著者
千葉 理恵 宮本 有紀 船越 明子
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.32-40, 2010
被引用文献数
6

目的:わが国で地域生活または入院している精神疾患をもつ人の,疾患の経験によるベネフィット・ファインディングの特性を,質的に明らかにすること.<br>方法:2008年6~9月に,精神疾患をもつ20歳以上の者を対象として,ベネフィット・ファインディングに関する質的項目を含む,調査票を用いた横断調査を行った.調査の同意を得られた193名のうち,有効回答者107名の回答を,ベレルソンの内容分析の手法により分析した.<br>結果:分析の結果,『人間関係の深まり・人間関係での気づき』『内面の成長・人生の価値観の変化』『健康関連の行動変容・自己管理』『精神の障害に関する関心や理解の深まり』『社会の中で新たな役割を見出すこと』『宗教を信じること』および『その他』の7カテゴリーが抽出された.<br>結論:精神疾患をもつ人のベネフィット・ファインディングには多彩な内容があり,さまざまな慢性身体疾患をもつ人のベネフィット・ファインディングと共通点をもつことが明らかになった.
著者
千葉 理恵 木戸 芳史 宮本 有紀 川上 憲人
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.127-138, 2012 (Released:2012-08-09)
参考文献数
63
被引用文献数
2

目的:わが国の地域住民が,精神障害をもつ人々とよりよく共生するために,居住地域や自身にどのようなことが不足していると考えているかを質的に明らかにすることを目的とした。方法:東京都内の20市区町村を対象地域として,各市区町村の選挙人名簿および住民基本台帳から100名ずつを単純無作為抽出し,20歳以上の地域住民2000名を対象として,2009年9~11月に郵送により自記式調査票の横断調査を行った。調査票には,2つの質的質問項目「住民の皆さんと精神障害をお持ちの方が,共に心地よく暮らすために,あなたの住んでいる地域には(/住民であるあなた自身には)何が不足していると思いますか」や,性別,年齢などの項目を含めた。1つ以上の質的質問項目に有効回答のあった274名(平均年齢48.6歳;男性44.2%)を分析対象者として,ベレルソンの手法に基づく内容分析を行った。結果・考察:質的質問項目の回答には,精神疾患についての知識や理解,精神障害をもつ人々との交流,地域住民同士の交流に関する回答など多彩な内容が含まれた。精神障害についての知識を深めるための地域住民のニーズに合うような教育の機会や,精神障害をもつ人々との交流の機会の提供,広い意味での住民の交流・連帯への介入によってスティグマにどのような影響があるかを明らかにすることが,精神障害をもつ人々のソーシャル・インクルージョンを促進していく上で重要であることが示唆された。