- 著者
-
千艘 秋男
- 出版者
- 東洋大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2001
本研究の目的は、室町時代前半における飛鳥井雅世の動静および和歌を中心とした文芸活動を総合的に研究するための基礎的な文献資料を整理することである。今回の研究対象は、雅世の人物像の考察と和歌資料の整理とに絞った。本研究の期間は、平成13・14年度の二年間である。平成13年度は、雅世の年譜考証の基礎資料を整備するために、南北朝・室町前期の『吉田家日次記』『教言卿記』『満済准后日記』などの日記、内裏や仙洞御所で開催された歌会の記録類を調査した。雅世の和歌作品と、公家や武家との交際、官界・歌壇での動静に関する記事とに注目し、その資料を収集・整理をして、先覚が作成した基礎文献の補足と訂正とを試みた。その結果、平成13年度の成果として、雅世の1〜25歳までの動静を対象とした記録類を収集し、考証を試みて「飛鳥井雅世年譜稿(一)」を作成することができた。平成14年度は、主に次の二つの作業に従事した。一つは、13年度の継続作業である雅縁・雅世父子の年譜考証のための基礎資料の整理である。もう一つは、家集「雅世集」と定数歌を整理し、『宋雅集』『飛鳥井雅世歌集』『雅世卿集』『飛鳥井雅世集』『入道大納言雅世卿百首』などの本文整理を行った。特に、『雅世卿集』『飛鳥井雅世集』『入道大納言雅世卿百首』の三作品は底本を決定し、それぞれ他本との校合を行い、校本を作成した。これらは、将来『飛鳥井雅世全集 本文篇』(仮称)に、雅世の詠歌(歌集)の一部として収める予定である。また、平成13・14年度の二年間に、雅縁並びに雅世の自筆および他筆懐紙・短冊・詠草、関連資料を収集することができた。これらの資料は、将来『飛鳥井雅世全集 資料篇』(仮称)に、可能な範囲で図版掲載の予定である。