
2

〔目的〕二関節筋に対するストレッチングにおいて,肢位を変化させることによって,伸張部位が変化するかを検討した。〔対象〕若年健常男性7名とした。〔方法〕全ての被験者に1)SLR,2)HFKEの二つのストレッチングを行った。超音波を用いて半腱様筋の近位部と遠位部の二部位について構造学的評価を行い,ストレッチング方法による差を検討した。〔結果〕近位部では筋長に対する腱画,坐骨結節間距離の割合がSLRよりもHFKEの方が大きくなり,遠位部では羽状角がHFKEよりもSLRの方が小さくなり,筋厚に差は認められなかった。〔結語〕近位部はHFKEの方が,遠位部はSLRの方が伸張されることが明らかとなり,伸張部位を関節角度によって変化させることが可能であることが明らかになった。
著者
小栢 進也 樋口 由美 青木 紫方吏 松島 礼佳 岩田 晃 淵岡 聡
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0285, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】膝関節の滑膜に囲まれた空隙には滑液が貯留されており,関節運動の円滑性に寄与するとされる。関節内圧の変化によって滑液の貯留量は一定に保たれているが,炎症などによって滑液が過剰に産生されると関節浮腫を形成する。関節浮腫は大腿四頭筋の活動抑制や膝関節痛を生じるとされており,高齢者の身体活動に重要な膝伸展筋力の低下につながる。一方,高齢者の身体機能低下の予防には筋力トレーニングが実施され,筋力増強,動作能力向上など多くの効果が報告されているが,関節浮腫にどのような影響を与えるかに関しては十分な知見が得られていない。関節内圧は筋収縮によって上昇するため,筋力トレーニングは滑液循環に影響を与えることが予想される。さらに近年は筋力トレーニングによって炎症が抑制されるとの報告もあり,トレーニングにより関節浮腫を予防できる可能性がある。滑液量が過剰になると膝蓋上嚢の肥厚が認められることから,本実験では高齢者を対象として膝伸展筋力トレーニングを実施し,膝蓋上嚢の厚さがどのように変化するかを調べた。【方法】日常生活が自立している60歳以上の地域在住高齢者122名を対象とし,関節浮腫のスクリーニング検査を行った。ベッド上背臥位で膝30°屈曲位とし,膝蓋骨上縁に大腿骨長軸と水平になるよう超音波診断装置(Logiq Book XP)のプローブを当て,膝蓋骨上縁を撮像した。スクリーニング検査で膝蓋上嚢に1mm以上の肥厚が認められた方を対象として,実験の参加者を募った。ただし,膝窩部の浮腫であるバーカーズシストが確認された被験者は研究対象から除外した。研究参加に同意が得られた被験者を無作為にトレーニング群とコントロール群に分類した。トレーニングはセラバンドを用いた膝伸展抵抗運動10回3セットを自宅で実施することとし,週4回2か月間実施した。なお,高負荷トレーニングが実施できるよう初回に強度を指導した。介入前後に超音波を用い膝蓋骨上方の内側,中央,外側を撮像して,関節上嚢の厚さを計測した。身体機能検査は膝伸展筋力,歩行速度を計測した。統計解析にはSPSSを用い,トレーニング前の群間比較にt検定およびカイ二乗検定,トレーニング効果の検証に介入前のデータを共変量とした共分散分析を用いた。有意水準は5%とした。【結果】スクリーニングテストより対象となった73名のうち,45名に研究参加の同意が得られ,トレーニング群23名,コントロール群22名に割り付けた。トレーニング群1名,コントロール群2名は介入後の測定が困難であった。また,コントロール群の2名にバーカーズシストが確認されたため,最終的にトレーニング群22名(男性10名,女性12名,年齢74.0±6.8歳),コントロール群18名(男性6名,女性12名,74.1±5.8歳)が解析対象となった。介入前はすべての項目で有意差を認めなかった。膝蓋上嚢の厚さは内側部と外側部で交互作用を認め,トレーニング群で減少した(内側部:トレーニング群 介入前3.5±1.7mm介入後2.8±1.5mm,コントロール群 介入前4.1±1.5mm介入後4.2±1.4mm,外側部:トレーニング群 介入前4.0±2.3mm介入後3.4±1.7mm,コントロール群 介入前4.5±1.8mm介入後4.7±1.8mm)。膝伸展筋力にも交互作用が認められ,トレーニング群で筋力が向上した。その他の項目に有意差を認めなかった。【考察】トレーニング群では介入後に膝蓋上嚢の厚みが減少した。これは膝蓋上嚢に貯留している滑液が減少したためと考える。膝関節の滑液は膝蓋上嚢と膝窩部に貯留しやすいと言われているが,今回の研究では膝窩部の浮腫であるバーカーズシストが確認された被験者は除外している。よって,関節上嚢の厚み減少は膝関節全体の関節液貯留量減少による可能性が高いと考える。【理学療法学研究としての意義】膝伸展筋力トレーニングは筋力増強効果だけでなく,膝関節の滑液貯留量を減少させる可能性がある。本研究では筋力トレーニングの新たな効果が示された。
