著者
古永 真一
出版者
Waseda University
巻号頁・発行日
2002

制度:新 ; 文部省報告番号:甲1676号 ; 学位の種類:博士(文学) ; 授与年月日:2002/9/26 ; 早大学位記番号:新3427
著者
古永 真一
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本申請研究では、これまでの申請者の研究成果をふまえつつ、バンド・デシネがフランス語圏においてどのように研究されてきたのかという問題について、記号論やナラトロジー、映画学、精神分析、社会学、さらにはアダプテーションやホロコーストといった重要なテーマによるバンド・デシネ研究を調査してその要諦を明らかにし、バンド・デシネ理論の多様な変遷を再構成することによって、マンガ研究やフランス文学研究におけるバンド・デシネ研究の意義を明らかにすべく調査を行った。具体的には、「ホロコーストとマンガ表現」、「バンド・デシネとアダプテーション」と題した二本の論文を執筆して発表した。
著者
古永 真一
出版者
早稲田大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

バンドデシネ(フランス語圏のマンガ)が第九の芸術としてフランスで認知される過程においては、マンガ固有の表現や芸術性をアピールする必要があった。1960年代からフランソワ・ラカサンはバンドデシネ・クラブを結成し、バンドデシネの研究書を公刊するなどその認知に努めた。ラカサンはバンドデシネを「省略の美学」と位置づけ、コマとコマが織りなすシークエンスの描き出す省略的な表現を価値づけるために、映画や美術、アメリカのコミックスなどさまざまな資料に依拠しながら、バンドデシネのもつナラトロジーの可能性を説き続けた。今回の研究では、ラカサンだけでなくバンドデシネ・クラブには、アラン・レネのような映画監督や社会学の研究者エヴリン・シュルロや編集者ジャン=ジャック・ポーヴェールなど多士済々の面々が集結し、注目すべき活動や批評眼をもっていたことに着目した(この点については拙稿「1960年代フランスのマンガ文化--第九芸術への道」、『美術フォーラム21 2011年第24号特集:漫画とマンガ、そして芸術』を参照)。他方、ブノワ・ペータースとフランソワ・スクイテンの代表作『闇の国々』は、バンドデシネとナラトロジーの関係性を考えるうえで大変興味深い作品である。というのもこのSFマンガにはジュール・ヴェルヌや彼の小説に登場するキャラクターが登場し、映画や絵画への目配せに濫れた遊戯性を遺憾なく発揮した作品だからである。テクスト相関性という観点からしても、『闇の国々』はマンガ表現が融通無碍なナラトロジーを発揮しうる媒体であることを見事に証明している。今回私はこの作品の翻訳をBD研究家原正人氏と共に出版するにあたり、原作者ブノワ・ペータースに直にインタビューする機会を得た。日仏のマンガ文化やこれからの書物のありかたなどを考えるうえで貴重な機会となり、今回の研究を実施するにあたっても大きな刺激となった。
著者
古永 真一
出版者
早稲田大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

日本の「マンガ」はフランスで盛んに読まれているが、日本ではバンドデシネ(フランス語圏マンガ)は紹介が進んでいない。そこでBDの重要作品を選び出し、背景や影響関係を調査し、その意義と魅力を伝えることが本研究の目的となった。まず五月に来日したBDの巨匠メビウスが京都で行った講演を聴講し、「ユリイカメビウス特集号』(2009年7月)に論考「『インサイド・メビウス』は自伝なのか」、メビウスのインタビューとBD研究家ヌマ・サドゥールのエッセイの翻訳、「メビウス/ジャン・ジロー--主要作品解題」(原正人氏との共著)を寄稿した。六月には「大学でマンガ?!--研究発表とシンポジウム、第三部何を学び、何を見るか」と題されたマンガ学会主催によるマンガ学に関するシンポジウム(東京工芸大学)にコメンテーターとして参加し、首都大学東京で行った「バンドデシネ比較文化論」を題材にとり、日本における海外マンガの受容について発言した。同月には早稲田大学文学部主催によるシンポジウム「BDとは何か」において「文学/BD/美術」と題する発表を行い、文学的なBDやヴィジュアル・アート的なBDを紹介した。文学的BDとは実験的な文学作品を探究した「ウリポ」(潜在文学工房)の流れをくむウバポ(潜在マンガ工房)の活動にみられる、形式にこだわった図像遊戯的な作品である。ヴィジュアル・アート的なBDとは、フレモクと呼ばれる出版社が中心となって起こった従来のマンガの枠を越えた前衛的な作品を指している。このときの発表と討論をもとに推敲を施した論文「文学/BD/美術」を早稲田大学部フランス文学専修が発行する雑誌『Etudes francaises』第17号に発表した。