- 著者
-
吉富 啓之
- 出版者
- 一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
- 雑誌
- 臨床リウマチ (ISSN:09148760)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.2, pp.149-153, 2010-06-30 (Released:2016-02-26)
- 参考文献数
- 18
炎症性サイトカインを標的とした生物学的製剤の登場により関節リウマチ治療は寛解も実現可能な時代へと突入した.一方で,HLA-DRやPTPN22の遺伝子変異が関節リウマチと関連があることから,病態にCD4陽性T細胞も関与すると考えられている.実際に,T細胞への副刺激を阻害するAbataceptは臨床的に関節リウマチへ有効である.しかし,CD4陽性T細胞がどのように関節リウマチの病態に関与するのかについては明らかでない点が多い.CD4陽性細胞の分画には従来Th1細胞とTh2細胞が知られていたが,近年IL-17を産生するTh17細胞の存在が明らかとなっている.マウスモデルではTh17細胞が自己免疫疾患に重要な役割を果すことが明らかとなっており,Th17細胞はケモカイン受容体であるCCR6を特異的に発現しそのリガンドであるCCL20依存的に関節に遊走する.さらにヒトの場合でも,線維芽細胞様滑膜細胞をIL-1βで刺激するとCCL20依存的にTh17細胞を含むCCR6陽性細胞を引き寄せることが示されている.また,CCL20はIL-17とともにIL-6の産生に関与する.一方で,ヒト関節リウマチの末梢血および関節液でTh17細胞の増加は認められずむしろ低下しており,ヒトの関節リウマチにCD4陽性細胞が関与する機序についてさらなる解析が求められる.