著者
広田 千賀 渡辺 美鈴 谷本 芳美 河野 令 樋口 由美 河野 公一
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.647-654, 2008 (Released:2009-01-29)
参考文献数
25
被引用文献数
6 21

目的:Trail Making Test(以下TMT)は,欧米において遂行機能の指標として研究されてきた.しかし,日本においてTMTに関する研究は少ない.本研究では地域在住高齢者の健康づくり支援を目指して,TMTの特徴と身体機能との関連を明らかにし,TMTの有用性について検討することを目的とした.方法:大都市近郊T市に在住している65歳以上の高齢者175人(男57人,女118人)を対象とした.TMTと8項目の身体機能を測定した.身体機能は介護予防項目として通常歩行,Timed Up & Go test(以下TUG),開眼片足立ち,握力の4項目,移動·歩行機能項目として最大歩行,課題付加TUG,階段昇降,障害物歩行の4項目である.TMTの評価には⊿TMTを用い,身体機能との関連は性と年齢を共変量とした多項ロジスティック回帰分析を行った.結果:⊿TMTの中央値は男性58.61秒,女性65.67秒で,男女とも年齢群間に有意な差を認め,特に80歳以上が高値であった.性差は観察されなかった.身体計測項目と⊿TMTとの関連について,⊿TMTの不良なものはTUGと握力の成績が有意に低かった.移動·歩行機能項目では,⊿TMTの不良なものは,最大歩行,課題付加TUG,階段昇降,障害物歩行の成績が有意に低かった.また,最大歩行の「中間/高い」比較でも,⊿TMTの不良なものは有意に成績が低かった.結論:TMTはより認知の必要な複雑な歩行機能と関連したことから,高齢期の健康づくりにおける遂行機能の評価指標としての有用性が示唆される.
著者
浅川 康吉 市橋 則明 羽崎 完 池添 冬芽 樋口 由美
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.75-79, 2000
参考文献数
14
被引用文献数
5

踏み台昇降訓練における踏み台の位置や高さの設定が,立脚側の股関節周囲筋の筋活動量に与える影響について筋電図学的検討を行った。対象は健常男性13名(25.9 ± 3.8歳)で,股関節周囲筋として大殿筋,中殿筋,内転筋,大腿筋膜張筋,および大腿直筋を選択した。踏み台昇降動作は,前方,後方,側方の踏み台の位置と,10cm,20cm,30cmの高さを組み合わせた計9通りで行った。統計学的分析には二要因とも対応のある二元配置分散分析を用いた。その結果,踏み台の位置は中殿筋,大腿筋膜張筋の筋活動に影響し,踏み台の高さは大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋の筋活動に影響していた。内転筋と大腿直筋には交互作用が認められた。股関節周囲筋では,踏み台昇降訓練における踏み台の位置や高さの影響が各筋ごとにそれぞれ異なると考えられた。
著者
上月 渉 村上 達典 上田 哲也 樋口 由美
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.206-211, 2023 (Released:2023-06-15)
参考文献数
17

〔目的〕入院中の患者家族の身体的な介助に対する自己効力感(介助効力感)を評価し,自宅退院との関連性を検討した.〔対象と方法〕対象は回復期病棟入院中の患者とその同居家族とし,入院時・退院時に家族の介助効力感や健康関連QOL,患者のFunctional Independence Measure(FIM)を評価した.転帰先によって自宅群(n=32)と施設群(n=7)に群分けし,2群間の比較から自宅退院の関連要因を検討した.〔結果〕家族の介助効力感,患者の年齢とFIMにおいて2群間に有意差を認めた.相関分析の結果,退院時の介助効力感は他の関連要因との関連性を認めなかった.〔結語〕自宅退院には家族の介助効力感が関連する可能性が示唆された.
