著者
工藤 朋子 古瀬 みどり
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.128-136, 2016 (Released:2016-04-21)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

【目的】訪問看護ステーションにおける遺族ケアの実施状況と今後の課題を明らかにする.【方法】全国の訪問看護事業所1,000件を対象に質問紙郵送調査を行った.【結果】有効回答296件(29.8%),遺族ケアは,積極的に実施6.1%,必要時実施73.1%,ほとんど行っていない20.7%だった.自宅訪問は91.4%が実施,常に行っているケアは,ねぎらいの言葉が73.6%と最も多かった.関係機関へ連絡している事業所は32.4%で,認知症を抱え独居となる遺族の見守りなどを依頼していた.連絡していない理由は,どのような場合に連絡するかわからない17.5%だった.【結論】約9割が自宅訪問を実施していたが,情緒的サポートが主だった.訪問看護師には,介護保険以外に利用できる保健福祉サービスなど,生活の立て直しを図る情報を遺族に提供し,継続的な関わりを要する遺族を早期に見極め,関係機関へ引き継ぐ力が求められる.
著者
布川 真記 古瀬 みどり
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.2_93-2_100, 2009

本研究の目的は,外来化学療法中のがん患者が,どのようにセルフケア行動を行い治療を継続しているのかを明らかにすることである。研究対象者は,外来化学療法を行っているstageⅢの消化器がん患者11名である。半構成的面接法による調査を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにて分析した。患者がセルフケア行動を取り治療を継続する過程には,治療に伴う身体変化の自覚,セルフケア行動,健康を判断できる条件,支援者,治療に対する満足感と"家族を守るために長生きしたい"があった。患者が取るセルフケア行動には,体重を自己管理の目安にする,日常生活の規則化,日常生活と治療の折り合いをつける,医師との有効な治療関係の維持があった。患者は,セルフケア行動を行うことによって自分自身の健康が判断できており,満足感を得ていた。そして,治療に対する満足感は,患者のセルフケア行動を後押ししていた。外来化学療法患者がセルフケア行動を取り治療を継続できるよう支援するためには,患者自身が健康を判断できるような指導と治療に対する満足感を高められるような外来サービスの提供が必要であると示唆された。
著者
鈴木 慈子 古瀬 みどり
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.79-87, 2023 (Released:2023-03-29)
参考文献数
38

【目的】看護師の患者・家族とのコミュニケーションにおける曖昧さへの態度および感情対処傾向と終末期ケアへの態度との関連を明らかにする.【方法】一般病棟勤務の実務経験3年以上の看護師を対象にWEBによる自記式アンケート調査を行った.【結果】239名を分析対象とした.看護師の曖昧さへの態度得点は〈曖昧さへの統制〉〈曖昧さへの享受〉が高く,感情対処傾向は〈両感情調整対処〉が最も高かった.〈死にゆく患者へのケアの前向きさ〉と最も関連がみとめられたのは〈曖昧さへの享受〉であり,〈患者・家族を中心とするケアの認識〉と最も関連がみとめられたのは〈両感情調整対処〉だった.【結論】一般病棟に勤務する看護師の終末期ケアへの態度を高めるには,患者・家族とのコミュニケーションにおける曖昧さを肯定的にとらえ関与する態度を育み,また患者と自己の両方の感情にバランスよく対処する力を育むことの必要性が示唆された.
著者
工藤 朋子 古瀬 みどり
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.287-294, 2018 (Released:2018-09-10)
参考文献数
19

【目的】死別後支援が必要な家族介護者を訪問看護師が予測する要因を抽出する.【方法】訪問看護師が,終末期利用者の家族介護者105人に,自作の質問紙を基に死別後支援を予測する要因の調査(死別前),死別後支援の必要性を判断する調査(死別後)を行った.そのうち同意を得た死別後の家族介護者30人に,研究者が聞き取り調査(うつ病自己評価尺度CES-D,健康関連QOL尺度SF-8TM)を行い.数量化2類により分析した.【結果】治療中の疾患あり,医療への不満あり,経済的負担あり,後期高齢夫婦世帯,同居家族は介護を任せがち,頼れる別居家族・親戚がいない,周囲の助けを遠慮する傾向,が抽出された(判別的中率76.7%,相関比0.42,P=0.001).訪問看護師による判断は,基準関連妥当性が検証された.【結論】これら7項目は,死別後支援が必要な家族介護者を見極めるための重要な要因である可能性が示された.