著者
原 通範
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は,重度な知的障害者A:GOちゃんが,3年間のプールでのシンクロを中心とした水泳指導を通じて海での遠泳を獲得できるかどうかを確認することにあった。得られた成果は次の通りである。(1)2008年度夏の遠泳においては,ほぼ全コースを一定の休憩を取りながら泳ぎ通すことができるようになった。(2)しかし,その翌年(2009年度夏)はほとんどのところを泳がず,最後の約30mをようやく泳ぐことができたという結果となってしまった。以上2点の結果を通じて,以下3点を考察した。(1)障害特性として,自閉傾向があり,知的障害,行動面で重度な障害を有する広汎性の発達障害であること。(2)前頭葉機能としてのワーキングメモリーにおける問題が大きいこと。(3)泳ぎの運動を持続的に行えるためには,呼吸法のアフォーダンスを誘発するポールくぐりの運動課題とシンクロ的泳ぎを併用して行うことが重要であること。