著者
浅川 康吉 市橋 則明 羽崎 完 池添 冬芽 樋口 由美
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.75-79, 2000-05-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
14
被引用文献数
5

踏み台昇降訓練における踏み台の位置や高さの設定が,立脚側の股関節周囲筋の筋活動量に与える影響について筋電図学的検討を行った。対象は健常男性13名(25.9 ± 3.8歳)で,股関節周囲筋として大殿筋,中殿筋,内転筋,大腿筋膜張筋,および大腿直筋を選択した。踏み台昇降動作は,前方,後方,側方の踏み台の位置と,10cm,20cm,30cmの高さを組み合わせた計9通りで行った。統計学的分析には二要因とも対応のある二元配置分散分析を用いた。その結果,踏み台の位置は中殿筋,大腿筋膜張筋の筋活動に影響し,踏み台の高さは大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋の筋活動に影響していた。内転筋と大腿直筋には交互作用が認められた。股関節周囲筋では,踏み台昇降訓練における踏み台の位置や高さの影響が各筋ごとにそれぞれ異なると考えられた。
著者
平島 賢一 樋口 由美 柳澤 幸夫 鶯 春夫 澁谷 光敬
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.59-66, 2022-01-15 (Released:2022-01-28)
参考文献数
34

目的 近年,高齢ドライバーの免許証自主返納者は増加しているが,自動車は地方都市における住民の主な移動手段としての役割を担っており,免許証返納後の身体機能や生活に対する影響は大きいと考える。そこで本研究では,徳島県内の高齢ドライバーを対象に,免許証自主返納が活動性低下を招き,運動機能および認知・精神機能の低下を惹起するという仮説を予備的検証することとした。方法 対象者は,免許証の返納日まで日常的に週2回以上の運転を継続していた高齢者17人(平均年齢80.2歳,返納群)と,運転を継続している高齢者23人(76.9歳,運転継続群)とした。調査測定はベースラインと3か月後に実施し,活動性の評価は活動量計による3か月間の実測とLife Space Assessment(LSA)を用いた。運動機能と認知・精神機能の評価は,握力,Timed Up and Go testおよびMini-Mental State Examination(MMSE),Geriatric Depression Scale(GDS)を用いた。返納群には免許証返納に関するアンケート調査も実施した。統計解析は評価時期と2群に対して二元配置分散分析を実施した。結果 活動性の指標としたLSAの合計得点は有意な交互作用(P<0.01)を認め,返納群では3か月後に有意に低下した。一方,活動量計による歩数は有意な変化を示さなかった。運動機能および認知・精神機能のいずれの指標にも有意な交互作用を認めなかったが,MMSEとGDSで群の有意な主効果を認め,返納群が運転継続群に比して不良な成績であった。結論 徳島県在住の高齢ドライバーにおける免許証返納3か月後の変化は,日常生活における行動範囲の狭小化を認めた。運動機能および認知・精神機能の低下は観察されなかった。免許証を返納した高齢者は,自動車に代わる移動手段の速やかな確保が必要であると思われた。
著者
辻野 綾子 米田 稔彦 田中 則子 樋口 由美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.96, 2003 (Released:2004-03-19)

【目的】脳卒中片麻痺患者の治療として、端坐位での側方リーチ動作を用いることがあるが、足底接地の条件の違いが運動特性にどのような影響を及ぼすかは明らかでない。本研究の目的は、足底接地の条件の違いによる端坐位における体幹のバランス機能について運動学的・筋電図学的に検討することである。【方法】対象は、健常女性12名(平均年齢20.6±1.9歳、身長158.8±2.4cm、体重51.8±5.0kgであり、全員右利きであった。運動課題は、大腿長55%が支持面となるように腰掛け、膝関節95度屈曲位に設定した背もたれなしの端坐位での肩関節外転90°位で上肢長130%の位置への右側方リーチ動作とした。条件は、(1)足底接地・閉脚位、(2)足底接地・開脚位、(3)足底非接地の3つにした。