著者
吉川 かおり 天野 マキ 天野 マキ 大迫 正史 坂口 正治 越田 明子 旭 洋一郎 吉川 かおり 藤島 岳
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究においては、某県内にある某知的障害者更生施設における利用者6名とその保護者、施設職員との共同で、重度知的障害者への非言語的コミュニケーション方法の開発を行った。まず、利用者の全体像をとらえるために、支援職員から見た本人像・家族から見た本人像を調査し、相違点を検証した。また、支援職員がとらえた利用者像を明確化するための研修を実施すると共に、イルカ療法導入・スヌーズレンによる支援・乗馬療法導入に向けての準備を行った。具体的には、イルカとのふれあい体験の実施、水泳・水中活動を通してのプログラムの模索、遊具を用いての発達支援プログラムの開発である。国内外の施設・プログラムの視察を含めながら、対象施設・対象となる利用者にとって最適な方法と用具を模索し、プログラムの開発を試みた。イルカ療法導入の前段階として行った水泳・水中活動は、利用者用の支援プログラムを考案するところまで至ることができた。しかし、イルカ療法を導入するには地理的・気候的・費用的条件の面で困難があり、より手軽に用いる事のできる支援方法を探す必要が示された。スヌーズレンによる支援は、用意できた部屋がリラックスルームのみであったため、そこでの活動を通してコミュニケーションを深めるというところには至らなかった。そのため、他の遊具を用いる発達支援プログラムを考案し、利用者が日常的に楽しみを得ることのできる環境を創出することとした。特に、音の出るおもちゃには関心度が高く、少ない働きかけで多くの刺激が返ってくる遊具を導入する事の有効性が示された。乗馬療法については、その生理学的意義の考察を行い、実際の導入は今後の課題となった。これらのプログラムを導入する事によって、支援職員・保護者の相互理解が深まり、言葉のない利用者が表出する非言語的コミュニケーションの理解の方法および利用者支援の具体的方法が明確化された。