著者
西山 清 植月 惠一郎 川津 雅江 大石 和欣 吉川 朗子 金津 和美 小口 一郎 直原 典子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

環境に対する生命体の感応性-「環境感受性」-は、近年自然科学において注目を集めているテーマである。本研究は人文科学研究にこの概念を援用し、文学・文化および思想テクストにおいてその動態を考察することで、現代のエコロジカルな感性・思想の萌芽と展開を分析したものである。研究対象は、自然・環境の現代的認識の萌芽がもっとも顕著に観察されるイギリス・ロマン主義、およびその前後の時代の文学、文化、思想とした。本研究は、「環境感受性」が生み出され、現代的なあり方に展開していく様態を多面的に検証し、あわせて、文学研究が他分野と有機的な関連をもちつつ発展する、持続可能な営為であることも証明している。
著者
吉川 朗子
出版者
神戸市外国語大学研究会
雑誌
神戸外大論叢 (ISSN:02897954)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.87-100, 2002-09

1803年8月14日、出産したばかりのメアリーを置いて、ワーズワス兄妹はコールリッジと共にスコットランドに向けて旅立つ。コールリッジは途中で体調不良のため行動を別にするが、ワーズワス兄妹は9月25日に帰宅するまで、全43日間663マイルにも及ぶ旅をやり遂げる。そしてドロシーは、その思い出を兄ウィリアムの詩を織り交ぜながら一冊の旅行記Recollections of a tour made in Scotland, A.D.1803にまとめる。以下の論考では、この旅行記をドロシーとウィリアムの共同作品と捉え、詩と散文が互いに相補いながらどのような作品を作り上げているか、そしてこの旅行が二人の兄妹にとってどのような意味を持つものだったのかを考えてみたい。