圧中心(以下COP)の位置を重心動揺計を用いて計測した。頭頂、第7頚椎、第12胸椎、第4腰椎、そして両側の耳介、腸骨稜、後上腸骨棘にランドマークを取りつけ、後方からのデジタルカメラによる画像から骨盤傾斜角度、体幹傾斜角度、立ち直り角度(左屈)を計測した。両側の脊柱起立筋(腰部L4、以下ES)、外腹斜筋 (以下OE)、中殿筋(以下GM)を被験筋とし、安静坐位と側方へのリーチ保持時の積分筋活動量を測定し、最大等尺性収縮時の値で標準化した。3条件間での測定値の比較には、対応のある一元配置分散分析を用い、有意水準を5%未満とした。【結果】1) COP移動距離:条件(1)や(3)より(2)が有意に大きく、(1)が(3)より大きかった。2)Kinematics:骨盤傾斜角度は、条件(1)、(2)、(3)の順に有意に増大した。体幹傾斜角度は、条件(1)や(2)より(3)が有意に大きかった。立ち直り角度は、条件(3)より(2)が有意に大きかった。3)各筋の%IEMG:右GMは、条件(2)が(3)より有意に大きかった。左GMは、条件(3)が(1)より有意に大きかった。左OEは、条件(3)が(1)や(2)より有意に大きかった。右ES、右OE、左ESにおいては、3条件間に有意差はみられず、右側の筋活動は左側に比べ小さなものであった。【考察・まとめ】条件(2)はCOP移動距離が最も大きく、条件(3)はCOP移動距離が最も小さいが左のGM、OEの大きな筋活動を要求した。それにより、開脚位で足底接地した端坐位でのリーチ動作はCOPの移動を行いやすい傾向にあり、足底非接地の端坐位でのリーチ動作はリーチ側とは対側の大きな体幹筋活動を要求するといった特徴があることが示唆された。
著者
平島 賢一 樋口 由美 柳澤 幸夫 鶯 春夫 澁谷 光敬
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-030, (Released:2021-11-10)
参考文献数
34

目的 近年,高齢ドライバーの免許証自主返納者は増加しているが,自動車は地方都市における住民の主な移動手段としての役割を担っており,免許証返納後の身体機能や生活に対する影響は大きいと考える。そこで本研究では,徳島県内の高齢ドライバーを対象に,免許証自主返納が活動性低下を招き,運動機能および認知・精神機能の低下を惹起するという仮説を予備的検証することとした。方法 対象者は,免許証の返納日まで日常的に週2回以上の運転を継続していた高齢者17人(平均年齢80.2歳,返納群)と,運転を継続している高齢者23人(76.9歳,運転継続群)とした。調査測定はベースラインと3か月後に実施し,活動性の評価は活動量計による3か月間の実測とLife Space Assessment(LSA)を用いた。運動機能と認知・精神機能の評価は,握力,Timed Up and Go testおよびMini-Mental State Examination(MMSE),Geriatric Depression Scale(GDS)を用いた。返納群には免許証返納に関するアンケート調査も実施した。統計解析は評価時期と2群に対して二元配置分散分析を実施した。結果 活動性の指標としたLSAの合計得点は有意な交互作用(P<0.01)を認め,返納群では3か月後に有意に低下した。一方,活動量計による歩数は有意な変化を示さなかった。運動機能および認知・精神機能のいずれの指標にも有意な交互作用を認めなかったが,MMSEとGDSで群の有意な主効果を認め,返納群が運転継続群に比して不良な成績であった。結論 徳島県在住の高齢ドライバーにおける免許証返納3か月後の変化は,日常生活における行動範囲の狭小化を認めた。運動機能および認知・精神機能の低下は観察されなかった。免許証を返納した高齢者は,自動車に代わる移動手段の速やかな確保が必要であると思われた。
著者
樋口 由美子 森嶋 隆文
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.98, no.7, pp.721, 1988 (Released:2014-08-08)

