著者
吉富 啓之 戸口田 淳也 金 永輝 河本 宏 増田 喬子
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究ではHLA B27陽性の強直性脊椎炎患者3名からのiPS細胞の樹立に成功した。さらにHLA B27の病的意義を解析するため、CRISPR-Cas9を用いて遺伝子編集を行い、2例の疾患特異的iPS細胞からHLA B27の発現を欠くiPS細胞の樹立に成功した。現在HLA B27が骨・軟骨分化維持機構を修飾する機構について投稿準備中である。さらにT細胞が慢性炎症病態に及ぼす影響を解析し、血清反応陰性関節炎の対照疾患としての血清反応陽性関節炎である関節リウマチ検体においてCD4陽性T細胞からCXCL13産生を誘導する新たな転写因子としてSox4が病態に関わることを示した。
著者
河本 宏 増田 喬子
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.505-515, 2017 (Released:2018-02-14)
参考文献数
27

HLA haplotype-homozygous (HLA-homo) induced pluripotent stem cells (iPSCs) are being prepared as a national initiative referred to as the “iPSC Stock Project”, to be used for allogeneic transplantation of regenerated tissue into recipients carrying an identical haplotype in one of the alleles (HLA-hetero). In this article, we address the issue whether NK cells play any roles in graft rejection in this homo-to-hetero transplantation setting, and show our recent finding that NK cells from an HLA-hetero person can kill the cells regenerated from HLA-homo iPSCs when the KIR-ligand is mismatched, by the mechanism of missing-self response. Such cytotoxicity was cancelled when target cells were regenerated from iPSCs transduced with the “missing” HLA gene, providing the basis for an approach to prevent such NK cell-mediated rejection responses. We further discuss the frequency of KIR-ligand mismatch cases occurring in the iPSC Stock Project.
著者
前田 卓也 増田 喬子 河本 宏
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.1066-1073, 2016

<p>がんに対する免疫療法,特にがん抗原特異的T細胞療法は現在大変注目されている。しかし,がん抗原特異的T細胞を充分量までの増幅することは技術的に困難であるという大きな問題が残されている。筆者らはiPS細胞技術を応用してこの問題を解決しようとしている。がん抗原特異的T細胞からiPS細胞を樹立し,そのiPS細胞をT細胞に再分化させれば,同じTCRを発現するT細胞を多量に得ることができる。筆者らはこの方法を用いて,がん抗原特異的なT細胞の再生に成功した。再生T細胞は元のT細胞に匹敵する抗原特異的キラー活性を示し,白血病細胞を殺傷した。将来的には様々ながん抗原特異的T-iPS細胞をHLAハプロタイプホモドナーから樹立し,バンク化することを構想しており,臨床応用を目指している。</p>
著者
河本 宏昭 土田 真史 手登根 勇人 具志堅 益一 西島 功 松本 裕文
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.177-182, 2019

<p>症例は35歳男性.突然発症の右前胸部痛を主訴に来院した.放射線検査では胸腺囊胞内の出血と考えられたが,縦隔内の出血はわずかで胸腔内穿破はなくバイタルサインは安定しており,胸痛はすぐに消失したため緊急手術は行わず経過観察とした.しかし数ヵ月で囊胞は増大傾向を認め,また腫瘍合併を否定できないため発症後6ヵ月後に胸骨正中切開にて胸腺全摘術を行った.腫瘤周囲は癒着が高度で右縦隔胸膜は合併切除を要した.病理学的検索では腫瘍性病変は認めず,出血を伴った胸腺囊胞であった.成人における胸腺囊胞は経過観察の対象となることが多いが,本症のように出血やそれに伴う炎症を合併する場合や,腫瘍の合併が鑑別に挙がる症例では積極的な手術が必要と思われる.</p>
著者
河本 宏 桂 義元
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.584-591, 2012-08-01 (Released:2013-08-01)
参考文献数
29

血液細胞や免疫細胞は,細胞分化の研究材料として久しく用いられてきた.にもかかわらず,本質的な問題,すなわち「どのような系列決定を経てつくられるか」という事象に,長い間手が付けられていなかった.最近,ようやく真の姿が浮かび上がってきた.それは,多くの教科書に描かれている仮想的なモデルとは異なるものであった.