著者
新田 雅之 村垣 善浩
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
pp.jslsm-41_0036, (Released:2020-12-05)
参考文献数
63

正確かつ安全に悪性神経膠腫を最大限に摘出することは容易ではなく,(5-aminolevulinic acid: 5-ALA)を用いた光線力学的診断(Photodynamic diagnosis: PDD)を始め多くのモダリティが応用される.5-ALAは腫瘍内に選択的に集積し,その代謝産物である(Protoporphyrin IX: PpIX)の蛍光によって,腫瘍の存在を非常に簡便かつリアルタイムに示すことができ,本手術の遂行に有用である.最近ではPpIXの集積メカニズムの解明も進み,その集積効率を高めることで,PDDのみならず光線力学的療法(Photodynamic therapy: PDT)の効果増強に関する研究も期待されている.一方,本方法論には低悪性度神経膠腫での有用性が低い点,偽陽性や偽陰性の問題などがあり,その遂行には十分な知識と経験を要する.これら諸問題の克服のため,スペクトル解析を用いたPpIX蛍光の定量化技術の開発が進んでいる.また最近,本邦において悪性脳腫瘍のPDT治療剤として承認されているtalaporfin sodiumが,PDDにも応用可能であることが示され,今後は本薬剤を用いたPDDとPDTの併用が実現することが期待される.
著者
伊関 洋 村垣 善浩 丸山 隆志 田村 学 鈴木 孝司 吉光 喜太郎 生田 聡子 岡本 淳
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.17-21, 2012 (Released:2016-04-15)
参考文献数
8

21 世紀の医療は,リスクを評価し,それに基づくリスクを予防しながら実行する先行予測制御型の医療である必要が ある.リスクを評価し,リスク管理された先行予測型制御で予測したロードマップと現状データとの差分を最適化し,予定された結果へ安全確実に誘導するためには,MR 画像を含む医療画像情報を基に,手術を正確に且つ安全にコントロールする戦略デスクで構成されたシステムが必須である.医療情報を統合管理し,戦略を決定する戦略デスクが,外科手術を精密手術として工程管理し,運用されるのである.
著者
森 健策 村垣 善浩
出版者
一般社団法人 日本コンピュータ外科学会
雑誌
日本コンピュータ外科学会誌 (ISSN:13449486)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.5-21, 2018 (Released:2018-08-08)

日本コンピュータ外科学会は2017年で設立25周年を迎えました. 2017年10月28日から30日に名古屋大学豊田講堂で開催された, 第26回日本コンピュータ外科学会では多数の参加者をお迎えし, 25周年特別企画が行われました.本学会の設立ならびにその発展に多大なる貢献をなされた先生方にご挨拶いただき, その後, 東京大学佐久間一郎先生から, 日本コンピュータ外科学会これまで何が研究され, そして, それが今後どうなっていくであろうかを予想する基調講演をいただきました. そして, 医学, 工学, 情報の各分野の若手を含めた研究者によるパネルディスカッションの時間が持たれました. このディスカッションでは, 日本コンピュータ外科学会のこれまでの25年, これからの25年について議論をするものでした. 日本コンピュータ外科学会がこの25年で達成してきたことを振り返り, 若手研究者が次の25年で目指すべき将来像についてそれぞれの立場から述べ, 今後どのようなイノベーションが生まれるかを予測する絶好の機会となったものと思います.本記事は, 第26回日本コンピュータ外科学会における 「25周年特別企画」 での, 橋爪誠先生, 北島雅樹先生, 土肥健純先生からのご挨拶, 佐久間先生の基調講演, ならびにパネルディスカッションを書き起こしたものです. 本学会を今後どのように発展させればよいのか, ひとつの道しるべとなれば幸いです.
著者
城 潤一郎 三島 史人 武田 真一 山本 雅哉 村垣 善浩 伊関 洋 佐保 典英 窪田 純 佐々木 明 西嶋 茂宏 田畑 泰彦
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.558-568, 2007 (Released:2007-12-13)
参考文献数
5
被引用文献数
7 6

次世代DDS型治療システムとは,従来のDDS治療効果をさらに向上させるために,外部エネルギーをDDS技術と融合させる新しい技術・方法論である.この新治療システムによって,体内の深部にある病気を治療できるであろう.本稿では,磁場とDDSとを組み合わせた,磁気誘導DDSによる次世代治療システムを実現させるために必要となる技術要素を概説するとともに,その治療ポテンシャルについて述べる.
著者
新田 雅之 村垣 善浩
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.336-342, 2021-01-15 (Released:2021-01-15)
参考文献数
63

正確かつ安全に悪性神経膠腫を最大限に摘出することは容易ではなく,(5-aminolevulinic acid: 5-ALA)を用いた光線力学的診断(Photodynamic diagnosis: PDD)を始め多くのモダリティが応用される.5-ALAは腫瘍内に選択的に集積し,その代謝産物である(Protoporphyrin IX: PpIX)の蛍光によって,腫瘍の存在を非常に簡便かつリアルタイムに示すことができ,本手術の遂行に有用である.最近ではPpIXの集積メカニズムの解明も進み,その集積効率を高めることで,PDDのみならず光線力学的療法(Photodynamic therapy: PDT)の効果増強に関する研究も期待されている.一方,本方法論には低悪性度神経膠腫での有用性が低い点,偽陽性や偽陰性の問題などがあり,その遂行には十分な知識と経験を要する.これら諸問題の克服のため,スペクトル解析を用いたPpIX蛍光の定量化技術の開発が進んでいる.また最近,本邦において悪性脳腫瘍のPDT治療剤として承認されているtalaporfin sodiumが,PDDにも応用可能であることが示され,今後は本薬剤を用いたPDDとPDTの併用が実現することが期待される.
著者
熊田 孝恒 丸山 隆志 岩木 直 田村 学 川俣 貴一 村垣 善浩
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

人間の認知機能では、前頭葉から脳のより低次の領野に対するトップダウンのコントロールによって、低次領野における情報処理の調節が行われている。この研究では、トップダウンの情報処理の基盤としての前頭葉の機能を、特に、前頭葉機能の中心である「知能」の側面に着目して明らかにした。知能を構成する3つの要因である、更新、移動、抑制の機能には脳内の異なるネットワークが関与していることがわかった。
著者
中村 亮一 村垣 善浩 伊関 洋
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.248-255, 2005-05-01
被引用文献数
2

はじめに -術中情報の可視化- 精密かつ安全な手術を遂行する上で最も重要な事項の一つは, 患者, 病変に関しての質の高い情報をいかに確保するかということである. 「敵を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず」とは孫子の言葉であるが, 手術においてもまさしくこの言葉が当てはまる. すなわち, 対象となる病変の情報を多く獲得し, かつ自分が手術という一連のプロトコルの中で現在どういう状態にあり, これから何をするべきかを決断するための情報を獲得することが, よりよい手術結果を獲得するために必要なことである. 肉眼で確認できない患者体内の病変についてのより質の高い情報を獲得するための試みが古くより多くの医学者, 科学者によりなされてきた. Roentgenが1895年11月8日にX線を発見し12月22日に夫人の手指骨の透過写真を撮影したのが, 非侵襲的な(切開等の直接的侵襲を伴わない)体内情報の画像化の最初である. その後, HounsfieldによるX線CTの開発(1968), 和賀井敏夫らによる超音波診断装置の開発, そしてLauterbur, Mansfieldらにより開発された核磁気共鳴画像(MRI)(1971)の登場により, 体内の多品質, 高品質な画像情報の獲得が可能となった.