帯状疱疹患者61例に髄液検査を行ない,髄膜炎現象とその臨床症状との相関や髄液所見の特徴,殊に,髄液細胞数や髄液中varicella zoster virus(VZV)CF抗体価の経時的変動について検索し,次の興味ある知見を得た.1)帯状疱疹患者の66%に髄膜炎現象がみられ,このうち,髄膜刺激症状を呈したのは30%にすぎなかった.2)髄膜炎現象を伴う症例の罹患部位は脳神経領域に限らず,約半数か脊髄神経領域であった.3)髄膜炎現象は汎発疹の有無や基礎疾患の合併とは相関しなかった.4)髄膜炎現象をみる症例の髄液所見に関し,髄液細胞増多は軽度~中等度であり,外観は水様透明,総蛋白は正常~上昇,Clや糖はほぼ正常で,ウイルス性髄膜炎の所見に一致していた.トリプトファン反応がしばしば陽性を示した.5)髄液細胞増多の程度と汎発疹や髄膜刺激症状の出現頻度とは必ずしも相関しなかった.6)症例の38%が急性8期に髄液細胞増多を示した.中等度以上の細胞増多群における髄液細胞数の経時的変動に関し,症例の80%で,髄液細胞数が1~2病週に最高値を示し,その1週後に急激に数を減じるが,その後の減少度は緩徐である.7)髄液中VZV CF抗体は急性期には出現せず,回復期には細胞増多群の63%が有意の上昇を示した.中等度以上の細胞増多群では,その出現頻度は88%と高率であった.髄液中VZVCF抗体価の経時的変動に関し,症例の70%が髄液細胞数の変動とほぼ同様のパターンを示し,第1~2病週に最高値を示し,第4病週には1倍未満となった.8)初回検査時の髄液細胞数は抗ヘルペスウイルス剤投与群では非投与群に比して有意の低値を示していた.
著者
樋口 由美子
出版者
信州大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

[目的]樹状細胞療法をうける患者にG-CSFを投与することにより、樹状細胞ワクチンの作製量を増やすことができるかということを、単球表面の接着分子及び細胞外マトリックスの発現に着目し解明する。[方法]1.対象樹状細胞療法を行う患者7名を対象とし、G-CSF投与前と投与24時間経過した後の末梢血を用いた。2.末梢血からの単球分離末梢血より比重遠心分離法を用いて単核球を分離した後、CD14Micro Bead (Miltenyi Biotec)と反応させ、磁気分離装置(Auto MACS)を用いてCD14陽性細胞を分離した。3.PCRアレイ分離したCD14陽性細胞よりtotal RNAを抽出し、RT反応によりcDNAを作製した後、RT^2 SYBER Green/Rox qPCR Master Mix (Quiagen)を用いてPCR反応液を作製し、RT^2 Progiler PCR Array (Quiagen)を用いて定量PCRを行った。装置はABI7900 (Applied Biosystems)を使用した。[結果]末梢血より分離したCD14陽性細胞のうち、単球は97.86±2.62%であった。PCRアレイを用いて84種類の接着分子及び細胞外マトリクスの発現解析をした結果、G-CSF投与前に比較して投与後ではMMP9のmRNA発現量が7.62倍に増加していた(最大値29.61倍・最小値1.91倍)。MMP9はヒト末梢血単球においても少量分泌されており、in vitroの実験においては単球を培養する際にPMAまたはM-CSFを添加することによりMMP9の分泌量が増加し、単球の接着性、伸展性が促進されることが報告されている(mRNA量はそれぞれ7倍、5倍)。今回の結果は、その報告を強く支持するものであり、G-CSF投与により単球のシャーレへの接着が増強され、結果的に樹状細胞ワクチンの作製量が増加すると考えられた。
著者
藤堂 恵美子 樋口 由美 北川 智美 今岡 真和 上田 哲也 安藤 卓 高尾 耕平 村上 達典 脇田 英樹 池内 俊之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)の効果はエビデンスが確立されているものの,ADLのみを指標にした研究が多く,活動・参加を含めた生活機能への効果は十分明らかではない。また,先行研究では訪問リハプログラムの違いによる効果は検証されていない。しかしながら,実際は評価に基づき優先順位をつけ複合的に介入している。そこで本研究は,訪問リハプログラムの優先性が生活機能に与える影響を検証することを目的とした。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は,平成26年4月~平成28年3月にA訪問看護ステーションの介護保険による訪問リハを開始し,3ヶ月間追跡可能であった30名(平均年齢82.4±7.5歳,女性24名)とした。全介助の者,本研究の主旨を理解できない者は除外した。調査項目は基本属性に加え,生活機能として身体機能(立ち座り動作テスト),精神機能(GDS5,転倒自己効力感,主観的健康感),ADL(FIM),IADL(老研式活動能力指標),生活空間(LSA)を調査した。