- 著者
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千葉 武勝
長谷川 勉
- 出版者
- 北日本病害虫研究会
- 雑誌
- 北日本病害虫研究会報 (ISSN:0368623X)
- 巻号頁・発行日
- vol.1972, no.23, pp.66-70, 1972-12-20 (Released:2011-08-11)
- 参考文献数
- 21
タマナヤガとカブラヤガ両種の3令期以降の幼虫, 蛹および成虫の耐寒性について実験的に検討し, その結果から, 両種の野外における越冬態について考察をくわえた。1. 20℃, 長日 (16時間照明) および短日 (12時間照明) 条件下で飼育した両種の3令, 4令, 5令および6令幼虫を約2.5℃ の冷蔵庫で冷蔵し, 5日ごとに60日めまで生, 死虫数を調査した。その結果, タマナヤガではいずれの令期, 日長条件区とも耐寒性は弱く60日間の冷蔵処理でほとんどの個体が死亡した。これに対して, カブラヤガの幼虫では一般に強く, とくに短日で飼育した5~6令幼虫は60日後でも約90%の個体が生存していた。2. 9月中旬から10月下旬の問の室温条件下で飼育して得た蛹を, ヨトウガの休眠蛹との比較のもとに野外の土中に埋没して, 人為的に越冬させたところ, ヨトウガでは88%の個体が翌春まで生存していたのに対し, タマナヤガおよびカブラヤガでは全個体が死亡した。3. 低温 (20℃), 短日 (12時間照明) 下で飼育して得た成虫を2℃ 前後に冷蔵して生存期間を調べたところ, タマナヤガは平均37日, カブラヤガでは55日であった。4. 以上の結果から, タマナヤガでは各虫態とも耐寒性が弱く, 寒冷地での越冬は困難と思われた。また, カブラヤガでは中~老令幼虫で越冬するものと考えられた。