著者
渡辺 勝敏 森 誠一 名越 誠 田 祥麟 清水 義孝
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.157-162, 1992-09-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
11

日本の伊勢湾周辺に局在するネコギギCoreobagrus ichikawaiは, 韓国に分布するウサギギギC. brevicorpusとの核型の相違が報告されているが, 過去にはその形態的類似性から, 独立した種としての有効性が疑われることがあった.櫛田川と田切川 (員弁川水系) 産のネコギギ32個体, および南江 (洛東江水系) 産のウサギギギ35個体について, 計数および計量的な合計18形質を比較した.その結果, 臀鰭軟条数, 鰓耙数, 体高比, 眼径比, および頭部と各鰭の大きさや形など, 多くの形質で有意な差異が認められた.さらに, 胸鰭棘前縁の鋸歯の形状や固定標本の色彩にも差異が認められた.また, 体長約50mmを越えた個体については, 両者を識別する際に相体成長をほとんど無視できることがわかった.一方, Jayaram (1966) が記載したC. okadaiは, C. ichikawaiのシノニムと判断された.
著者
神宮字 寛 森 誠一 柴田 直子
出版者
Ecology and Civil Engineering Society
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.169-177, 2003-02-28 (Released:2009-05-22)
参考文献数
22
被引用文献数
8 3

秋田県の農業用水路を対象に,維持管理作業がイバラトミヨ雄物型の営巣場所の環境条件に与える影響を調査し,営巣場所保全のための維持管理方法を検討した.維持管理作業を5月の上旬に1回実施した1999年と5月~8月まで月1回実施した2000年とで比較した結果,1999年に形成された総営巣数が36個であったのに対して,2000年は14個と大きく減少した。維持管理回数の多い条件下では,営巣場所の水位低下,流速増加,営巣の支柱となる水生植物が限定されるなど営巣場所の環境条件が変化した.以上のことから,営巣場所の保全と水路の流下能力を維持するための条件的管理方法として,保全区域を設定した維持管理方法を提示した.保全区域は,繁殖の想定される植生帯を有する50~60m区間および50~72m区間の右岸側のセキショウ群落帯とする.
著者
和田 清 森 誠一 遠藤 協一 藤井 孝文
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
河川技術論文集 (ISSN:24366714)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.397-402, 2016 (Released:2022-04-01)
参考文献数
10

This study has analyzed factors for recovery of the fishway by cluster analysis and main component analysis using check-sheet data of fishway in Gifu prefecture. Directionality to connect with a repair method of construction using the result was examined. It is pointed out that the function of the fishway decreases, when the item of the damage of the structure, stream route, step of the flow, partial scour in a riverbed are one. In Ono fishway of the Yoshida River, the need of continuous flow quantity monitoring to connect it with the life cycle of fish was shown. All the fishways that an evaluation of the Yoshida River has worse are erosion control dams. The function of the fishway decreases by complex factors such as the sedimentation of riverbed material and the drifting wood. It is clarified that the function of Futamate fishway was restored by simple repair, and the improvement of the maintenance system.
著者
長田 芳和 吉村 智子 森 誠一
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 3 自然科学 (ISSN:03737411)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.p29-36, 1988-08

岐阜県内の湧水が生じる溜池に生息するハリヨの産卵行動を観察したところ,14例の産卵が確認された。その時に見られたほとんどの行動要素は溯河性のイトヨにみられるものと同じであったが,いくらかのものは異っていた。つまり,本種の雄は,イトヨでよく知られた明瞭なジグザグダンスを行わないし,雄に追従してこない雌に対してもめったに攻撃しない。雌は雄の巣くぐり以前に巣に入ろうとしたり,ジグザグダンスが無いのに巣に突進することもあった。以上のようなことから産卵時の本種の雌はかなり性的衝動が高まった状態にあるように思われる。求愛行動は雌の行動によってほとんど一方的に中断させられるので,配偶行動の成功は雌の行動により大きく影響されると考察した。
著者
鈴木 寿之 森 誠一
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.39-43, 2016-04-25 (Released:2018-04-25)
参考文献数
17
被引用文献数
1
著者
久米 学 森 誠一
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.287-291, 2012 (Released:2013-04-24)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1
著者
佐藤 拓哉 名越 誠 森 誠一 渡辺 勝敏 鹿野 雄一
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-20, 2006-06-25
被引用文献数
2

世界最南限のイワナ個体群キリクチSalvelinus leucomaenis japonicusの主要生息地において、過去13年間にわたって、キリクチおよびそれと同所的に生息するアマゴOncorhynchus masou ishikawaeの個体数変動を調べた。また、調査水城におけるキリクチ個体群の現在の分布構造を把握するために、流域に11カ所の調査区間を設定して、それぞれの場所での生息密度と体長組成を調べた。調査水城に設定した約500m区間におけるキリクチとアマゴの推定生息個体数はともに減少傾向にあり、特に2000年以降、キリクチの個体数は低い水準で推移していた。2004年時点では、アマゴの推定生息個体数は、キリクチの約2倍であった。2004年に生息範囲のほぼ全域で行なった捕獲調査において、キリクチは本流の下流域ではほとんど捕獲されず、上流域と支流を中心に分布していた。一方、アマゴの生息個体数はすべての調査区間で大差はなかった。また、キリクチ当歳魚はほとんどが支流で捕獲されたが、アマゴ当歳魚は支流と本流で大差なく捕獲された。標準体長の季節変化を調べた結果、キリクチ当歳魚はアマゴ当歳魚に比べて浮出時期が1-2ヶ月遅いと推察され、その平均値は、すべての月においてアマゴ当歳魚よりも低かった。また、1歳以上のキリクチの平均体長は、すべての調査区間でアマゴよりも小さい傾向が認められた。これらの結果から、本調査水域におけるキリクチの生息個体数と生息範囲はともに減少傾向にあることが確認された。また、キリクチはアマゴとの種間関係において劣勢にある可能性が示唆された。このような現状のもとでの、キリクチ個体群の保護・管理策について考察した。