訪問リハプログラムは身体機能,活動,環境因子の3つに対して最も優先した介入を,担当理学・作業療法士に記入させて追跡後に集計した。</p><p></p><p>統計解析は,ベースラインの群間比較にはχ2検定またはMann-Whitney U検定を用い,p値が0.1未満の項目を説明変数,介入の優先性を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った。ベースラインと3ヶ月後の比較にはχ2検定またはWilcoxonの符号付順位和検定を用いた。有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>主疾患名は運動器疾患19名,脳血管疾患6名,その他5名であった。なお,入院歴がある者は15名であった。</p><p></p><p>訪問リハの優先プログラムは,全訪問回数のうち50%以上が活動であった者は19名,環境因子は11名で,身体機能への介入が50%を超えた者はいなかった。そこで,活動優先群と環境優先群の2群で分析した結果,ベースラインでは基本属性や身体機能,活動に差はなく,GDS5得点のみ環境優先群は有意に高かった。探索的に年齢とFIMの移動項目で調整しても,GDS5は環境因子への介入優先に対する独立関連因子であった(調整オッズ比3.34)。ベースラインと3ヶ月後の生活機能の比較では,LSAで両群共に有意な改善がみられ,活動優先群は15.3点から29.3点に,自宅圏外へ外出可能な者が6名から15名に増加,環境優先群は16.5点から28.3点に,自宅圏外へ外出可能な者が5名から9名に増加した。加えて,活動優先群では立ち座り動作で上肢支持が不要な者が有意に増加し,環境優先群では転倒自己効力感が有意に改善した。その他の項目では有意差を認めなかった。</p><p></p><p><b>【結論】</b></p><p></p><p>訪問リハ開始から3ヶ月間では,活動および環境因子への介入の優先性が高かった。介入の優先性によって身体機能や精神機能への効果が異なるが,生活空間は介入の優先性に関わらず拡大することが示唆された。</p>
著者
奥田 邦晴 樋口 由美 増田 基嘉 林 義孝 南野 博紀 山西 新 川邊 貴子 灰方 淑恵 喜多 あゆみ 田中 美紀 高橋 明 小西 努
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.E0786-E0786, 2005

<B>【目的】</B><BR> 近年、競技やレクリエーションとして積極的にスポーツ活動に参加する重度の障害者が増加してきている。理学療法の目標の一つに障害者の生活支援がある。この生活支援に焦点を当て、重度の障害者の生活遂行過程においてスポーツが果たす機能ならびに理学療法学との接点を明らかにすべくインタビューによる調査を行った。<BR><B>【対象と方法】</B><BR> 本調査の主旨に同意を得ることができたスポーツを行っている重度障害者76名(A群)およびスポーツを行っていない重度障害者24名(B群)の計100名とした。スポーツ群の障害内訳はC5・6頸髄損傷39名、脳性麻痺(CP)30名、筋ジス他7名、スポーツ選手群はC5・6頸髄損傷11名、CP12名、他1名であった。上記対象者に面接による聞き取り調査を実施した。面接時間は平均約1時間、ボイスレコーダーでの録音および口述筆記を行った。<BR><B>【結果】</B><BR> 医療機関の受診状況はA群76%、B群95.8%であった。特にリハ科の受診率はA群の11.8%に比べB群では39.1%と高率であり、内容も理学療法目的がほとんどで日常的なリハ医療への依存性が高い傾向が見られた。スポーツを始めたきっかけは友人・知人の紹介が多く(43.4%)、医療従事者からの情報提供は極めて少なかった(3.9%)。リハセンター等のスポーツ施設を併設する医療機関に入院できるかどうか或いは障害者のスポーツに精通している指導者に出会えるかどうかが後のスポーツ活動に大きな影響を与えていた。スポーツを行う目的について71.1%が競技であり、レクリエーション、リハは各々11.8%であった。楽しみである、生き甲斐であると答えた者が約半数あった。スポーツ開始時期について、CP者では養護学校での体育の授業が45.2%、残りの41.9%の人は早い人で19歳、遅い人では54歳(平均29.8歳)であった。有職率はA群46.1%、B群16.7%であった。