著者
長田 芳和 吉村 智子 森 誠一
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 3 自然科学 (ISSN:03737411)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.p29-36, 1988-08

岐阜県内の湧水が生じる溜池に生息するハリヨの産卵行動を観察したところ,14例の産卵が確認された。その時に見られたほとんどの行動要素は溯河性のイトヨにみられるものと同じであったが,いくらかのものは異っていた。つまり,本種の雄は,イトヨでよく知られた明瞭なジグザグダンスを行わないし,雄に追従してこない雌に対してもめったに攻撃しない。雌は雄の巣くぐり以前に巣に入ろうとしたり,ジグザグダンスが無いのに巣に突進することもあった。以上のようなことから産卵時の本種の雌はかなり性的衝動が高まった状態にあるように思われる。求愛行動は雌の行動によってほとんど一方的に中断させられるので,配偶行動の成功は雌の行動により大きく影響されると考察した。