著者
柚木 純二 藤井 進 森田 茂樹 野出 孝一
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

近年新たな低侵襲手術が登場し、適応や費用対効果が問題になっている。日本のビッグデータによる解析が必要と考え、DPCデータに着目した。データ抽出のプロトコールを作成すれば、全国データでの解析が可能であると考え、大動脈弁狭窄症(AS)に対する従来手術(AVR)と新たな低侵襲手術、経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)を抽出するプロトコールを作成した。AVRは95.0%、TAVIは100%検出できた。当院のDPCデータでは在院死亡に差はなく在院日数はTAVIが有意に短かった。また全入院費はTAVIが有意に高く、薬剤はAVRが材料はTAVIが有意に高かった。 全国DPCデータでの解析につなげたい。
著者
中村 禎子 森田 茂樹 奥 恒行 田辺 賢一 大曲 勝久 中山 敏幸
出版者
十文字学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

加齢に伴い生理機能や認知機能障害が発症し、その要因の1つに酸化ストレスの影響が考えられる。水素ガスは抗酸化作用を示す物質である。難消化性糖質を経口摂取すると腸内細菌がこれを代謝して水素ガスが産生され、ガスは血流を介して肝臓および末梢組織へ運搬される。申請者らは、難消化性糖質経口摂取による腸内細菌由来内因性水素ガスの抗酸化作用を介して、疾病の発症あるいは重症化が遅延するという仮説を立て、これを検証した。その結果、過剰鉄による肝障害モデル動物および老化促進モデル動物において、難消化性糖質経口摂取による発症遅延ならびに重症化遅延が観察され、その要因として腸内細菌由来水素ガスの関連性が示唆された。
著者
森田 茂樹 瀬戸 牧子 原 恵子 井手 芳彦 石丸 忠彦 和泉 元衛 辻畑 光宏 長瀧 重信
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.458-461, 1983-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
20
被引用文献数
4 4

民間療法として大量の飲水と水浣腸を行ない,急性水中毒症の発症をみた健康成人例を経験した.症例は25才,男性.昭和54年より健康増進を信じて大量飲水と水浣腸を始あた.昭和55年5月27日大量発汗後約30分で2lの飲水と81の水浣腸を行ない,四肢のこわばり感等出現したのち呼名反応なくなつたため当科入院となつた.入院時血清Na l24mEq/lと低Na血症を呈していた.また入院前24時間以上水分摂取がなかつたにもかかわらず, Na濃度6mEq/lと低浸透圧尿の多量排泄(1日量5300m1)がみられた.この利尿に伴つて血清Na濃度は改善し意識が回復した.以上より急性水中毒症と診断した.急性水中毒症は何らかの基礎疾患を有する例にみられやすく,その成因は細胞外液の急激な低浸透圧化のために水分が細胞内に移動し,脳浮腫をきたすためとされている.本例では発症後水分制限がなされたこと,高張ブドウ糖・Na製剤輸液を使用したことに加えて,急激な利尿により細胞外液の浸透圧改善が得られ救命し得たと思われる.なお第3病日に行なつた腰椎穿刺では, Na濃度97mEq/l, Cl濃度82mEq/l,総蛋白量12mg/dlと低浸透圧であつた.血清Na濃度の改善よりも脳細胞内および脳脊髄液の浸透圧改善は遅れると考えられる.入院時検査成績で総ビリルビン4.0mg/dl, CPK 1815mU/ml, LDH 507mU/ml, GOT 67mU/ml等の異常値を示していたが,水中毒症との関係については現在の所明らかではない.
著者
野村 竜也 古川 浩二郎 福田 倫史 平田 雄一郎 恩塚 龍士 田山 栄基 森田 茂樹
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.35-38, 2022

<p>急性大動脈解離に対するオープンステントグラフト(以下OSG)を併用した全弓部置換術後の脊髄障害は重篤な術後合併症の1つであり,わが国の多施設研究でその発生率は3.5%と報告されている.脊髄障害の原因には多くの要因があると考えられるが,その1つとして肋間動脈閉塞の関与が考えられる.症例は71歳女性.Stanford A型急性大動脈解離に対し弓部大動脈置換+OSG挿入術を施行した.術後より対麻痺を認め,脳脊髄液ドレナージ等を行ったが,改善を認めなかった.術前の造影CTで確認できた肋間動脈10対のうち7対が偽腔起始であり,術後に6対の肋間動脈が閉塞した.術前の造影CTで肋間動脈の多くが偽腔起始であり,かつリエントリー所見に乏しい症例においてOSGを使用した場合,術後偽腔閉塞に伴い肋間動脈が閉塞し,脊髄虚血のリスクが増大し得ると考えられる.</p>
著者
内山 光 古川 浩二郎 福田 倫史 平田 雄一郎 恩塚 龍士 田山 栄基 森田 茂樹
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.235-239, 2021