A群は給与、年金等すべての収入を合わせた年収について回答を得た70名は54.3%が200万円未満であったが、14.3%は年収400万円以上を得ていた。B群の20名は約8割が年収200万円に満たない状態であり、低所得層であることが伺えた。<BR><B>【考察】</B><BR> スポーツをするかしないかは本人の選択であるが、せめてスポーツに関する情報提供は早期から行われるべきであり、理学療法士は社会参加の一手段としてのスポーツの機能について認識を深めることが重要である。スポーツ場面において、選手同士は新たな自己を再発見・再認識することができるだけでなく、自己および他者の存在や役割を客観的に理解し合うことができ得る。また、スポーツはセルフヘルプグループに類似する機能、エンパワーメント機能等、重度障害者が充実した自立生活を送ることや自己実現を可能にする一手段として、また社会に踏み出す一歩としての重要な役割を有していることが明らかになった。
著者
今岡 真和 樋口 由美 藤堂 恵美子 北川 智美 山口 淳
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.47-51, 2014
被引用文献数
1

目的:本研究の目的は介護老人保健施設における車椅子使用者の転倒リスク因子を明らかにすることである.対象:介護老人保健施設へ新規入所した者のうち,車椅子を日常生活の移動手段とする62 名(男性14 名,女性48 名,平均85.4±7.9 歳)であった.方法:入所時評価(ベースライン)は,年齢,過去1 年間の転倒歴,身体機能,精神機能,生理機能,医学的処置,経済状況の19 項目を評価した.転倒は入所から最長6 カ月間を前向きに追跡調査した.統計解析は,単変量解析で転倒と有意に関連した項目を独立変数,転倒発生の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.結果:29 名(46.8 %)に転倒が発生した.転倒に関連した項目は,「背中が丸くなってきた」「FIM得点高値」「ベンゾジアゼピン系薬の内服」「平均投薬数が多い」であった.ロジスティック回帰分析の結果,入所期間中の転倒発生に対して,「背中が丸くなってきた」が独立関連因子であった(オッズ比4.11).
著者
樋口 由美 北川 智美 岩田 晃 小栢 進也 今岡 真和 藤堂 恵美子 平島 賢一 石原 みさ子 淵岡 聡
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101447-48101447, 2013

【はじめに、目的】中等度以上の身体活動を継続することは、心血管病、大腸ガン等の発症率低下のみならず、生命予後の延伸にも寄与することが知られている。しかし一方で、デスクワーク、テレビ視聴等の座ってすごす時間(座業時間)が長いと、同程度の身体活動を習慣にしていても、座業時間が短い人々に比べて死亡率の上昇が報告されるようになった。ただし、中壮年以上のコホート研究で報告されており、座業が高齢者に与える影響については不明な部分が多い。 本研究は、中等度以上の身体活動を習慣にしている高齢者の座業時間と、運動機能および生活機能との関連を検討することを目的とした。【方法】大阪府南部に位置するH市で、介護予防事業の拠点施設を定期的に利用する者を対象に研究参加ボランティアを募集した。応募した60歳以上の男女127名に対し、平均的な1週間の身体活動量を質問票にて調査した。質問票は、国際標準化身体活動質問票IPAQ(短縮版)を用いた。調査の結果、中等度(4METs)以上の身体活動を習慣にしている者97名(女性71名、平均年齢73.9歳、61-90歳)を分析対象者とした。同じく質問票より1日当たりの座業時間を調査した。座業時間とは、座って行う作業、テレビ視聴、おしゃべり等の合計時間であり、睡眠時間は含まない。運動機能は、5m通常歩行時間とTimed up & go test(以下TUG)を測定した。5m通常歩行時間は、11m歩行路の中央5mの所要時間を計測した。TUGは原典と同じく通常歩行の速さで計測した。生活機能は、老研式活動能力指標(13点満点、高いほど良好)にて調査した。座業時間と運動機能および生活機能の関連を分析するため、1日の座位時間が6時間以上の群と6時間未満の群に2群化し、年齢を共変量とした共分散分析を用いて男女別に解析した。なお、基準とした6時間は先行研究を参考とした。統計学的有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には研究の趣旨を説明し書面にて同意を得た。