著者
望月 亮 南部 恭二郎
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.268-271, 2005-05-01

最近の研究で, 悪性脳腫瘍であっても手術で全摘できれば5年生存率がかなり高くなることが分かってきた. 悪性脳腫瘍は目視では正常組織とほとんど区別が付かず, 全摘しようとすれば手術ナビゲータなどを利用した画像誘導手術が必須である. しかし, 摘出がほぼ完了した状態で, 特に脳の機能的に重要な部位に近接したわずかな残存腫瘍を除去する段階では, 画像誘導だけでは充分でない. そこで, 術前に悪性脳腫瘍に特異的に集積する蛍光物質(Talaporfin(NPe6)や5ALA)を投与しておき, 手術中に励起光を照射すると, 残存腫瘍組織は蛍光を発するので区別できる(ケミカルナビゲーション). ところが, この蛍光は微弱で, 手術室を真っ暗にしても視認は容易でない. まして, 従来の手術顕微鏡では全く捉えられない. 2. ビデオ顕微鏡の構造 われわれは, 東京女子医科大学脳神経外科, 美原記念病院脳神経外科などの協力を得て手術用ビデオ顕微鏡の開発を行ってきた. 従来の手術用顕微鏡と違って, ビデオ顕微鏡には接眼レンズがない.
著者
南部 恭二郎 櫻井 康雄 伊関 洋 苗村 潔
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.282-287, 2005-05-01
被引用文献数
4

1. 犯人探しから潜在的危険源の解消へ 手術中に医療ミスがあったとして医師が刑事告発される事例が急激に増えている. これに対して, 手術室に居合わせた医師がいつでも犯人にされかねないようでは, 難しい手術をやろうとする者はいなくなってしまう, という意見がある. 民事訴訟にとどまらず, 刑事責任まで問うことが妥当なのかどうかは法学の問題だろう. しかし, 社会利益の観点からは, 事故は原因を究明して再発を防止することがまず肝要であり, そのためには, 何が起こったのかを正確に知ることが必須である. ほとんどの事故は, 複数の要因が重なり合ったところで起こる. つまり, それらの要因のうち一つでも生じなかったなら事故には至らなかったということであり, 執刀者の行為にばかり注目するのではなくて, 他の要因もことごとく洗い出さなくてはならない. 誰がどんな間違いをしたかに興味の中心がある「犯人探し」の発想では, かえって真実の解明が妨げられることになる.