著者
八板 静香 野口 亮 蒲原 啓司 柚木 純二 諸隈 宏之 古賀 秀剛 田中 厚寿 古川 浩二郎 森田 茂樹
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.277-280, 2016-11-15 (Released:2016-12-10)
参考文献数
10

中枢性尿崩症(central diabetes insipidus : CDI)は下垂体後葉からの抗利尿ホルモン(ADH)の分泌が消失あるいは減少することにより尿量増加をきたす疾患である.一般的にCDIに対しては抗利尿ホルモン(ADH)補充により治療を行うが,手術侵襲により体液量や電解質などが変動する周術期のCDI患者の管理法に関しては報告も少なく確立したものはない.今回,われわれはCDIを合併した弁膜症の手術症例を経験したので報告する.症例は下垂体腫瘍の摘出術後に続発性のCDIを発症していた72歳の女性で,大動脈弁置換術と僧帽弁形成術が施行された.CDIに関しては酢酸デスモプレシン内服で術前の尿崩症のコントロールは良好であった.術直後よりバソプレシンの持続静注を開始し術翌日よりバゾプレシンの内服を再開したが術後3日目頃より急激な尿量増加をきたした.バソプレシンの静注から皮下注射に切り替え,尿量に応じたスライディングスケールで投与量を決めてコントロールを図った.経過中,バゾプレシン過剰による水中毒を認めたが,日々の尿量と電解質バランスを注意深く観察しつつスライディングスケールに従ってバゾプレシンを漸減することで酢酸デスモプレシン内服へ切り替ることができた.尿量に応じたバゾプレシン皮下注のスライディングスケールは開心術後のCDIのコントロールに有効であった.
著者
伊藤 学 古川 浩二郎 岡崎 幸生 大坪 諭 村山 順一 古賀 秀剛 伊藤 翼
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.132-135, 2006-05-15 (Released:2009-08-21)
参考文献数
6

鈍的外傷による心破裂の救命率は低い.救命率の向上のためには診断,治療方針を明確にする必要がある.われわれは鈍的外傷による心破裂例8例を経験した.来院時,全例経胸壁心エコーにより心嚢液貯留を認め,心タンポナーデの状態であった.受傷から来院までの平均時間は186±185分,来院から手術室搬入までの平均時間は82±49分.術前に心嚢ドレナージを行ったのは2例,経皮的心肺補助装置を使用したのは2例であった.破裂部位は,右房3例,右房-下大静脈1例,右室2例,左房1例,左室1例であった.4例に体外循環を用い損傷部位を修復した.8例中6例を救命することができた(救命率75%).診断において経胸壁心エコーが簡便かつ有効であった.多発外傷例が多いが,心タンポナーデによるショック状態を呈している場合,早急に手術室へ搬送すべきである.手術までの循環維持が重要であり,心嚢ドレナージ,PCPSが有効である.