なお、本研究科研究倫理委員会の承認済みである。【結果】分析対象者の1日の座業時間は平均4時間19分であり、男性の平均は4時間52分、女性は4時間7分と女性の方が座業時間の短い傾向を示した。座業時間による2群化は、男性では6時間未満(n = 19)、6時間以上(n = 7)、女性は6時間未満(n = 50)、6時間以上(n = 21)であった。なお、座業時間2群間でBMIに男女ともに有意差を認めなかった(男性:6時間未満22.0、6時間以上21.8 女性:21.5、21.3)。運動機能に対する共分散分析の結果、男性の座業時間6時間未満群は、5m歩行時間の平均値が3.8秒、6時間以上群が4.0秒であった。女性では6時間未満群3.4秒、6時間以上群3.8秒と座業時間の延長に伴い有意に歩行時間が遅延した。TUGでは、男性の6時間未満群が8.1秒、6時間以上群8.8秒、女性も各々7.0秒、7.5秒であったものの、年齢調整後の分析結果では有意差を認めなかった。生活機能に対する共分散分析では、男女ともに座位時間と老研式活動能力指標との間に統計学的関連を認めなかった(男性:6時間未満11.5点、6時間以上12.1点 女性:12.3点、12.0点)。【考察】中等度以上の身体活動を習慣とする高齢者において、1日の座業時間が6時間以上の女性は、年齢調整後も有意に歩行速度が低下していた。従来、中等度以上の身体活動を日常生活に取り入れることは、健康状態や生命予後に良好な影響を与えることが明らかであるが、座って過ごす時間の延長は、高齢期においても身体活動がもたらす好作用を阻害する可能性が示唆された。なお、男性でも同傾向を認めたが有意差に至らなかったことは、対象者数の少なさが要因の一つと考えられる。一方、生活機能が高い本研究対象者では、座業時間の影響は確認されなかった。【理学療法学研究としての意義】地域高齢者に対する予防的アプローチにおいて、中等度以上の身体活動を推奨すると同時に、座って過ごす生活時間(座業時間)にも留意することで介護予防さらに生命予後の改善が期待されること。
著者
奥田 邦晴 林 義孝 高畑 進一 淵岡 聡 樋口 由美
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

障害者の陸上競技、中でもフィールド競技に関する先行研究は散見する程度であり、特に、重度障害者を対象とした投てき競技に関する研究は皆無である。本研究は主として脳性麻痺や頚髄損傷者の重度障害者の投てき運動を可能にするための補装具である調節式スローイングチェアを作成し、スローイングチェアの適合度合いの差異がどのように投てき運動に影響を及ぼすかについて調査することを目的とした。具体的には、各々の選手の投てき運動を6台のデジタルビデオカメラを用いたビデオ式3次元解析装置(ToMoCo Vm4)により運動学的に解析し、障害度やその特徴の違いやスローイングチェアの適合性が投てき運動に及ぼす影響について明らかにした。これらの結果は、重度障害者にとって、投てき競技の魅力が拡大し、その普及に寄与できるとともに、障害者の投てき競技におけるスポーツ指導方法の基礎データとしたり、競技能力向上に寄与することができる。1.調節式スローイングチェア(通称、座投一)を作製した。2.脳性麻痺選手を対象に、調節式スローイングチェアを約2ヶ月間貸与し、調整後、障害者陸上ジャパンパラリンピック大会に本機を使用して出場した。3.アテネパラリンピックに出場した頚髄損傷選手(銀メダリスト)を対象に、調節式スローイングチェアを使用し、より競技能力向上に目的に、検討した。(現在も継続中)4.脳性麻痺、頚髄損傷選手の投てき動作について、三次元解析装置にて運動学的に分析、検討した。5.3および4の結果から、改良型調節式スローイングチェアを作製した。6.脳卒中の投てき選手に座投一を試行し、より障害像に適したシッティングポジションを確立できた。7.調節式スローイングチェアについて特許申請を行い、受領された。(特願2005-265193)8.第26回医療体育研究会/第9回アジア障害者体育スポーツ学会目本部会第7回合同大会にて、「陸上投てき競技用調節式スローイングチェアの開発について」を報告した。9.第18回大阪府理学療法学術大会にて、「頚髄損傷投てき選手に対する競技用調節式補装具(モジュラー型スローイングチェア)を用いた競技能力向上への取り組み」について報告予定。10.第22回日本義肢装具学会学術大会にて、「重度障害者の陸上投てき競技用スローイングチェアの開発と適応について」報告予定。