著者
原田 柚子 今井 一博 髙嶋 祉之具 中 麻衣子 松尾 翼 南谷 佳弘
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.621-626, 2022-09-15 (Released:2022-09-15)
参考文献数
16

区域切除はIA期の非小細胞肺癌(NSCLC)に対する標準的治療の一つであるが,根治を目的として区域切除を行う際は適切なリンパ節転移の評価と,切除断端の確保が必須である.本研究の目的は,術中判断で区域切除から肺葉切除に移行した症例の頻度と理由,予後を検討することである.当院で2014年から2020年までに臨床病期IA期のNSCLCに対して区域切除が予定された121名の転帰を検討した.121例中8例が術中診断と術者の判断により区域切除から葉切除に変更されていた.4例が術中迅速診断でリンパ節転移陽性の診断,4例は手術手技に関する問題が変更の主な要因となっていた.リンパ節転移の評価には迅速免疫組織化学染色も併用した.区域切除を完遂した患者(n=113)と肺葉切除術に変更した患者(n=8)の間で,全生存期間に有意差はなかった(P=0.5828).適切な術中の判断がなされれば,術前に区域切除の適応と考えられた症例のうち,肺葉切除すべき症例を発見することができる.
著者
中川 拓 今野 隼人 佐々木 智彦 大山 倫男 伊藤 学 齋藤 元 南谷 佳弘 小川 純一
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.733-741, 2010-05-15 (Released:2010-08-09)
参考文献数
14
被引用文献数
1

フィブリンの析出のためにドレナージが困難となった急性膿胸および肺炎随伴性胸水に対して,胸腔鏡下の手術奏功例が多数報告されているが,全身状態が不良で手術困難な場合も少なくない.このような症例に対してウロキナーゼの胸腔内投与の有用性が報告されている.しかし標準的な投与方法は確立していない.当科でウロキナーゼの投与を行った急性膿胸および肺炎随伴性胸水5例を対象に,ウロキナーゼ投与方法,治療期間,効果を中心にretrospectiveに検討した.全例で多房性胸水を認めていた.4例は発症後1~16日の経過で,ウロキナーゼ投与(1回12万単位,6~9回投与)のみで肺の良好な再膨張が見られた.ウロキナーゼ注入に加えて外科治療を要した1例は,発症から1ヵ月経過した膿胸で,手術後治癒した.出血などの合併症はなかった.ウロキナーゼの胸腔内投与は簡便であり大きな合併症もなく,poor risk症例に対して考慮すべき治療法と思われた.