著者
古川 謙介
出版者
九州大学
巻号頁・発行日
1973

博士論文
著者
古川 謙介 後藤 正利
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

偏性嫌気性細菌Desulfitobacterium sp.Y51株はテトラクロロエチレン(PCE)を最終電子受容体として強力に脱塩素化してトリクロロエチレン(TCE)を経てcis-ジクロロエチレン(cis-DCE)を生成する。この反応はエネルギー生成系が共役しておりハロゲン呼吸と称される。本課題では以下の研究を行った。1.Y51株のPCEデハロゲナーゼ酵素を精製、抗体を取得した。ついで本酵素がペリプラズムに局在することを明らかにした。2.PCEデハロゲナーゼ酵素はPCE及びTCEの添加により転写レベルで高度に誘導された。一方、cis-DCE添加により転写が阻害されるばかりでなく酵素反応も阻害された。3.PCEデハロゲナーゼ遺伝子(pceA/pceB)近傍の遺伝子をクローン化した。その中に本遺伝子クラスターの転写制御遺伝子と考えられるpceRが存在した。pceR遺伝子はPCE/TCEと結合してpceAB遺伝子の転写を促進すると考えられる。4.cis-DCEによる転写阻害に関しては、市販のcis-DCE中に不純物質として存在する著量のクロロフォルムが関与していた。1μMの極低濃度のクロロフォルムを添加して培養するとpceAB遺伝子を含む約6.6-kbDNAが高頻度(80%以上)に欠失した。また、クロロフォルムはY51株野生株の生育を著しく阻害するが、欠失株の生育を阻害しなかった。5.上記の研究と並行してPCEを完全にエチレンまで脱塩素化する微生物コンソーシアを取得した。このコンソーシア中にはDehalococcoides属細菌の存在が認められた。
著者
古川 謙介 後藤 正利
出版者
別府大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は環境汚染物質である揮発性高塩素化合物を高度に脱塩素化する偏性嫌気性細菌についてその脱ハロゲン呼吸のメカニズムを解明するため、基礎・基盤研究を行った。我々が先に分離したDesulfitobacterium hafniense Y51株はテトラクロロエテン(PCE)を最終電子受容体としてcis-1,2-ジクロロエテン(cis-DCE)へと脱塩素化して生育する。本研究ではまず、Y51株から脱塩素化に関与するpceABCT遺伝子をクローン化した。このpce遺伝子群は二つの相同な挿入配列で挟まれ複合トランスポゾンとして機能することを明らかにした。PceAは脱塩素化酵素、PceBは膜結合タンパク質であること、また、機能不明であったpceTの産物(PceT)はPceAに特異的に働く分子シャペロンであることが判明した。すなわちPceTはTat輸送を受ける前のPceA前駆体と特異的に結合することが免疫沈降実験により明らかとなった。次にY51株を最小液体培地に接種し、1μMのクロロフォルム(CF)を添加して培養すると生育阻害が起こりlag期が長くなる、また、pce遺伝子クラスターを欠失したLD株が高頻度に出現することを明らかにした。これらの結果とさらなる生化学的・分子生物学的解析からCFは還元的脱ハロゲン酵素であるPceAの補欠分子族であるコリノイドと結合してフマル酸呼吸の電子伝達系を阻害することが明らかとなり、そのモデルを提唱した。偏性嫌気性細菌による脱ハロゲン呼吸の分子機構はまだ、未知なところが多い。今後はこの重要な脱ハロゲン呼吸細菌類における宿主ベクター系の開発、及び脱ハロゲン呼吸に関与する遺伝子の異種発現系の開発が重要である。