著者
吉岡 聖美
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.3_31-3_38, 2012 (Released:2012-11-30)
参考文献数
22

本論文では,病院に展示されたホスピタルアートに対する患者の鑑賞行動および印象の評価を調査することによって,ホスピタルアートの有効性を確認することを目的とする。方法は,病院の外来待合および連絡通路のホスピタルアートについて,患者の鑑賞行動と快・不快の印象についての評価,および,通院期間,通院頻度,当日の経過時間,平均的な病院滞在時間について外来患者から回答を求めて分析を行った。外来待合では,待ち時間が長い患者ほど,通院に対するホスピタルアートの鑑賞頻度が大きく,意識的に見て,快さが大きいことが示された。また,連絡通路では,通院期間が長い患者ほど,通院に対するホスピタルアートの観賞頻度が大きく,意識的に見て,快さが大きいことが示された。これにより,病院に展示するために制作されたホスピタルアートについての有効性が示された。
著者
吉岡 聖美
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会第70回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.38, 2023 (Released:2023-12-13)

嚥下訓練に含まれる口・頬の運動と発声とを,口腔顔面運動による後出し顔ジャンケンに取り入れた「顔ジャンケン」プログラムを考案した。タブレット端末やPCを用いて,手軽に,嚥下機能および認知機能の維持向上に働きかけるリハビリテーションプログラムを実行することができる。更に,気分が改善する心理的効果が期待できるプログラムを開発するために,表情の異なる「顔ジャンケン」プログラムを実施した際の心理評価について調査したところ,「チョキ」の表情で舌を出すプログラムよりも,「チョキ」の表情で口を左右に伸ばし口角を上げて笑った顔になるプログラムが有効であると考えられる結果が得られた。
著者
坂本 舞 吉岡 聖美
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第68回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.306, 2021 (Released:2022-02-23)

音楽聴取の媒体が多様化し,手軽に音楽を聴くことができるようになっている一方で,音楽を長期間繰り返し聴いて楽しむことが少なくなっている。本研究では,音楽の聴き方に関するアンケート調査を実施し,音楽を聴いたときの気持ちがお気に入りになることに関係していると考えられる結果が得られた。そこで,音楽を聴いたときの気持ちを5種類のスタンプで記録することができるアプリ「Music Feelings Log」を提案する。曲を知った経緯や好きな理由などを書き込めるコメント機能も備えている。気持ちを記録して可視化することによって,音楽に対する愛着に繋がる可能性があると考える。
著者
久保 倫太郎 吉岡 聖美 蓮見 孝 五十嵐 浩也
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

この活動は、病院の環境をより快適にするためのアート展示とワークショップである。 患者、病院スタッフ、患者の家族、ボランティアの人々が参加できるワークショップを開催した。ワークショップの参加者は葉っぱを模ったオブジェとメッセージカードを制作した。我々学生スタッフは、それらの作品を展示に付け加えた。それはまるで森が成長するように見える。そして、病院の中に森をイメージした展示を造り出した。 この活動は、病院の療養環境を改善し、患者のQOLを向上させることができると考えられる。
著者
吉岡 聖美
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1_11-1_18, 2017-07-31 (Released:2017-09-20)
参考文献数
12

簡易な形の目口のパーツによって構成される笑った顔および怒った顔のアイコンを鑑賞・配置・描画する,という異なる創造タスクを実施する際の生理心理評価および表情変化について調査した。その結果,絵を見るのが好き,絵を描いたり落書きを描くことがある,絵や落書きを描くのが好き,と回答した実験協力者は,笑った顔のアイコンを描画することによって自身の表情も同調的に反応して表情が変化し,気分が良くなったと感じている結果が得られた。絵画や描画に対する嗜好や馴染みが生理心理評価および表情変化に影響すると考えることができる。一方,目口のパーツを配置して顔アイコンを作成する中程度の創造タスクの課題では,平均血圧の変動量がプラスに大きく,わくわく度が増し,絵画や描画に対する嗜好や馴染みに関わらず課題に能動的に取り組んだことが示唆される結果が得られた。
著者
吉岡 聖美
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.5_43-5_48, 2017-01-31 (Released:2017-03-10)
参考文献数
8

本研究では,簡易な形の目口のパーツによって構成される顔アイコンを描画することによる気分の変化を調査する。加えて,描画した目口のパーツの形を分類し,気分の変化に関係する顔アイコンの特徴を調査することを目的とする。笑顔のアイコンを描画することによって,POMS短縮版における「緊張-不安」「抑うつ-落ち込み」「怒り-敵意」「疲労」が低下して気分が改善することが示された。描画した笑顔のアイコンは,目頭と目尻を下げて弧を描く形の目のパーツと,口角を上げて弧を描く形の口のパーツが多くを占めることが示され,心理的効果が期待できる笑顔のアイコンであるスマイルアイコンの特徴を確認した。一方,怒った顔のアイコンを描画することによって,「活気」が低下して,「怒り-敵意」は上昇し,気分が悪化することが示された。また,笑顔のアイコンは口のパーツの形によって表情が表される傾向にあり,怒った顔のアイコンは目のパーツの形によって表情が表される傾向にあることを確認した。
著者
吉岡 聖美
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.39-46, 2010-07-31
被引用文献数
1

本論文では,抽象絵画における直線表現要素の違いと印象評価の関係を検証し,併せて,病院空間に展示された場合の印象評価について比較検証することを目的とする。方法は,直線表現の異なる抽象絵画を用いた画像を鑑賞し,得られた印象評価の評定値について分析を行った。これにより,傾きのある直線・長方形を強調したマレーヴィチ絵画は,"イライラする""激しい""動的な"という印象評価が大きくなった。境界を強調しないロスコ絵画は,"穏やかな""退屈な""静的な""リラックスした"という印象評価が大きくなった。垂直線・水平線を強調したモンドリアン絵画は,"軽い"という印象評価が大きくとなった。また,病院空間という特有の空間に絵画が展示されると,直線表現要素の違いによって固有の印象評価に差が生じた。この研究結果から,抽象絵画における直線表現要素の違い(垂直線・水平線・斜線)が印象評価に影響することが示唆された。