著者
北條 正司 能勢 晶
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.171-181, 2008 (Released:2008-03-24)
参考文献数
43
被引用文献数
2 1

アルコール飲料中における水-エタノールの水素結合の特性は十分には解明されていない.本研究中では,水及びエタノールのOHの1H核磁気共鳴及びラマン分光データに基づき,水素結合構造性に及ぼす要因を研究した.酸類(H+及び解離していないHA)だけではなく,塩基類(OH-及び弱酸からの共役塩基A-)が水とエタノール間のプロトン交換を促進するとともに,水-エタノール混合媒体の水素結合構造性を強めていることが明らかになった.酒類(ウイスキー,日本酒,焼酎)中においても,溶存する化学成分によって,水素結合性が強められていることが実証された.酒類又はアルコール飲料中において,元々含まれていたか,又は後に獲得された成分である水素結合供与体及び受容体が水とエタノール分子間のプロトン交換速度を促進すると示唆された.
著者
北條 正司
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.715-726, 2014-09-05 (Released:2014-10-05)
参考文献数
55

塩を混合することにより,濃硝酸ばかりか希硝酸にも酸化力が発現することを確認する目的で,アルカリ金属,アルカリ土類金属及びアルミニウム塩化物塩を含有する0.1~2 mol dm-3硝酸中に貴金属類,特に,金を溶解することを試みた.2.0 mol dm-3 HNO3にAlCl3を1.0 mol dm-3混合した20 mL溶液中(15~80℃)に,純金板(20 ± 2 mg,厚さ0.1 mm)は完全溶解するが,温度の上昇に伴い,完全溶解に要する時間は著しく短縮した.40及び60℃ において,塩化物塩を混合した2.0 mol dm-3 HNO3溶液中での金線(19.7 ± 0.5 mg,直径0.25 mm)の溶解速度定数[log (k/s-1)]は,一般的に塩濃度の増大と共に上昇した.例えば,60℃ において2.0 mol dm-3 HNO3溶液中にLiClを1.0,2.0,3.0及び4.0 mol dm-3混合すると,log (k/s-1)値はそれぞれ-4.15,-3.77,-3.45及び-3.14へと上昇した.ずっと濃度の低い硝酸(0.1~1.0 mol dm-3)を用いると金線の全溶解時間は著しく長くなった.純金の溶解は,硝酸及び塩酸濃度の低い「希王水」,例えば,1.0 mol dm-3 HNO3と1.0 mol dm-3 HClの溶液中でも起こる.50 mL海水と2.0 mol dm-3 HNO3の1 : 1混合液中に,金線5本(0.10 mg)を100℃ において約17時間で完全溶解させることに成功した[log (k/s-1)=-4.52].塩酸濃度の増加に伴うラマンスペクトル変化に基づき,バルク水構造の破壊及び水の特性の変化を議論した.
著者
北條 正司
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.715-726, 2014

塩を混合することにより,濃硝酸ばかりか希硝酸にも酸化力が発現することを確認する目的で,アルカリ金属,アルカリ土類金属及びアルミニウム塩化物塩を含有する0.1~2 mol dm<sup>-3</sup>硝酸中に貴金属類,特に,金を溶解することを試みた.2.0 mol dm<sup>-3</sup> HNO<sub>3</sub>にAlCl<sub>3</sub>を1.0 mol dm<sup>-3</sup>混合した20 mL溶液中(15~80℃)に,純金板(20 ± 2 mg,厚さ0.1 mm)は完全溶解するが,温度の上昇に伴い,完全溶解に要する時間は著しく短縮した.40及び60℃ において,塩化物塩を混合した2.0 mol dm<sup>-3</sup> HNO<sub>3</sub>溶液中での金線(19.7 ± 0.5 mg,直径0.25 mm)の溶解速度定数[log (<i>k</i>/s<sup>-1</sup>)]は,一般的に塩濃度の増大と共に上昇した.例えば,60℃ において2.0 mol dm<sup>-3</sup> HNO<sub>3</sub>溶液中にLiClを1.0,2.0,3.0及び4.0 mol dm<sup>-3</sup>混合すると,log (<i>k</i>/s<sup>-1</sup>)値はそれぞれ-4.15,-3.77,-3.45及び-3.14へと上昇した.ずっと濃度の低い硝酸(0.1~1.0 mol dm<sup>-3</sup>)を用いると金線の全溶解時間は著しく長くなった.純金の溶解は,硝酸及び塩酸濃度の低い「希王水」,例えば,1.0 mol dm<sup>-3</sup> HNO<sub>3</sub>と1.0 mol dm<sup>-3</sup> HClの溶液中でも起こる.50 mL海水と2.0 mol dm<sup>-3</sup> HNO<sub>3</sub>の1 : 1混合液中に,金線5本(0.10 mg)を100℃ において約17時間で完全溶解させることに成功した[log (<i>k</i>/s<sup>-1</sup>)=-4.52].塩酸濃度の増加に伴うラマンスペクトル変化に基づき,バルク水構造の破壊及び水の特性の変化を議論した.