著者
岡太 彬訓 古谷野 亘
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.169-182, 1993-10-10 (Released:2009-03-31)
参考文献数
27
被引用文献数
1

パーソナルコンピューターと統計パッケージの普及に伴って、多変量解析法は、それ以前に比べると非常に利用し易くなった。その結果、社会・行動科学においても、これらの方法が手軽に利用できるようになり、多変量解析法を利用する機会は飛躍的に増加し、さまざまな研究の進歩をもたらした。しかし、これは、別の問題すなわち多変量解析法の不適切な利用をも同時にもたらした。多変量解析法の不適切な利用は、分析過程での誤りと分析以前の誤りに大別できる。分析過程での誤りが、パーソナルコンピューターと統計パッケージの普及によって、表面化したことは、否めないであろう。しかし、これらの不適切な利用には、パーソナルコンピューターと統計パッケージそのものとは無関係に、利用者に問題がある場合も少なくない。本稿では、パーソナルコンピューターと統計パッケージそのものとは無関係に生じる、分析過程での問題に焦点を合わせる。そして、多変量解析法(重回帰分析法、因子分析法、多次元尺度構成法、および、クラスター分析法)について、それらの不適切な利用の典型的な例を挙げる。最後に、統計的手法を含む計量的手法の不適切な利用の原因を論じ、これらの原因の根本にある問題点を考察し、その解決のための方策を提案する。