著者
岸本 直之 古田 世子 藤原 直樹 井上 栄壮 馬場 大哉 武井 直子
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.69-75, 2023 (Released:2023-05-10)
参考文献数
29

マシジミ (Corbicula leana) と推定される琵琶湖産淡水シジミのろ水速度および呼吸速度の水温, 溶存酸素 (DO) 濃度依存性を実験や文献調査を通して明らかにし, その生育可能条件を評価した。殻長14.9 ± 1.2 mmの成貝を用いた実験の結果, ろ水速度は水温およびDO濃度に依存した。水温影響は高温阻害を有する指数型影響関数で表現でき, 至適水温は20.8 ℃であった。ろ水速度が低下し始める限界DO濃度は2.6~4.0 mg L-1の範囲にあった。琵琶湖南湖湖底直上における平均餌濃度を3 mg-C L-1と仮定した場合, DO濃度 ≥ 4 mg L-1の条件で成長可能な温度域は12.1~26.6 ℃と評価された。湖沼温暖化により水温が1 ℃上昇すると年間成長量は0.005~0.01 g-C y-1 個体-1低下すると推定され, 湖沼温暖化が琵琶湖におけるシジミの生育に負の影響を与えることが明らかとなった。
著者
古田 世子 吉田 美紀 岡本 高弘 若林 徹哉 一瀬 諭 青木 茂 河野 哲郎 宮島 利宏
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.433-441, 2007 (Released:2008-12-31)
参考文献数
27
被引用文献数
4 6

琵琶湖(北湖)の今津沖中央地点水深90 mの湖水検体から,通常Metallogeniumと呼ばれる微生物由来の特徴的な茶褐色のマンガン酸化物微粒子が2002年11月に初めて観測された。しかし,Metallogeniumの系統学的位置や生化学については未解明な部分が多く,また特に継続的な培養例についての報告はきわめて少ない。今回,Metallogeniumが発生した琵琶湖水を用いてMetallogeniumの培養を試みたところ,実験室内の条件下でMetallogenium様粒子を継続的に産生する培養系の確立に成功した。Metallogeniumを産生する培養系には,真菌が存在する場合と真菌が存在せず細菌のみの場合とがあった。実際の湖水中には真菌の現存量は非常に少ないため,細菌のみによるMetallogeniumの産生が湖水中での二価マンガンイオン(Mn2+)の酸化的沈殿に主要な役割を担っていると考えられる。真菌が存在する培養系では約2週間程度の培養によりMetallogeniumが産生された。しかし,細菌のみの培養系においては,Metallogeniumの産生に4週間から6週間を要した。本論文では特に細菌のみの培養系におけるMetallogeniumの発育過程での形態の変化を光学顕微鏡および走査電子顕微鏡を用いて継続観察した結果について報告する。