著者
越田 明子
出版者
東洋大学
雑誌
東洋大学発達臨床研究紀要 (ISSN:13463624)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.60-74, 2002-03

介護保険制度が開始され,約2年が経過した。この制度において,介護サービスの利用は,市町村がもつ介護認定審査会が,介護を必要とするか否か要介護認定を行い,給付額(サービス利用額)を決定することからはじまる。したがって,コンピューターによる1次判定よりも,最終(2次)判定を行う介護認定審査会の役割と責任は大きい。本稿は,介護保険制度や施策の背景及び要介護認定の手順を確認しながら,その認定審査会の現状を,東京都文京区における介護認定審査会の一合議体の事例をもとに分析した。そして,介護認定審査会の問題点を,審査会委員の選任方法,審査会運営の方法,他の審査会との関係について整理し,今後の課題について検討した。
著者
越田 明子
出版者
鹿児島国際大学
雑誌
福祉社会学部論集 (ISSN:13466321)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.17-32, 2004-12-30

奄美大島南端の瀬戸内町の養護老人ホームY園利用者から,聞き取り調査を実施し,利用者の語りを通して,離島高齢者の生活とY園の現況を考察した。調査対象である13名の利用者が暮らしていた,過疎化,高齢化する「島」は,健康であればよいところであるが,独りになり健康を害すると,移動や食事に困難を体験し,孤独で,辛いところであった。また,利用者は,Y園での生活に満足していた。Y園は,生活支援が少ない離島生活に代わり,他者との交流,安心した食生活,行事など,「島」のよい側面を提供し,離島高齢者の居宅生活機能を担っていた。今後は,良質な介護も備えた生活支援施設として,さらに必要とされると考察した。
著者
越田 明子
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.12-28, 2014-11-30

自治体独自の高齢者福祉政策について理解するために,小規模自治体が運営してきた生活支援ハウスの設置に関する国の政策的意図と自治体による設置判断の関係を明らかにした.国の意図は,生活支援ハウスに関する地域振興・過疎対策関係,老人福祉関係,介護保険関係の公文書から確認した.次にA県の生活支援ハウスを運営している30自治体計41施設の設置状況について継続的調査を行った.国の政策段階には,第I期のゴールドプランによる過疎地域における介護サービスの整備期,第II期の介護保険制度の受け皿期,第III期の地域の実情に応じた調整期の三つがあった.これに対する設置過程の検証から,以下が明らかになった.小規模自治体は,地域固有のニーズから施設を整備し,国の意図に沿わなかった.国が全国を対象とする一般的な政策意図によって制度を運営するのに対して,生活支援ハウスのような個別性の高い施策は,自治体特有の政策判断が働いていた.
著者
吉川 かおり 天野 マキ 天野 マキ 大迫 正史 坂口 正治 越田 明子 旭 洋一郎 吉川 かおり 藤島 岳
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究においては、某県内にある某知的障害者更生施設における利用者6名とその保護者、施設職員との共同で、重度知的障害者への非言語的コミュニケーション方法の開発を行った。まず、利用者の全体像をとらえるために、支援職員から見た本人像・家族から見た本人像を調査し、相違点を検証した。また、支援職員がとらえた利用者像を明確化するための研修を実施すると共に、イルカ療法導入・スヌーズレンによる支援・乗馬療法導入に向けての準備を行った。具体的には、イルカとのふれあい体験の実施、水泳・水中活動を通してのプログラムの模索、遊具を用いての発達支援プログラムの開発である。国内外の施設・プログラムの視察を含めながら、対象施設・対象となる利用者にとって最適な方法と用具を模索し、プログラムの開発を試みた。イルカ療法導入の前段階として行った水泳・水中活動は、利用者用の支援プログラムを考案するところまで至ることができた。しかし、イルカ療法を導入するには地理的・気候的・費用的条件の面で困難があり、より手軽に用いる事のできる支援方法を探す必要が示された。スヌーズレンによる支援は、用意できた部屋がリラックスルームのみであったため、そこでの活動を通してコミュニケーションを深めるというところには至らなかった。そのため、他の遊具を用いる発達支援プログラムを考案し、利用者が日常的に楽しみを得ることのできる環境を創出することとした。特に、音の出るおもちゃには関心度が高く、少ない働きかけで多くの刺激が返ってくる遊具を導入する事の有効性が示された。乗馬療法については、その生理学的意義の考察を行い、実際の導入は今後の課題となった。これらのプログラムを導入する事によって、支援職員・保護者の相互理解が深まり、言葉のない利用者が表出する非言語的コミュニケーションの理解の方法および利用者支援の具体的方法が明確化された。