著者
千葉 惠
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3+4, pp.193-202, 2009 (Released:2011-06-30)
参考文献数
14

有機体は自らをとりまく環境のなかで、免疫反応に見られるように、自己と非自己を何らかの仕方で識別しつつ生きているということ、そしその自己というシステム全体は部分の総和としての「集積的全体(pân)」ではなく、諸部分に還元されることのない一なる原理のもとに「統合的全体(holon)」として生きているということ、この考えに賛同できるなら、アリストテレスの生命観を一つの現実的な可能性として受け止めうるのではないか。さらに、生命事象の物理生理的説明と目的論的説明は単に両立可能であるというだけではなく、生体の諸事象は現実に目的的なものであるという主張を一つの挑戦として掲げてみたい。
著者
千葉 惠
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

『魂論』二巻の「魂」の定義に用いられる「力能(dunamis)」そして「完成(entelecheia)」の概念を、その対となる「実働(energeia)」の概念とともに明確に理解するに至った。従来「可能態」と「現実態(energeia =entelecheia)」等と訳されてきたが、これでは精密な議論の展開を正確に理解できない。アリストテレスはロゴスとエルゴンという二つの視点から魂を把握した。ロゴスにおいて事物の一性を開示する「力能」と「完成」の対により「魂」の定義「力能において生命を持つ自然的物体の第一の完成」が提示される。エルゴンは今ここにおいて捉えられる。二巻は従来と異なる翻訳である。
著者
千葉 惠
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

アリストテレスの体系の頂点に形而上学が位置する。これは存在としての存在を研究する存在論であり、また第一の永遠の不動の存在者を研究する神学でもあるが、「第一のものであるが故に普遍的である」という仕方で両者は総合される。彼の体系は壮大で緻密なカテドラルに比すことができる。尖塔は天界の証人として神学であり、基礎およびネイブは弁証術と自然学である。本研究は弁証術と自然学の相補性を方法論上明らかにしている。弁証術の方法と実践は区別されるべきであり、その方法は「弁証術的に(dialektikos)」にではなく「ロギコースに(形式言論構築上)」形成されていることを明らかにした。従来はこの二つの方法が区別されていなかった。そして存在の形式言論構築的な分析としての「ロギコース」という手法は自然学の探究のみならず、神の存在の探究にいたるまで用いられる手法であることを明らかにした。(報告書第一論文)彼の重要な形而上学的概念である「本質(toti en einai)」もロギコースに、非因果論的に論じられることを明らかにした。実体に自体的同一性が端的にあることがロギコースに主張される。ロギコースに自体的同一性として特定される本質を現実世界で因果論的に実現しているものの理解を可能にするものが質料形相論である。従来は実体の一性を構成する因果論上基礎的な特徴を本質として理解してきた。本質は形式言論上存在要請され、それを満たすものが自然のうちに因果論的に探究される。(第二論文)さらに、この因果論的展開を可能にし、弁証術と自然科学を架橋するのが彼の論証と定義の理論であることを明らかにした。因果性を明らかにする論証をソクラテス以来の「何であるか」の探究の延長線上に種々の定義を判別する定義論に組み込む様式を明らかにした。(第三論文)
著者
千葉 惠
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大学文学研究科紀要 (ISSN:13460277)
巻号頁・発行日
vol.134, pp.1-29, 2011-07-20
著者
千葉 惠
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大学文学研究科紀要 (ISSN:13460277)
巻号頁・発行日
no.134, pp.1-29[含 英語文要旨], 2011