著者
秋山 光浩 松浦 恵子 今津 嘉宏 及川 恵美子 首藤 健治 渡辺 賢治
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.17-28, 2011 (Released:2011-07-08)
参考文献数
14
被引用文献数
1

2015年に改訂される予定のICD—11に漢方医学を含む東アジア伝統医学を導入することが検討されている。このことがどのような意義があるのかを検証するために,ICDそのものの理解が必要である。本稿ではICDの歴史・意義・問題点につき整理し,何故伝統医学を入れるに至ったかの背景について述べる。ICDは,1900年から国際的に使用されている分類で,その内容も当初の死因のための分類から疾病分類の要素を加味し,さらに,保健サービスを盛り込むなど,社会の変化に対応した分類となっている。現在のわが国での活用も,死亡統計,疾病統計など各種統計調査にとどまらず,臨床研究等幅広いものとなり,今後さらにその利用範囲は拡大するものと考えられる。一方,ICD—10と医学用語の関係や臨床における疾病分類としての使い勝手など,様々な問題が山積している。また,実際に使用している国が先進国を中心に限定されており,人口の多い,アジア地域での統計が取れていない。2015年の大改訂(ICD—10からICD—11)では,紙ベースから電子データとするとともに,東アジア伝統医学分類を盛り込むことで,アジア地域へのICDの普及促進を図る。
著者
森 桂 及川 恵美子 阿部 幸喜 中山 佳保里
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.434-442, 2018-12-28 (Released:2019-02-16)
参考文献数
10

「疾病及び関連保健問題の国際統計分類:International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems(以下「ICD」と略)」とは,異なる国や地域から,異なる時点で集計された死亡や疾病のデータの体系的な記録,分析,解釈及び比較を行うため,世界保健機関憲章に基づき,世界保健機関(WHO)が作成した分類であり,WHO国際分類ファミリーにおける「中心分類」の一つである.ICDは1900年(明治33年)に国際会議で初めて採択され,当初は死亡統計の分類として使用されていたが,時代のニーズに応えて疾病統計等へ視野を拡大して改訂を重ねてきた.我が国でも1900年からICDを採用し運用を行っており,現在では,ICD-10(2013年版)に準拠した「疾病,傷害及び死因の統計分類」を作成し,統計法に基づく統計基準として告示改正を行い,2016年より人口動態統計や患者調査等の公的統計に使用しているほか,医療機関における診療録の管理等に活用されている.厚生労働省では有識者による審議会を設置して,ICDの国内適用や専門分野の議論を行うとともに,国立保健医療科学院,日本病院会日本診療情報管理学会, 日本東洋医学サミット会議等とともに 8 機関で構成されるWHO国際統計分類協力センターとして指定を受け,多くの専門家とともにWHO関連会議に参加してきた.こうした中,ICD-10改訂から約30年経ち,時代が要請する様々なニーズに応えていくため,2007年からICD-11の開発が開始された.改訂作業には日本病院会による財政的支援とともに,多くの日本の医学の専門家,団体も積極的に議論に参加し,多大な貢献をしてきた.2016年に東京で開催されたICD-11改訂会議において加盟国レビュー用のICD-11案が公表,多くの診療情報管理士の協力も得ながらフィールドテストを進め,2018年 6 月のICD-11公表を迎えた.この公表を受けて,加盟国は自国の適用へ向けた準備を開始することを期待されており,2019年 5 月世界保健総会へ提出される予定となっている.世界的に高齢化が進み,特に我が国では多死社会を迎えようとする中,持続可能な保健医療システムを構築し,効果的な対応を図っていくことが重要である.そのために統計や情報基盤の整備と活用が一層求められており,ICDはその一助として役割を果たすことが期待されている.2018年 8 月審議会において,我が国におけるICD-11の公的統計への適用に向けた本格的な議論を開始したところであり,今後,速やかな適用に向けて,法制度上の取り扱いや利用環境等,関係者と連携しながら具体的な検証や整備を進める予定である.