著者
谷内 一彦 渡邉 建彦 古本 祥三 櫻井 映子
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

神経創薬に応用可能な神経イメージング基盤技術の萌芽的開発のために以下の研究を実施した。1)神経変性疾患に蓄積する異常蛋白質であるアミロイドβ、αシタクレイン、プリオンに結合する低分子標識化合物[^<11>C]BF-227を用いてPET分子イメージング法の臨床研究を行なった。アルツハイマー病(Aβ)、プリオン病(プリオン)、多系統萎縮症(Multiple System Atrophy)(αシヌクレイン)、パーキンソン病(αシヌクレイン)において、[^<11>C]BF-227の脳内での結合量が増加することが明らかになった。[^<11>C]BF-227はタウ蛋白には結合しないが、アミロイドAβ、プリオン、αシヌクレインへの結合特性を持っていることが基礎および臨床研究から明らかになり、神経変性疾患の超早期診断や鑑別診断に有用である。またタウ蛋白に結合特性があるTHK523をポジトロン(^<18>F)で標識して基礎研究を行い、インビトロ、インビボにおいてタウ蛋白に特異的結合することを見出した。さらに小動物用PETを用いて評価し、タウトランスジェニックマウスでのタウ蛋白の分子イメージングに成功した。2)ヒト脳内における薬物の脳内移行性について、鎮静性抗ヒスタミン薬を例にPET分子イメージングで研究した。前日の夜に鎮静性抗ヒスタミン薬ジフェンヒドラミン50mgを服用した場合に、12時間後の翌日までヒスタミンH1受容体を50%近く占拠することを明らかにし、翌日残存効果(hangover)のイメージングに初めて成功した。さらに鎮静性抗ヒスタミン薬であるケトチフェン含有点眼薬による鎮静作用の発生予測のために、点眼後に脳内H1受容体占拠率測定を行い、点眼により鎮静性抗ヒスタミン薬は脳内に移行することが明らかになった。PET分子イメージングを用いることにより組織移行性をヒトにおいて調べることが可能である。
著者
寺川 貴樹 石井 慶造 古本 祥三 菊池 洋平 松山 成男 酒見 泰寛 山崎 浩道
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

陽子線治療と腫瘍血流遮断剤を併用する新規治療法の開発を目的とし,マウス固形腫瘍による治療実験を実施した.本研究の高精度照射のために、マイクロパターンガス検出器による新規ビームモニターの開発に成功し治療実験に用いた。治療効果を[18F]FDGと[18F]FMISOを用いた超高分解能PETと、腫瘍増殖遅延測定から評価した。その結果、単回併用治療において、腫瘍増殖遅延に相加的効果があるだけでなく、腫瘍中心部の広範囲に細胞死が誘発されたが、腫瘍の辺縁部に低酸素状態を含む腫瘍細胞の生存領域が認められた。よって、単回治療後の2回目の併用治療が腫瘍細胞を完全に死滅されるために必要であることが示唆された。