<p>冠動脈大動脈起始異常症は比較的稀な先天性冠動脈異常である.心筋虚血や心室性不整脈が問題となるが,初発症状が心停止である例が約半数との報告もある.しかし,かかる病態に対する手術適応や手術術式に関して不明な点も多い.今回,右冠動脈大動脈起始異常症に対して外科治療を行い良好な結果を得たので報告する.繰り返す胸部圧迫感を主訴とする47歳男性に精査を行ったところ,右冠動脈が左バルサルバ洞より分岐する右冠動脈大動脈起始異常症であった.血液検査,心電図,心臓カテーテル検査を含め客観的な心筋虚血所見を認めなかったものの,右冠動脈の比較的急峻な大動脈からの起始角度,両大血管間に挟まれた走行形態が胸部症状に関与している可能性と,突然死の可能性が否定できなかったため,手術の方針とした.手術は右冠動脈移植術を施行した.画像上良好な結果が得られ,術後一年の現在,胸部症状の再燃なく外来経過観察中である.</p>
著者
八板 静香 野口 亮 蒲原 啓司 柚木 純二 諸隈 宏之 古賀 秀剛 田中 厚寿 古川 浩二郎 森田 茂樹
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.277-280, 2016-11-15 (Released:2016-12-10)
参考文献数
10

中枢性尿崩症(central diabetes insipidus : CDI)は下垂体後葉からの抗利尿ホルモン(ADH)の分泌が消失あるいは減少することにより尿量増加をきたす疾患である.一般的にCDIに対しては抗利尿ホルモン(ADH)補充により治療を行うが,手術侵襲により体液量や電解質などが変動する周術期のCDI患者の管理法に関しては報告も少なく確立したものはない.今回,われわれはCDIを合併した弁膜症の手術症例を経験したので報告する.症例は下垂体腫瘍の摘出術後に続発性のCDIを発症していた72歳の女性で,大動脈弁置換術と僧帽弁形成術が施行された.CDIに関しては酢酸デスモプレシン内服で術前の尿崩症のコントロールは良好であった.術直後よりバソプレシンの持続静注を開始し術翌日よりバゾプレシンの内服を再開したが術後3日目頃より急激な尿量増加をきたした.バソプレシンの静注から皮下注射に切り替え,尿量に応じたスライディングスケールで投与量を決めてコントロールを図った.経過中,バゾプレシン過剰による水中毒を認めたが,日々の尿量と電解質バランスを注意深く観察しつつスライディングスケールに従ってバゾプレシンを漸減することで酢酸デスモプレシン内服へ切り替ることができた.尿量に応じたバゾプレシン皮下注のスライディングスケールは開心術後のCDIのコントロールに有効であった.
著者
柴崎 郁子 碓氷 章彦 森田 茂樹 横山 斉
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.1-11, 2020-01-15 (Released:2020-02-01)
参考文献数
8
被引用文献数
3

[目的]政府が働き方改革を推し進めるなか,医師も例外ではない.今回外科系のなかでも特に労働条件が過酷と言われる心臓血管外科領域での労働環境や処遇の現状について調査した.[方法]2018年12月に日本心臓血管外科学会は,心臓血管外科医の働き方改革,処遇改善に向けた基礎データーを得るため,心臓血管外科学会の会員メンバー3,701名にインターネットよるアンケート調査を実施した.[結果]634名の心臓血管外科医から回答を得た(回答率:17%,男性589名,女性38名).回答者は40~50歳代の中堅外科医が中心であった.主な勤務先での労働時間が平均週60時間以上と回答したのが473名(75.5%),週80時間以上の労働と回答したのが176名(28.2%)だった.また,勤務時間外・深夜・休日の呼び出しに対しての手当支給がないと回答したのは249名(40.4%)で,勤務時間外・深夜・休日の手術に対しての手当支給がないと回答したのは345名(56.6%)だった.[結語]心臓血管外科領域では,約75%以上が過剰労働をしており,労働に相応しい収入が得られていないことがわかった.働き方改革が進むなか,心臓血管外科医の労働環境改善は喫緊の課題である.学会を中心に国民の理解を得ながら処遇改善の取組みを進めることが求められている.
著者
森田 茂樹 富永 隆治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

成犬を用いた脳死状態誘導により、1.脳死誘導後に見られる血行動態の変化と左心機能障害の程度。2.脳死誘導後における心筋酸素消費量と冠動脈血流量の変化。3.in vivoにおける冠動脈内皮機能障害の有無。4.in vitroにおける冠動脈の内皮障害の有無。以上4点について検討した。1.に関して、脳死誘導直後に血行動態の急激な亢進および緩徐な低下が認められた。それに伴い左室機能は、脳死誘導60分後に有意な低下を認めた。また、カテコラミンが脳死誘導後に一過性に増加しており血行動態および心機能の変化にカテコラミンが大きく関与していると考えられた。2.に関して、心筋酸素消費量および冠血流量は、脳死直後に急激な増加を認め、その後緩徐に低下した。脳死誘導前と比較して、心筋酸素消費量の有意な低下は認めなかった。3.に関して、内皮依存性血管拡張薬であるアセチルコリンと非依存性のニトロプルシッドを冠動脈に直接投与する事によって、冠血流量の反応を検討した。脳死誘導後には、両薬剤に対する冠動脈の反応性の有意な低下を認めた。冠動脈予備能の低下が示唆された。4.に関して、内皮付き中膜条片を作成し、張力実験を行った。脳死誘導により、高カリウム脱分極と、トロンボキサンA2アナログによる収縮刺激にたいする反応の低下が認められた。ブラジキニンによる内皮依存性の弛緩反応は障害されなかった。以上の結果から、脳死誘導により心機能の低下が認められるが、その原因として冠動脈予備能の低下が考えられた。冠動脈予備能の低下をきたす因子として、脳死誘導によるカテコラミンの一過性放出などによる冠動脈、とくに平滑筋機能の障害が考えられた。