著者
近江 宣彦 天野 マキ
出版者
東洋大学
雑誌
東洋大学児童相談研究 (ISSN:02885247)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.69-82, 1999-03

革新自治体である美濃部都政は母親の保育要求に応えて多くの保育関係の単独事業を行ったが,本論文ではその成果と限界についての予備的な考察を行った。美濃部都政においては保育所の量的拡大の点では大きな進歩があり,質的にも拡充を図ったが,未措置児童の増加や特殊保育の不十分な内容など多くの問題点も残していた。本稿では美濃部都政の保育政策の展開を整理しながら,それらの問題点を仮説的に抽出した。
著者
神田 道子 旭 洋一郎 天野 マキ 細井 洋子
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、女性の社会参画を推進すると観点に立ち、教育、福祉、医療領域の女性リーダーについて、調査に基づいてジェンダー関係の差別の構造について分析した。その際、コンパラブル・ワース、組織のタイプ、所属するスペース、スペースの中で権力関係を伴う位置=プレイスの概念を用いてアプローチした。調査は、公立小中学校の校長・教頭、福祉施設の施設長、公立病院の看護部長・婦長、コントロールグループとして地方自治体の管理職者、組織のタイプが異なる社会活動リーダー(女性問題、教育、学習、福祉活動)を対象に行った。分析を通して以下の知見が得られた。1.所属するスペースのジェンダー構成によって人事、マネージメントなどによる影響力に差があり、女性比率が高い小学校、病院などは強い影響力をもつ。しかし、これらはコンパラブル・ワースが問題になる領域であり、差別の構造の複雑さが明らかになった。2.ジェンダーの意識、女性問題認識などでは、職業リーダーと社会活動リーダーとの間に差がみられた。「学校」「病院」リーダーは性役割の固定化につながる意識がみられた。参画可能性があり、影響力をもつプレイスに座ったとしても、それが男女平等を質的に進める参画には結びつかない場合もあることを示している。3.リーダーの生活を情報資源、人間関係資源、時間資源の所有状況などから分析し、その生活を明らかにした。
著者
藤島 岳 森田 明美 杉山 憲司 天野 マキ
出版者
東洋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本研究プロジェクトにおいては、精神薄弱者の社会的自立尺度の作成を最終目的とした調査研究を行なった。調査研究に先立ち、教育、社会福祉の各分野の社会的自立概念に関する文献研究行なった。政策・研究レベルにおいて多様な解釈のある社会的自立概念の整理は調査研究の設計にも不可欠なものであった。次に精神薄弱者の自立度と関連要因を把握する調査票を作成した。各項目のクロス分析、及びそれらの自立生活形態別の比較から自立の要因を析出することによって自立の尺度の枠組を構築することができると考えた。調査実施にあたって今回は対象を在宅及び、グル-プホ-ムに居住する一般企業勤務者を絞り(但し1名は家事専業)各調査項目についてより掘り下げた回答を得ることができる面接聞き取り調査を実施した。養護学校高等部曽業生とグル-プホ-ム居住者の調査結果とその比較分析により、【○!a】自立生活の要素である経済的自立(職業的自立)、生活能力の自立がそれぞれ公的、私的に支援されている実態、【○!b】自立にとって重要なファクタ-は何かが「できる」という能力というよりも他者(対社会)とのコミュニケ-ション能力や精神的安定であり、障害が軽度であってもそれらへの援助が不可欠であること、【○!c】結婚が自立を促進し、生活の安定を図る要素となりうること、【○!d】識字・計算能力と社会生活能力の関連性の低さ等が改めて明確にされた。また自立能力の開発機能としての教育のあり方についてもいくつか課題があげられた。調査期間、調査規模(予算)の限界から、今回は面接聞き取り調査結果を元にした調査票の修正によるあらたな調査票(尺度)に作成、自立尺度作成の方法論の提起に留まった。クロス分析、多変量解析による自立の要因分析を通した自立尺度の作成には調査対象の拡大、統計的調査が不可決であり、次回の研究として継続する。
著者
吉川 かおり 天野 マキ 天野 マキ 大迫 正史 坂口 正治 越田 明子 旭 洋一郎 吉川 かおり 藤島 岳
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究においては、某県内にある某知的障害者更生施設における利用者6名とその保護者、施設職員との共同で、重度知的障害者への非言語的コミュニケーション方法の開発を行った。まず、利用者の全体像をとらえるために、支援職員から見た本人像・家族から見た本人像を調査し、相違点を検証した。また、支援職員がとらえた利用者像を明確化するための研修を実施すると共に、イルカ療法導入・スヌーズレンによる支援・乗馬療法導入に向けての準備を行った。具体的には、イルカとのふれあい体験の実施、水泳・水中活動を通してのプログラムの模索、遊具を用いての発達支援プログラムの開発である。国内外の施設・プログラムの視察を含めながら、対象施設・対象となる利用者にとって最適な方法と用具を模索し、プログラムの開発を試みた。イルカ療法導入の前段階として行った水泳・水中活動は、利用者用の支援プログラムを考案するところまで至ることができた。しかし、イルカ療法を導入するには地理的・気候的・費用的条件の面で困難があり、より手軽に用いる事のできる支援方法を探す必要が示された。スヌーズレンによる支援は、用意できた部屋がリラックスルームのみであったため、そこでの活動を通してコミュニケーションを深めるというところには至らなかった。そのため、他の遊具を用いる発達支援プログラムを考案し、利用者が日常的に楽しみを得ることのできる環境を創出することとした。特に、音の出るおもちゃには関心度が高く、少ない働きかけで多くの刺激が返ってくる遊具を導入する事の有効性が示された。乗馬療法については、その生理学的意義の考察を行い、実際の導入は今後の課題となった。これらのプログラムを導入する事によって、支援職員・保護者の相互理解が深まり、言葉のない利用者が表出する非言語的コミュニケーションの理解の方法および利用者支援の具体的方法が明確化された。