著者
米田 一裕 只野 亮 都築 政起
出版者
日本動物遺伝育種学会
雑誌
動物遺伝育種研究 (ISSN:13459961)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.5-11, 2010 (Released:2012-02-07)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

岡山県には、和牛の近代的育種が開始される以前の「蔓牛」に由来する系統を、他系統との交配を避けて維持してきた閉鎖集団が残されている。本研究ではこの希少系統の維持保存を目的として、その遺伝的特徴についてマイクロサテライトマーカーを用いて解析した。希少系統39個体および対照として他系統の個体および本希少系統と他系統との交雑個体計33個体について、23座位のマイクロサテライトマーカーの遺伝子型を決定した。その結果、希少系統では対立遺伝子数の平均値は3.22、有効対立遺伝子数の平均値は2.04、ヘテロ接合度の平均値は、実測値で0.4827、推測値で0.4599となり、いずれも対照群よりも低い値を示した。次に、希少系統の各個体を世代毎に分けて近交係数、ヘテロ接合度の平均値、1座位あたりの対立遺伝子数の平均値を算出したところ、世代が進むにしたがって近交係数は7.94から16.79に上昇するとともにヘテロ接合度は0.6273から0.4534に低下し、集団の遺伝的多様性が減少していることが示唆された。さらに各マーカーの遺伝子型をもとに72個体についてのクラスター解析および分子系統樹の作成を行ったところ、いずれの方法においても希少系統は対照群と遺伝的に明確に区別されること、希少系統内では家系に対応した大きく2つのグループに分かれることが明らかとなった。以上の結果は、今後の本希少系統の維持保存と、黒毛和種の育種への利用にあたって、有用な情報を提供するものと考えられた。
著者
米田 一裕 木下 こづえ 林 輝昭 伊藤 修 大峡 芽 奥田 和男 川上 茂久 谷口 敦 奥田 龍太 石川 達也 佐藤 梓 池辺 祐介 只野 亮 都築 政起 国枝 哲夫 楠 比呂志
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.133-141, 2010-05-25

動物園などでの飼育環境下にある動物の遺伝的多様性を維持することは重要な課題である.本研究では,イエネコのマイクロサテライトマーカーを用いて,飼育環境下の62個体のチーターの遺伝的多様性と血縁関係を解析することを試みた.チーターのDNAより17座位のマーカーの増幅を試みた結果,すべてのマーカーで増幅産物が認められ,そのうちの15座位はチーターにおいても多型性が確認された.これらの座位における平均の対立遺伝子数は4.65,ヘテロ接合度は0.6398,多型情報量は0.5932であり,本集団の遺伝的多様性は,野生のチーターの集団と比べて大きな違いは無かった.また,総合父権否定確率は0.999733であり,実際にこれらのマーカーを用いて正確な親子判別が可能であることが確認された.各マーカーの遺伝子型を基に62個体のクラスター解析および分子系統樹の作成を行ったところ,これらの個体は,いくつかの集団に分類され,各集団は基本的に家系と一致していた.以上の結果は,今後わが国のチーター集団の遺伝的多様性を維持する上で重要な知見であると考えられた.