著者
古川 敏明 ハウザー エリック 大野 光子
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.197-212, 2023-09-30 (Released:2023-10-31)
参考文献数
14

日本の保育所は共感の社会化を主要な目的とし,従来に比べ,保育士が子どもたちの間で生じた揉め事に介入するようになったと指摘されている.本稿は東京都区部にある保育所の2歳児クラスを対象として,大人と子ども間の相互行為をマルチモーダルに会話分析する.特に,遊びの最中に生じた子ども間の揉め事に養育者が介入する場面において,2人の養育者が発話と身体資源を用いて「行なっていること」にどのような核心的相違があるかを記述する.また,養育者たちの発話や身体資源をモラル性の社会化におけるどのような志向の違いとして記述できるかも探究する.養育者が子どもを自らの行為に責任を負う主体として扱う発話を行ない,かつ,視線,身体の配置,道具の使用を含むマルチモーダルな働きかけを行った介入では,子どもから望ましい応答を引き出し,モラル性の社会化が達成されている.
著者
古川 敏明 土肥 麻衣子
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は危機言語の再活性化運動の成功例として論じられてきたハワイ語研究に相互行為の視座を導入することである。ハワイ語あるいは英語中心に展開する多言語会話を対象にして、会話の参加者が何を成し遂げたか分析した。その結果、分析者の視点からすると、複数の言語の要素を含んでいるように思われる発話行為であっても、会話の参加者は言語要素の切り替えに毎回、意味づけを与えるわけではなかった。つまり、主にハワイ語に帰属する資源を用いて話し続けて英語の要素を織り交ぜることも、その逆も、混淆した言語実践であり、参加者の視点からするとどちらも「ハワイ語する」ことであると結論づけられる。